電子カルテのログインにはIDとパスワードが必要だ。

当然のことながら、パスワードは時々変更することになる。

同じものを使い続けるのはセキュリティ上よくないからだ。

そんなわけで定期的にパスワード変更を指示される。

端末に変更依頼が表示されたら新しい暗証番号を考えなくてはならない。

パスワードを変更してもしばらくは間違えがちになる。

指が前の番号を覚えているからだ。

無意識に正しく打てるようになるまで1週間ほどかかるだろうか。

最近、パスワード変更依頼が来るのが早い気がする。

指が番号を覚えたと思ったら、もう次の変更依頼だ。

やはり年を取ると時間の経（た）つのが早く感じるようになるのか。

そんな話を外来のクラークさんとしていた。

「先生、パスワード変更期間ってだんだん短くなっているんですよ」

「えっ、ホント？」

「前は90日で変更でしたけど」

感覚的にもそのくらいだった。

「今はね、30日くらいじゃないかな」

「やっぱり！」

なんと、本当に時間が早く経っていたんだ。

「良かった、良かった。オレも急に年を取っちまったのかと悩んでたからさ」

「大丈夫ですよ先生、落ち着いてください」

言われなくても落ち着きましたよ、オレは。

こんな安堵感（あんどかん）は久しぶりだ。

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。（ログインが必要です）

新規登録で充実の読書を

マイページ: 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる; 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める; フォローしたユーザーの活動を追える
通知: 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴: 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい