第52話 “おばあちゃん”、還る。 あとついでに“良き隣人”も

『神』と言う存在達がいる、それはある世界観の頂点に立つ存在達であり、ひとつの世界―――ひとつの概念を構築できる存在でもある。

しかし私達の『魔界』には『神』はいない、何故なら私達の住む世界は『魔族』だけで構成されており、相反する存在である『神』なる存在はいないからだ。

(※ただ種属としての〖神人〗は存在しているのだが、そこに属する『天使族』も『魔族』の一つであると考えられている)


それに魔界に『神』等がいなくても成り立っている、何故なら魔界には『魔王』がいるからだ、数ある世界観の中では『悪者』や『悪役』のように描かれる『魔王』……だけど魔族である私達にとってはこの世界を―――『閉塞した世界』を統治するお方であり、何より『神』ほど胡散臭うさんくさいものではない。

なぜ書き出しから始まるのかと言うと、今現在私達は『神』からの攻撃を受けているからだ。

それまで魔界の住人達みんなは、“快活”に―――“平和”に―――と暮らしていたのに、その平穏を突如として破る者達、私にとっては初の体験だったけれど、お母様にとってはこれが二度目、忘れようとしている苦い経験が、またも頭をよぎる。

それに自分達が攻撃を受けているからと、そうした対応は実に迅速で的確だと言えた、ただ―――結果が伴うとは限らない。

抗戦した結果、実に多くの人達が―――臨時の兵役に駆り出され一般の兵卒となった方達も…そしてまた彼らを指揮する指揮官も…

『竜吉公主』、『ベサリウス』、『ササラ』、『ウリエル』、『プ・レイズ』、『ク・オシム』―――この方々は前線にて『神』からの侵略により尊き命を散らした方達だ。

私でも知っている魔界の重鎮達の死を前に、さすがのお母様もこたえたものとみえ、しばらく女王の部屋にて塞ぎ込んでいたのだが―――


「これから、魔王様に会って来る。」


お母様自身が若い頃から知っているそんな人達―――そんな人達が戦争で亡くなってしまったのだ、憔悴しょうすいするのも無理はない、だからと言って塞ぎ込んだままではいられない。

そこでお母様が打った一手が『魔王様に会ってくる』―――

魔界この世界』の統治者であり、これまで幾度となく―――『ラプラス』なる“外敵”から『魔界』を防いできた偉大なるお方、そんな方に最終的な判断を仰ぐと言うのだ、だから当然私達も『大丈夫だろう』と、多寡たかを括っていた……


けれど―――……


    ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「お母様中々戻ってこないね。」

何分なにぶん事態が事態だものな、さすがの魔王様も考えあぐねているのかもしれん。」

「リルフィ殿、心配ござらんよ…魔王様の事だ、きっと打開策を思いついて下さる。」

「うん……そうだといいよね、そうでないと亡くなった人達も浮かばれないよ。」

「それにしても『神』か!なんとも忌々いまいましい―――」

「アルティシアお姉ちゃんさん…」

「しかしリルフィ殿の気持ちも判るのだぞよ、ラ・ゼッタの母上もク・オシム将軍もやつらによって殺されてしもうたからの!」


あれから何週間、何ヶ月経ってもお母様は魔王城から戻られない…余程話し合いが難航しているのだろうか。


         * * * * * * * * * *


それにしても不思議に思ったのは『即時果断』が信条の魔王様が判断に迷いを生じさせているように感じた事にだった。

ラプラスの侵攻騒ぎがあった時でもすぐに信頼のあつい人達を呼び寄せ対応を図ったと聞いていたのに―――


なのに―――なぜ……?


「おーーーやおや、どうしちゃったんだーい?しょぼくれちゃってえ、折角可愛い顔が台無しだよぉ~?」


不意に、どこか気の抜けた、間延びした様な喋り方をする女性が私に絡んで来た。

今はそう言う雰囲気きもちじゃないのになあ…そう思いつつ、場違いな話しをかけて来た女性に抗議する為に顔を上げると―――


「お母……様?」

「ン~~~?なにヘンテコリンな事を言うかねこのお嬢ちゃんは、それにしても『お母様』かあーーーこの私がお腹を痛めて産んだは元気してるのかねえ?」


話しが、噛み合っているようで噛み合っていない、私に話しかけて絡んで来た女性は『エルフ』だった、私のお母様とも年齢を比べてもそう違わない…私がお母様と間違えてもそんなにおかしくない―――そんな、エルフの女性…


「(リルフィ殿、この方の事をご存知か?)」

「(ううん、全く知らない―――それよりお姉ちゃんはどう?)」


「…………。」


「(お姉―――ちゃん?)」


「あれあれえ~何か私だけ仲間外れえ~?なんだか連れないなあーーーたった8000年間留守にしてたってだけなのに世間よのなかってこうも世知辛せちがらくなるもんかねえ?」

「(え…)ちょ、ちょっと待って下さい?!(え……)今―――なんて言ったんです??8000年って…わ、私を揶揄からかうのも―――」

「ン~~?私、別にあなたの事を揶揄からかっているつもりなんてないよ?それに心外ダヨネ~嘘かれちゃってると思われてるんだもん。」


―――覚えがある…お母様が時折見せる少し茶化ちゃかす時に見せる仕草と同じ……すると私と同じ事を感じたのか、アルティシアお姉ちゃんが重い口を開こうとした―――


「やはり…そうか―――は…」


お姉ちゃんが私からの質問を黙秘で答えた事はない、ただこの時返事をしてもらえなかったのはがあったからだ、そして“疑問”から“確信”に変わって


「あーーーこんなとこにいた…全く、久々に戻って来たからってほっつき回るなっての、私の苦労を少しは考えなよ。」

「ベアトリクス!?てことはこの女の人ベアトリクスの知り合いなの?」

「そう……なの?みたいなのよ、不本意もちょー不本意だけどね。」

「あんたから『不本意それ』言われるとはねえ~?『エリ…』」

「次その名前口走ろうとしたら問答無用で『丸焼きくりすぴぃー』にしてあげるからね?」


私の“運命の友人”である『ベアトリクス』―――?!この“謎”なエルフの女性と共にいた。

私になつっこく絡んで来る『私のお母様とよく似た風貌かおだちのエルフの女性』と―――私と固い友誼を結びつつも日々の魔術の研鑽を怠らない様にと違う次元の世界を渡り歩く『次元の魔女』…この数奇な取り合わせは偶然性などではなく、ある必然性をもっかなえられたようなものでもあった。


そして―――『必然性』の最大の要因とも思える方が直々にお目見えした事で、この“謎”なエルフの女性の身元が明らかになったのだ。


「―――お母様…」

「(ふぅ)どこに行ったのかと思ったらこんな処にいたようだね、『相棒バディ』……」

「(え!?)お母様が―――『お母様』って…それに魔王様?今『相棒バディ』って…」


「いよぉ~う、何だか思ってた以上に景気良さそう面白そうなことになっているみたいじゃん、それに―――(フッ)たった今しがた『孫ちゃん』から『お母様?』って呼ばれた時にゃ私ゃ卒倒しちまいそうになっちゃったぜ。」

「(へ?)『孫…ちゃん』?私が?」

「やはりそうだ、シェラザードお母様と違わない容姿、ただその違いがあるとするなら纏う“オーラ”そのもの…と言った処か、いいかリルフィーヤあの人こそが死んだと思われていた私達のお婆様…『ヒルデガルド』その人だ!」


そう、今まで私になつっこく絡んで来た“謎”なエルフの女性こそ、シェラザードお母様が幼少の頃に当時の貴族派閥連合の策謀によって殺されたと言う『ヒルデガルド』だったのだ。

しかしそれでも謎は残る、今私達の目の前にその姿を晒しているのは間違いなくご本人様だとしても、なぜ『死亡説』が流布されてしまったのか……


「え?ありゃ?こっちじゃそう言う風になってんの?」

「まあ…『そう言う事にして貰っていた』―――と、私がそうしたんだけどね。」

「あ~~~それじゃ皆がびっくらこくのも無理ないか…それにシェラザードもちっちゃかったからねえ~?」

「それより…どうして『死んだことになっている』お母様がこんなに元気ピンピンしてるんです?」

「ふっ…その理由を聞きたいかね、ぅ若いの―――」


                   ん?


なんっ、なんだろう―――この芝居がかった喋り方…今から何か別の物語でも始まるのかな?そう思って聞いていたら…


          * * * * * * * * * *


あれはあ~そうじゃああーーー私が“糞”貴族連合共と喧々諤々けんけんがくがくやらかした後、その鬱憤うっぷん晴らしにと『樹海』へと分け入ってさんざんぱら魔獣を乱獲した時の事じゃったあ~

気の向くまま、赴くまま鬱憤うっぷんを晴らせた私を待ち受けていたものとは―――更なる凶悪な魔獣などではなく、突如として強烈な眩暈めまいに襲われたのじゃ。

そして気が付いた時にはアラ、マア大変―――見知らぬ男性の隣りで全裸まっぱになって寝ておった…


「ちょおーッと待って、え?これから官能小説始まるんですか?」

「んーーー?始まらんよ?私は実体験を基に話しているだけだしぃ。」

「実・体・験ですか…」「なんとも波乱に満ちておる実体験みたいじゃな」「それより裸の男との『そのあと』はどうなったんですか!?」(フンス!フンス!)「鼻息が荒いぞ!アルティシア…」

「(…)男の方は全裸まっぱじゃなかったよ?全裸まっぱだったのは飽くまで私だけだし。」

「(あ゛~)そう言えばお母様も寝る時だけは基本的に“裸族”だしねえ…」「それでそれで?その男とは最後までヤッちゃったの??」

「娘よ…おまいの方が積極的って―――私は…私は……私はあぁぁ~~~よくぞ言ってくれた!どうやら私の性教育は間違っていなかったと魔界の中心で声を大にして褒めてあげたい!」


「今重要なのは『そう言う事』じゃないでしょうに…全く、まあ要するにね、あんた達のご先祖様は『強制転移』させられたの。」

「『強制転移』?って“誰”に…」

「そんなの『神』でしかないでしょうに、全くああ言った連中ってね、『偉大』にして『尊大』で、しかも割と『独り善がり』にして『排他的』、『自己中心的』だから他人の迷惑なんてこれっぽっちも考えやしない…そんな『クズ』な連中なのよ。」

「なあーーーそれ、自分で言ってて痛くない?」

「るっさいわね!判ってるわよそんな事……」


―――不思議な感じがした…ベアトリクスとは久々に会うけれども、以前会っていた頃よりとはまた違って感じてしまったのはどうしてなんだろうか。

それにベアトリクスが明かしてくれた『強制転移』の件、これを受けて私達はどことなく判って来たのだ。


「なるほどな…行方不明となったとしてもその遺体は見つかるでもない―――」「だから安易な“落とし処”として『死亡説』を流させた…」

「(!)ちょっと待って―――だとしたら魔王様はその事を…」

「ああ、知っていた…意外に思われるかもしれないけれどね、私と彼女とはふるくからの知己しりあいなんだ、言ってみれば『切り離そうとしても中々切り離せない』と言った様な、ね。」


魔王様はそう仰るとその事については全く口をつぐんだままだった、疑問が…ならお母様は―――?シェラザードお母様は自分のお母様であるヒルデガルドを失って貴族達に対抗する事を胸に誓った…それがいつ、どのタイミングで『実は生きている』事を打ち明けられたのか。

それに―――その真相にあたって尚、魔王様に食い下がらない…

どうしてなんだろう、自分の納得が行かない事には例え魔王様にでさえ食い下がった事のあるお母様が……?


けれどは、私が知るべき時ではなかったから―――知るべき立場にもない事から、事情を話して貰えなかった


ただ―――魔王様は“誰”にも話していなかったわけではないみたいだった、そう今回話された人物が


それが私のお母様―――…


    ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


ここから少し時間を遡り、私は今回の打開策の模索の為に魔王様と相談する為に魔王城に足を運んでいた


「魔王様お話しがあります!」

「ああ、私もだよシェラザード…それにしてもやってくれたものだ、これだから『神』って言う連中は―――とは言っても無関係とは言い切れないけれどね、は…」

「(え…?)なにを仰っているんです?魔王様―――今はそれどころの話しじゃ…」

「判っている、私の良き隣人達の多くが犠牲となった、はっきりとした事を言えば今回の事態はよりも深刻だ…」

「そうですよ!ラプラスの時にはまだ『頭脳』が機能していました…それが今回は真っ先に『頭脳そこ』が狙われた…魔界が抱える『二大軍師』―――『魔界軍総参謀』であるベサリウスに【宵闇の魔女】ササラ…この2人を失ってしまった事でもう―――」

「私がこれから話そうとしているのはそう言う処にはない、寧ろだ…」

「(え?)だから何の事を―――早急に手を打って下されないとラプラスの時以上に…」

「“手”か…“手”は、『打つ』よ。 ただその前に話しておかなければならない事がある、シェラザード、きみ?」

「(は?)何を仰って―――私はこの魔界に存在する『スゥイルヴァン』の…」

―――確かに君はこの魔界が抱える超大国である『スゥイルヴァン』の当主である女王ではあるけれども、それ以前の―――?」

「(ええ…)―――?」

「君程の賢い者ががすぐに出てこないとはね―――…それは、【閉塞した世界に躍動する“光”】じゃなかったかな。」

「(!)そうだ―――私…確かにそう呼ばれていました、けれどそれが何の関係があるんだと…」

「いいかい、これから私が話す事を心してようくお聞き…実は私も、聞いた事くらいはあるだろう【奈落をも喰らう“闇”】―――と…」

「(!)その名前…たしかに聞いた事がある様な―――?」


私は、『スゥイルヴァン女王』以外にもある特異な名前を持っていた、それが【閉塞した世界に躍動する“光”】…この名前で以て私のお母様である『ヒルデガルド』を謀殺した貴族派閥連合や“外敵”である『ラプラス』の駆逐に精を出したものだ、そしてこの名前こそは私がお母様から引き継いだだと思っていたのに…それが魔王様も持っていた―――?!

いや―――そう言えば魔界へと侵攻してきた『ラプラス』へ反撃する時に魔王様はそう名乗っていたような…しかし私は、私の大切な人達を多く奪ったその怨みから『ラプラス』への復讐を果たすために頭の中が一杯になっており、そんな肝心な事を気付きもしなかった―――


それよりも……あれ?と、言う事は―――


「【“光”】と【“闇”】…それって何か関係があるんですか―――」


その事に気が付いた私は反射的にその事を訊いていた―――すると驚きの真実を以て答えられたのだ…


「ああ、『ある』―――単純にして明確に答えるとするならば、まさにその一言いちごんに要約されるだろう。」

「でっ、では―――私のお母様は……!」

「君の母上と私とは、元々1セットワンセットだった―――それに“私達”は元々独立独歩どくりつどっぽの存在ではない。」

「『ワン』…まるでその言い方“誰”かの持ち物の様な…」

「『様な』ではなく、紛れもなく持ち物なんだよ…は、とある神―――『神々の“父”』と讃えられ、そしてまた『天空』の名を持つ『ウラノス』が抱える“ユニット”でもある。」

「『神』??でも今魔界に攻め込んできているのは―――」

「そう、もまさしく『神』―――その尖兵達だ。」

「でも、あれ??それじゃこの世界に『神』なんて存在がいないのも―――」

「そう、だ、『魔界この世界』はウラノスによって管理されている、『魔界この世界』で展開されている様々な状況や統治・運営など、それらを調査・報告する役目が【“光”】と【“闇”】私達なんだ。」

「そ、そんな―――それじゃ私達…」


それは…衝撃的だった、なにより劇的でさえあった、私達が苦悩し抜いた上で選んできた事が、まさかだったなんて?!それに私の…の特異な名前―――それがまさか『神』と関係があったなんて!

私はやりきれなかった……実際私の目の前で多くの者が蹂躙され虐殺されたと言うのに―――だとしたらあれもだったのだと?!


だが…更なる衝撃の事実は止む事はなかった―――


「本来ならのような立場が統治者となるべきではない、それは『魔王』である私もそうだし『エヴァグリム王后』でもある君の母上もそうだ、ただ…状況が予断を許さなくなってね―――やらざるを得なくなってしまった。」

「『状況が予断を許さなくなった』?『やらざるを得なくなった』―――って、何の事…」

「君の母上だよ、彼女は熱血屋でね、虐げられている者を見ていると手をしたくなる―――そう言う性分は君や君の娘に本当によく似ているよ。」

「あ゛~~~なんか庶民が意地の悪い役人にいじめられてるのを視てると無償に手を出したくなる…あの衝動ってそう言う事なんです?」

「『善くも』『悪くも』と言った処だよ、本来なら調査・報告だけをしていればいいものを、人情家でもある彼女は居ても立ってもいられずに当時の王族の城に殴り込みに行った―――そこで気風きっぷの好さや威勢の好さを買われて当時の国王に見初められ…」

「(あ゛ーーー)『結婚』…そして『后』に―――」

「私もさすがに呆れもしたものだよ、本来の役目を放っぽといて政治の中枢にいてどうするんだい―――と」

「あのぉ~~~魔王様?お言葉ですけど……」

「(ふ)判っているよ―――って事くらい、けれどエヴァグリム王后としてやっているヒルダを見ていて私も(悪い方)に感化されてしまったみたいでね、今ではご覧の有り様さ、さすがの我等が主神あるじであるウラノス様も開いた口が塞がらなかったんじゃないかな。」


まあーーーなんとなくですけど、がエルフの王国の王族やっている理由が少しは判りました……てかお母様―――あんた何やってくれてんダヨ!熱血屋にして正義感溢るるのは判ったけどさあーーー当時の王国の城に『殴り込み』て……まあ私もヤルけどな、確実に。


         * * * * * * * * * *


しかし私が魔王様の下に来たのはを聞くためにではなく―――


「それと、もう一つ真相を…まあこれが最も重要で今回君が聞きに来た内容の答えになると思う。 率直に話すと―――シェラザード、君の母上は死んでなどはいない。」

「(ン?)は…?はああ~~~?イヤ―――それ今までで一番の衝撃的事実なんですけど?お母様は死んでいない―――って、それ本当…?」

「では聞こう、君は自分の母上であるヒルデガルドの葬儀に参列したよね、?」

「はい?はあ…まあ幼い頃の記憶ですけど確かに参列しましたが―――あれ?そう言えば…なかったかなあーーー遺体。」

「ではなぜヒルデガルドは死亡したのだと。」

「えーーーとお?」

おおむね『行方不明』となった場合、期間がどんなにかかろうが“捜索”はするはずだ、だが―――ヒルデガルドの捜索は早々に打ち切られた…何故だと思う?」

「それって…お母様の事を煙たがってた貴族派閥連合の差し金―――」

「当時魔王であった私も流石に異を唱えたよ、何だったら魔王としての強権を発動しても良かった―――けれど歴史を振り返ってみると、…なぜだろうね。」

「(…)まさか、ウラノスって言うひとが―――」

「釘を差されたものだよ、私達の主神あるじからのお言葉とあっては私とて逆らえない、そう…ヒルデガルドはウラノス様の思し召しによって、こことは別の異世界に転移されられたんだよ、―――だから私は事態収拾の為に『王后死亡』を流布させた…幼かった頃の君にとっては辛い事実だったけれどね。」

「(!)じ―――じゃあお母様はまだ…」

「ああ、生きている。 そしてここからが君が私に訊きに来た答えだ、私は彼女の『相棒バディ』として呼び戻す―――その算段も、もうついている…」


お母様は生きていた―――それもお母様が仕えていた神の仕業によってこことはまた別の異世界に転移させられたどこか遠くへとばされた先で、誰も知らないような世界で、土地で、元気にやっているのだろうか…ただ今はそれだけが心配だった―――の、だが…


お母様って“今”異世界にいるんだよね?そんなのどうやって連絡つけるつもり?それにどうやって呼び戻す……


すると魔王様は―――


「⦅やあ『ベアトリクス』かい、ちょっと聞いて貰いたい事があるんだけど―――いいかな?⦆」

「⦅はあ~い…て、師匠?!ああはい、なんでしょう…⦆」

「⦅『次元の魔女』である君にちょっとした協力をお願いしたくてね、私の処へ来てもらってもいいかな。⦆」


遥か遠くにいると言う魔王様の『弟子』に、超空間での連絡を付けた?その事にも大変驚いたんですが…確か『次元の魔女』ってえ~~~―――


「あのーーー魔王様?通話先の人ってもしかするとリルフィーヤが固い友誼を結んだと言っていた……」

「ああそうだよ?それに彼女はその名が示すようにこの宇宙に限り無く存在している『次元』と言うものを渡り歩いている、今彼女と会話できているのは彼女との間に“ホット・ライン”を繋げているからね、つまり―――」

「そのーーー『次元の魔女』を利用して別次元の世界にいると言うあなた様の『相棒バディ』を呼び寄せようと?」

「そう言う事だよ、それにどうやら来てくれたようだね。」


私も娘からそう言う話しは聞いていました……そして『ラプラス』の世界を滅亡の一歩手前まで追い込めさせたのも“誰かさん”からの無理矢理に近い形で成し遂げさせたのも…

それに『次元の魔女』って明らかに胡散臭そうな名付けネーミングじゃないですか…とはいえまあ娘の事は娘の事だからと私は飽くまでノー・タッチで来たんだけど…なんだかヤッヴァイ事にならなきゃいいケドナア~~~


と、言うか、冗談でもそう言う事を思うもんじゃありませんでした―――何故かと言うと私が想定していた(ヤッヴァイ)事よりも、ヤヤ左斜め上75度の方向性の(ヤッヴァイ)人が来ちゃったからデス。





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