第7話 夫の告白
「私が山下さんとこうなってしまったことは謝るわ。でも、あなたはそれに気付いていた。しかもかなり前から」
「ああ、そうだよ」
夫は即答しました。
しばらく、沈黙がありました。
「いつから、気付いていたの」
「うん、最初からだよ」
夫がいったい何を言ってるのか、わかりませんでした。
「最初から・・・やっぱり。私もバレそうとは思ったけど。でもなんで黙って、なにも言わなかったの」
「あぁ、あの時は本当に興奮してしまった。君は、ほとんど感じてなかったね」
「・・・だって、仕方ないわ」
「演技してたよね。でも、もうその次からは演技もしなくなった。面倒くさくなったのかな」
「正直に言うと、そうね。それにあなたも悪いタイミングでばかり私を」
「悪いタイミングって、なに」
「だからつまり、山下さんのあとに」
「山下のあとだとなんで悪いタイミングなの」
私は夫を見ました。どういうわけか、夫はニヤニヤしています。
「だって、その、嫌よ普通、そんなの」
「まぁいいさ。でも、最初からって言うのはそういう意味じゃない。もっと前から知っていたんだから」
私はまた意味がわかりませんでした。
「だって、私が山下さんとはじめて会ったのは、まだ春先のことで」
当然です。夫が出張から戻るまでは一緒に住んでいないし、日本にさえいないのです。
「そうそう。そのときから。で、山下君とそうなるまでに1ヶ月もかからなかった」
夫に責められている、と思いました。よりによって、夫の部下と不倫関係になり、それも夫の留守、長期出張のあいだに。
「でも、どうして山下君とそうなったんだろう。こう言ってはなんだけど、山下君は背は高いけどイケメンというわけでもないし、どう考えても君のタイプには見えないのに」
そこは、説明しにくいところでした。入らないくらいのサイズと聞いて興味が湧いたとは言いにくいところでした。
「・・・それは、いろいろとやりとりしてるうちに自然と。あのね、でもこれだけは信じて欲しいんだけど、身体だけの関係なのよ。だから気持ちまで奪われた不倫とかじゃなくて、一時的な浮気というか」
「それにしては毎日、それも君のほうから誘って、いつも失神するまで、ね」
「なんでそんなこと知ってるの、なんでそんな見たようなこというのよ」
夫はなんともいえないニヤニヤした表情で、しかも落ち着いていました。
「見たから、言えるんだ」
「覗いてたのね。さっき、扉の向こうから」
「いや、今日は覗いてない。扉の向こうから覗いたこともない」
私はパニックになりそうです。
「じゃあ、あなたはいつどこで見たって言うのよ」
「君がここで山下にはじめて抱かれたときだよ」
パニックです。何を言っているのかわかりません。
「いや、実は出張なんてなかったんだ」
夫は続けました。
「僕はずっと日本にいた。それもこの近くに」
「は?」
謎がありすぎました。謎しかありません。
「君は、まあ僕とのエッチではあまり満足してないことはわかっていたよ」
「ちょ・・・お仕事じゃなくて、この近所にいたって。しかも私を見てたって何なの。どういうことなの」
「うん、実は海外主張なんてなかったんだ。引き払ったアパートね、実際には3ヶ月延長してて、そこから会社に今までどおり普通に出勤してた」
「は・・・あのアパートに? ちょっと待って完全に意味がわかんない」
子宮の冒険☆こんなんじゃ足りない @kanomao
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。子宮の冒険☆こんなんじゃ足りないの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます