第53話 “波乱”を呼び込む女

「よく来てくれたようだね、紹介しようシェラザード、この子が私の魔術の弟子である『次元の魔女』ベアトリクスだ。」

「は、初めましてぇ~~~じゃありませんけど、取り敢えずは初めましてえーーー」

「あーーーはい…初めまし、て?」


何か今のこの挨拶、相当に妙な感じしかしないんだけど…私確かこの子に一度会ってるよねえ?けど気の所為か?この雰囲気……だから『初めまして』も妥当だとおもうんだけど、なんだか呼び出した方こっちも私と同じ“雰囲気”を察したのか―――


「えーーーと、あの?『ベアトリクス』だよねえ?」

「えっ?あっ、はい―――そう……ですけど?」


えっっ…なに今の反応―――めっちゃ怪しいじゃん!もしかすると『なりすまし』?魔王様の魔術の弟子になりすまして詐欺働こうって魂胆かあ?


確かにこの子…私と連絡が繋がって来てくれたんだから『ベアトリクス』だと言う事は間違いない…ただどうしたわけだろう?漂っている雰囲気が以前とは違っている様な―――


うーーーわ、なんだかすっっっごく怪しまれてるんだけど、バレちゃっていないわよねえ?

そう―――実は私、ちょっとありまして、以前とはその存在性は違わせているのです、それにどのくらい違わせているかと言うとーーー“雲”“泥”の差?もう少し判り易く例えるとなるとーーー“蟻”と“竜”程の差?なのでバレないようには工作・調整はしたんだけど……私の『魔術の師匠』(皮肉)に、『運命の友人』のその母親(もっと皮肉)―――の前ではさすがに誤魔化しきれなかったか?こりゃ…


          * * * * * * * * * *


「(ん゛っ、ん゛んっ!)ま、まあーーー今取り敢えずその事はいい、ベアトリクスきみに頼みたい事があるんだ、『どこにいるか』までは判らないが私の『相棒バディ』とも呼べる人物を探し出して私の前に呼び戻して欲しい、手がかりとなるのは私の魔力の波長を記憶して―――それからを捉えられば居場所が特定できると思う。」

「ああ、はい―――師匠の魔力の波長、その真逆……って、あれ?この波長ってリルフィと同じじゃないですか。」

「そう言う事だ、それに彼女が今何と呼ばれているかは知っているね。」

「(…)ああ~~ーーーウラノスんとこの【閉塞した世界に躍動する“光”】ね!はいはい了承、了承―――」


今更の自慢ですが、私が固い絆で友誼を結んだ『運命の友人』の事は

けどですね…からって、何も口に出さなくてもいいじゃないか―――と、まあその時ほど思ったことはありませんでした。

なぜって?それはあ~~~ーーー


                  !?


「ねえ…『ベアトリクス』?きみ、今なんて言ったの?」

「えっ?(……はッッ!)あ、あはははははーーーな、なんて言ってましたっけえ?」(活きのいいお魚さんの様に泳ぐ目)

「私の空耳聞き間違いでなければ、でしか知らないような超極秘な存在の名前が聞こえたんだが?」

「あ゛ーーーそれ、きっと気の所為ですって!だってほらぁ…師匠『魔王様』やられているから日々の忙しさで忙殺されてーーー」

………………。疑いの『まなざし』

「と、取り敢えず探しに行って参りまあーーーす。」


誤魔化しきれとらんやんけ、しかもなんだか自分から機密に関わる様な事喋ってたし―――それに…うわあ~魔王様ったらなんて顔してんだよ、曲がりなりにも自分の魔術の弟子に対して投げ掛けていい目じゃないよね、あれって。


   ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


とまあそれはそれで良かったんですが―――はっきりした事を述べると、(ちょっと怪しい)魔王様の魔術の弟子は目的を叶えて戻って来た…の、では、ありましたが―――


「チョリ~ス!やりらふぃ~☆どーしたのどーしたのご両人さん、シケた面して誰かの葬儀のマッサイチュ~Yo!」


―――誰だ?こいつ…なんか(私でも)イミフメーの言語喋ってるし?おまけに小麦色の肌…


「えっとぉ…あのさあ、ベアトリクスは一体誰を迎えに行ったんだって?」

「え??て言うか私は師匠の言い付け通り『師匠の魔力の波長とは真逆』の魔力を持ってる人を呼び戻したんだけど?」

「―――て事は私のお母様って事でいいのよね…て、か!待てよ、私達は『エルフ』であってアウラみたいな『ダークエルフ』じゃないんだが?目の前の…なんて表現していいやら判んないヤツ、明らかに肌の色が濃いんだが?」

「そんなの知らないわよ…大体検索条件にあたったのこの人なわけなんだし―――」


私達の目の前にいる…(この私ですらも)ちょっと引くレベルの道化ふざけ方をしてくる、『ダークエルフ』顔負けの小麦色の肌をし、目元の『まつ毛』もまばたきすれば突風かぜでも送れるかとでも言う様に長くし、しかもなんだか“キラキラ”輝く小さな砂粒(?)みたいなものを散りばめ…おまけに体調の具合が悪いのかとさえ思える様な唇の色に、果ては爪もなんだか小さな砂粒散りばめていらっしゃるぅ?


こんなの…こんな奇怪な姿してるのが私のお母様―――


「な!ワケあるかあ~~!」


「ねえねえーーー『エリスチャソ』何でこの人怒ってんの?」

「それはあんたの所為でしょうよ、私だってあんたの魔力の波長捉えた時には『マヂか?』とまず疑いをもってかかったもんだったわ…」

「ぷぷぷ、なにソレエ~ちょーウケるぅ~、だぁいたいさあエリスチャソうちらの事知らないハズないじゃんかあ~だってそうじゃろ?うちんとこの大親分のウラノスとタメ張れるって―――」


「ふう~ん…なるほど、今の君達の会話でおおむねの事が理解出来たよ。 、 『?」


この時私はひたすら思ったものでした…『ああこれ、言い逃れ出来ないな』と、それもこれも―――! …さっきから私の本来の名を喋くっとんのじゃねえーわ゛!


「あ、あのお~~~し、師匠?」(焼け石に水)

「(…)それと―――『ヒルデガルド』だよね?何故に君の外見が劇的に変わったのかは訊かないでおこう…そこも一つの潜入工作の一環みたいだからね、それより質問だ、君は先程『私の魔術の弟子』の事を何と?」

「やーっはは、さあっすが私の『相棒バティ』と言うべきか…私を呼び戻すためにとんでもな人物寄越してくれちゃってるからさあ『一体何事?』と思ったわけよ、そしてそう―――あんたから寄越してくれたあんたの弟子ちゃん?空耳聞き間違いなんかじゃなく正真正銘の―――」


「【不和と争いの女神】…『エリス』様!?」


「え、えーーーと、あのぉ~~~私だけ置いてけ堀なんですけど…何ですか?その明らかにヤバげな名付けネーミングの人…」

「シェラザード、これから話す事を心してよく聞いておきなさい、この宇宙開闢かいびゃく以来『争い』やそのもととなる『不和』と言うものは無かった―――しかしそれを最初に撒き散らせさせたのが…」

「あ~はいはい、確かに私―――エリスが最初よ、だけど自己弁護の為に言っておくわね、私は今でもは間違いじゃなかったと思っている、確かに『争い』や『不和』は聞いた感じではいい印象は浮かばないけど、『争い無き世に進化はない』―――今日こんにちの宇宙が発展してきたのは先人せんじん達による功績でしかないわ。」

「確かにそれは一理あるとしても過ぎた『争い』は悲劇しか生まない、そこにいるシェラザードやが友誼を結ばれたと言う彼女の娘…リルフィーヤだってそうだ。」

「そこは否定しないわ、―――ひとつ聞いていい??」

「(うっ、ぐ…)そ、それは―――」


「はあ~い、エリスチャソ『1本』!まあ要するにね、このひとあったお蔭で『正常復活』したみたいなのよ。」

「『正常復活』?だと言う事は―――」

「私は、“誰”から求められようともこの権能チカラを発揮しない、まあねもう懲りたのよ…総ては皆の為にと『争った』はいいものの歓迎はされていなかった事に、だから『正常復活』した私は大人しく過ごす選択をした…今回はまあ『行方不明』だった【閉塞した世界に躍動する“光”】を呼び戻すって事で手は貸したけど…それ以外の事はしないから。」


「(はああ~~~)何だかまだ悪い夢を見ている様だよ。」

「(?)どう言う事です?なんだかヤヴァゲな人が『これから何があっても表立って出てこない』って宣言してくれたようなものですよね?今のって。」

「ああ~~~そっちじゃなくてね…私がエリス様の『魔術の師匠』だったなんてえ~!思い上がりもいいところだ…」

「はい?なんでまた―――そうなるの?」

「だってねえ…エリス様って言えばこの宇宙で最初に『魔法』という技術体系を確立させたひとなんだよ?それに先程のエピソードだってが原因で他の神々と『争い』始めちゃったって言うし…そんなひとを『弟子』に取っていただなんてええ~!」

「(あ゛ーーー気にするとこそこなんだ…)」


魔王様が身悶みもだえている理由とは『魔法』と言う技術体系の大家たいかを(何の疑いもなく)『魔術の弟子』に取っていたという事、まあーーーその気持ち判らなくはないわ、私だって『ダークエルフ』かと見紛うくらいのお母様の変貌ぶりにちょっと眩暈めまいを憶えちゃったしねえ。


それよりお母様あーーーー


「てかあれえ?私のお母様どこ行ったの?!」


   ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


そして場面は前回の“あの場面”へ―――


それにまさしく魔王様がの事を話そうとした時に私のお母様である『ヒルデガルド』は現在魔界が置かれている状況を確認する為にマナカクリム市街へと繰り出したのだ、そしたら(?)リルフィーヤ達と鉢合わせに…(しかもお母様いつのまにやら元に戻ってるギャルメイクなし、肌の色も小麦色ではなくなっているし)

それにしてもまあーーーこれまでの事を魔王様から聞いてから行動に移せばいいのに、懐かしさも余っちゃって居ても立ってもいられなくなっちゃった―――てとこみたいだな…はは、確かに私と一緒だ。


「ふうーん、ま、確かにどこぞのクソヤローの仕業みたいだけど、なあ~あ?『ナラーカ』…これって『ションベン引っかけられた』って事でいいんだよな?」

「(う、うぅ~ん)間違ってはいないけど―――そう言う“俗”な言い方は止めた方がいいかなあ。」

「あに甘っちょろい事ゆってんだよ!ここは大親分の“特例地域”みたいなもんだろ?そこんとこ知っときながら自分達のモノにしようって考え方、私は感心しないなあ。」

「相変わらずだなあ君も…とは言えここまで手酷くやられたんだから『報復』も考えていない訳ではない。」

「(ふふっ…)普段は虫も殺さないような本性現わしたあんたほどあんたでもさすがに怒ったかヤバいものはないからね、まあいいや、転移トバされた異世界じゃなまっちょろい事しかなかったしねえ、リハビリを兼ねてのウオーミングはさせて貰うよ。」

「(はあ~…)それって私が割を食わされるって話しかい?」

「そりゃそうだろ?『ラスボス』てのは奥で“でーん”と待ち構えているもんなんだろう~?。」


なんだかお婆様って中々の“ヤリ手”―――と言うより、魔王様の『してやられた』顔するのって初めて見たわ、それにお母様も中々破天荒だと思ったんだけど更にその“上”をいくっ人って……

あとそれと気になる言葉ワードも聞こえたので取り敢えずの処はそこから聞くとして―――


「あの~お母様?さっきお婆様が言ってた『大親分』って“誰”の事、魔王様じゃないって事は判ったんだけど……」

「あ~~~スマン、そこについてはまだ私も理解が追い付いていなくてさあーーーそれにだよ、死んだと思われてたお母様が『生きてた』って知った時は、喜んでいいんやら驚いていいんやら哀しんでいいんやら…」

「驚いたのは私だよ、顔合せるなりいきなり『孫ちゃん』だなんて…」


「しかし魔王様はどうしてお婆様を呼び戻させたんだろうな。」


日頃は私の事を『好きだ~♡』とかほざいて鬱陶しく纏わりつくお姉ちゃんが珍しくまともな事を言っていた、これはこれで『この魔界がいよいよ破滅を迎えてしまうのか?』と心配したものだが、その説明を魔王様から―――ではなく、私の『運命の友人』からされるとは…


「それは、まあ、今回の相手は紛れもなく“神”だものね。(どこの“バカチン”かは知らないけど…) それにこの『魔界場所』は元々“とある神”が創造つくった“特例”のような場所、だから“神”の様な『監督官』を置かず…まあその代わりと言ってなんだけど『魔王』が『監督官その』代理のようなモノね。」

「(…)ベアトリクス―――なんだか随分とそう言う事に詳しいのね。」

「えっ!あっ?まあ~~~色んな次元旅して得る知識モノも沢山あったしね~~~?」


様、さすがにそれわ苦しい言い訳では?まあ―――私主神あるじから聞かされた話しではエリス様ってあとの二柱おふたかたと並ぶ『原初の神』だったとも…そんな方を記憶を封じられていたとして私の『弟子』だなんてえ~~~!間違いなく黒歴史だよな…これは。


それにこの方からは『余程』な事がない限り関与はしてこないのだと言う、まあ戦力的には痛手かもしれないがこの方の存在性が復活されたと知られたら―――それこそ全宇宙か総ての神々を向うに回しかねないからなあ…まあ当面はでどうにかするしか外はないか。


   ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


それはそれとして、とある危険を孕んでいる存在性“達”も既に魔界へと現れていた。


“一人”は『漆黒』とも思える程の素地に、これまた禍々しい紋様を深紅で施した『正体不明の騎士』―――


もう“一人”は額から伸びる『白磁』とも思える2本の角に、白い練り絹で顔を覆い隠した『正体不明の術師』―――


騎士の顔を覆い隠している『フルフェイス・ヘルメット』―――だから故か兜の内で声が籠りいささか性別が判らない様になっている。


片や術師の方は『正体不明』とはしながらも“角”のあり様でどの種属かは判別まではできた、それに女物の“着物”…術師の性別は女性でした。


彼の者達が現れたのは『樹海』と呼ばれる上級の冒険者でさえ油断をしていたら迷って、その果てに遭難死するほどの高い危険度が設定されている場所、そこを『拠点』とし難解・難読な“式”を組み上げる術師、一方騎士の方は当てのある処へと一瞬にして転移とんで行った。


彼の者達が魔界へと現れた理由は―――?やはりそこは今回の火種となった思惑のある“神”の尖兵として…だろうか。


        * * * * * * * * * *


それよりも魔界の首脳は今回の事態を受けてある方針を打ち出していました。


「取り敢えずの処私の『相棒バディ』は呼び戻す事が出来た、けれど私達が被った痛手は思いの外深い…」

「『竜吉公主様』に―――『ウリエル様』―――」

「彼の者達はこの魔界の為にと殉じてくれた人達だ、。」


「魔王―――様?」


「こう言う言い方は相応しくはないのだけどね―――彼の者達の次代を担う者達には、これから起こる事の重き荷を背負わせるのは酷だと私は判断した。」


今回のどこかしらの“神”からの襲撃を受けて魔王様が信を置いている重鎮の方々の多くが亡くなられた、それに“次”、同じ規模の攻勢があった時に亡くなられた重鎮の次代を担う者達では防ぎ切れないだろうと言う―――辛辣ながらも魔王様の評定が下されたのだ、それはそれで判るような気がするが…だとしたら魔王様は何をしようと?するとその内容が私の『運命の友人』の口から語られた…


「(…)つまり―――“あのひと”とわたりを付けたい…という事、ね。 判ったわ、その役目私がやりましょう。」

「頼むよ…ベアトリクス。」

「全く…『手を貸す』つもりなんてこれっぽっちもなかったのにね~優秀な人材が欠けたままだといつ私にお鉢が回って来るかも知れないから、ね?。」


私達が知り合った頃とはまた一段と成長をしたものだろう、私の『運命の友人』の発言の何と頼もしかった事か、それにしてもーーーの魔王様の……ベアトリクスと何かあったのかな?


うううう~~~ついせんだってその正体が明らかとなったものの、“”って私への皮肉当てつけだよね~?私だって行き倒れていたのが『魔導の大家たいか』と知っていれば弟子に取ろうなんて思わなかったのに…それにはまたも要領よく面倒事は私に押し付けるしいぃぃ~~~


          * * * * * * * * * *


それはそうと魔王様達魔界の政治に関わる方々がこれからの方針で頭を痛めていた中、私とアグリアスは魔界を襲ってきた者達の調査の為各地を巡っていた。


以前までは『ラプラス』なる不埒者だったが今度の相手は『神』だと言う…全くトンデモな存在に目を付けられるとは―――それ程までに魅力的なのかな?魔界と言うものは…いやまあ、私の妹と比べれば……というか魅力的なのは私の妹だ!ハッ…いやまてよ、私はここに来て重要な事に気付いてしまった!そうか―――そう言う事か…『神』の目当ては魔界ではなく寧ろ私のリルフィーヤだと言う事に゛!(フンス!フンス!)


明らかに、あのバカアルティシアの鼻息が荒い…まあまた要らん妄想で興奮しているのだろう、こんなヤツと毎回相方パートナーを組まされる私の身にもなってみろ、しかもこんなヤツのお蔭で完全に婚期を逃してしまっているし…まあ今は愚痴を垂れるのはよそう、なにしろ魔界の危急存亡のときに関わる事態だからな。


それとあと気になったと言えば―――…


ふうんん…今回の犠牲者の遺体を検体してみたら―――では全員が一致していたという“ある特徴”とは?

それは残留魔力……じゃないよな、だってこれ、『魔力』じゃなくて『霊力』なんだもん、しかもこの魔界には『魔力』の素となる『魔素』はあるにしても、『霊力』の素となる『霊素』もそれなりにある…けれどその『霊素』を扱える技術体系が確立されていないのだ。 …て事でいいんだよな、―――だ…犠牲者全員の遺体から検出された『霊素』って事は…


「同一犯の犯行―――ね。」


「(ん?)お婆様今何と?」

「(…………)私ゃこれでもまだ“びっちぴち”の現役なんだがなあ?まあいいわ…それより―――だ、ちょっと今回は厄介な事になりそうだ。」

「『厄介な事』―――とは…この魔界全体が巻き込まれるような非常事態が起こるとでも。」

「(はあ~)それだけで済めばまだ易いもんなんだろうケドねえ~。」

「あのぅ…お婆様?そんな不安を駆り立てるような事を言わなくとも―――」

「『不安を駆り立て』てるんじゃなくて、これは飽くまでもの『最悪の事態の想定』だ、それで以て『最悪』とはなんなのか…『もうどうにも努力・改善・見直しを図ったところで』―――言ってみれば“詰み”だね、そして“大親分”がしていた計画も“おジャンぱあー”…これが私が想定した『最悪の未来』さ、それじゃあひとつ問題だ―――今日いまを活きる若い子らよ…これ以上の『最悪』が想定できない場合はどうしたらいい?」

「(『これ以上…想定できない最悪が無い場合』?)それだと前に進むしかないのではないか。」

「ううん~イイネえ~“正しい”だ―――それに前に進めば進むだけ『最悪』が緩和される知れない…」

「いや、だがしかし前に進んだとて必ずしも善き結果になるとは―――」

「それ正解―――だとてその場に停滞とどまったところで未来は変わり様がないし、変えようもない…こう言うのが“混沌”の善い面ともいえるねえ?」

「なっっ―――“混沌”の?」「『善い面』?」

「“混沌”とは、やもすれば悪いイメージでしかない、けれど不思議な事に元々のこの宇宙の成り立ちは“混沌”と言う『原初の宇宙』がその出発点なんだ、そしてそこからとある女神が産まれた―――『原初の母』『神々の“母”』と色々あるけど…【大地母神】ガイア―――」

「(ご・くっ)聞いた事がある―――彼の女神から数多の神々が産まれたと…」「いや、しかしその前に…お婆様は何故そんな事を知っている?」

「私の―――いやの“大親分”って方がさ、その女神様からお産まれになった…『天空』と呼ばれ、後にガイアと夫婦になり、そして新たなる神々がお産まれになった、『神々の“父”』とも呼ばれている【かつて高き御坐に座せし『天空』】ウラノス…そのかたこそが【閉塞した世界に躍動する“光”】と【奈落をも喰らう“闇”】の所持者ホルダーなんだよ。」


「聞いた事があるぞ、その“名称”…確かリルフィーヤも…」「それに…そうだ―――お母様も仰られていた魔王様のが!」


「お判りの様だね?ひよっ子共…そうさ、この魔界が他の神々から狙われる理由はゴマンとある、ただ易々と手出しが出来ないのは行き尽く処まで行き着いたらとてつもなく厄介な事になりかねない―――」

「(…)だけど今回魔界を襲った者は、ある程度の目途が立ったから、と?」

「ああ、そう言う事だろうね『イリス』の末裔…」

「(な!)わ、私の―――『ダークエルフ』の先祖の事を知っているだと?」

「当たり前だろう?一体“誰”がここまでになるのに育成したんだと…」

「お婆様―――だけではありませんよね…」

「そこも当たり前だろう、そもそも私達は2人で“ワンセット”…私達本来の名にある【“光”】と【“闇”】は、時には反発し合い…時には強めに影響し合い、それでも均衡バランスを保ってきたもんさ、その内私達が育て上げていた子供達が成長していくにつれ、私達の役目も“育成”から徐々に“管理”へと移行していった―――」

「なるほど…しかしーーーはて?今そうなっていないと言うのは―――」

「ま、“管理”ってただ眺めているだけだしねえ?その内退屈しちゃって偶々余暇を利用して町へと繰り出した時―――」

「そこで『不当な場面』に出くわしたと―――」

「いやははは、私ってさあ『ナラーカ』より“短気”に創られてるみたいでねえ?気が付いた時には思わず顔面めり込ますくらいの鉄拳放ってましたーーーと。」


あ…その話しお母様から聞かされたことあったわ、けれどしかしその話しにそんな“裏話”があるなんて…知りたかったような―――知りたくなかったような…


          * * * * * * * * * *


アグリアスとアルティシアがヒルデガルドとともに今回の襲撃の原因を探っていたその頃―――も…


“その者”は、外見みかけはエルフ視えました、けれど“その者”は決してエルフなどではない―――とは言え、その都市『マナカクリム』は様々な種属が雑沓ざっとうする大都市だとは言え、その割合で言えばエルフが多くを占めていた…

この魔界最大であり―――超大国のエルフの国の首都、故にその場所こそは、その『エルフの様な者』にとって“なりすまし”易い環境にあったのです。






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2024年11月15日 18:00

エルフの「王女様」だって、英雄に憧憬(あこが)れてもイイじゃない! 3 はじかみ @nirvana_2020

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