第66話 毎日の締め切りに追われる男

 オレは以前から紙媒体で連載をしてきた。


 最初は隔月刊かくげつかんの雑誌だ。

 1つ書いては郵送されてきた掲載誌を読み、また書く。

 今思えばのんびりした良い日々だった。


 やがて雑誌がよく売れだしたのか、隔月刊が月刊になった。

 ということは、締め切りも毎月だ。

 それでもまだまだ余裕があった。


 ところが新たに別の連載の依頼があった。

 こちらは締め切りが毎週だ。

 先の月刊誌と合わせて月に5~6回の締め切りが入る。

 こうなるとかなり忙しい。



 最初の連載が始まってからオレは何度か入院生活を経験した。

 数えてみたら6回にもなる。

 しかも、そのうちの2回は手術を受ける羽目になった。

 医者の不養生とはよく言ったもんだ。


 病気になったからといって原稿を落とすわけにはいかない。

 入院や手術に備えて多めに原稿を作る。

 あらかじめ複数の原稿を担当者に送っておき、急場をしのいだ。


 かくして1回も締め切りに遅れたことはない。

 このことは人に誇っていいと思う。

 原稿の出来不出来できふできは別として。



 そんなオレが新たに執筆の機会をひろげたのがカクヨムだ。


 オレにとってカクヨムの難しいところはいくつかある。


 まず、自分に課した締め切りが毎日になった。

 週1回でもきついのに、いきなり何倍もの負荷がかかる。


 さらに読者からの評価にさらされる。


 というか、読者の評価すらもらえない。

 自分の書いたものが無数の作品の中に埋もれてしまう。

 何の反応もないことは、悪評をもらうよりきつい。


 しかし、それが今のオレの実力なのだろう。

 甘んじて受け入れよう。


 どうすればもっと読まれるのか。

 どうしたら高評価を得られるのか。

 そのことを考える毎日だ。



 ただ、それ以上に大切にしたいことがある。


 読者が、明るく楽しく前向きになることだ。

 縁あって読んでくれた人にハッピーな気持ちになってもらう。

 作者としてこれ以上に嬉しいことはない。


 その原点を忘れず、オレなりの模索を続けていきたい。


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