間章 魅力的過ぎる技術
「凌空長官、ちょっと」
会議が終わった後、俺は凌空長官を呼び止めた。
「ん? 何か用かな有馬君、私はこの後忙しんだが?」
「凌空長官が仕事で忙しいことなんてないでしょ……それより『やまと』、イージス戦艦『やまと』のことで聞きたいことが……」
「ああ、あの艦の主機は核融合機関だよ。完成形じゃないから、1年に1回は整備しないといけないがね」
「!?!?!?」
なんかさらっと言ったぞこの人!? あまりの驚き具合に、声が出なかった。
「ラハティ級の艦砲を食らって、機関部にダメージが入った報告は受けた。現在『やまと』は機関部周辺の構造を修理している。まあそれでも、明日には復帰するがな」
「……その、核融合炉って、確か未完成の技術なんじゃ……それに、日本は非核三原則を持ってるんですよ? 良いんですかそんな技術を使って艦なんて作って……」
最大の疑問をぶつけると、けろっとした表情で、凌空長官は答える。
「何をいまさら? 日本では原子力発電所とともに核融合研究所はあった。それに、アメリカの原子力潜水艦だって入港したこともある。非核三原則なんて、9条以上にお飾りの決め事だ」
とんでもねえなこの国。
「……この機関のこと、核融合炉の話はどうして公表しないんですか? これがあれば、世界中の技術躍進が進みますよ」
「危険すぎるからだ」
書類を片付けながら、凌空長官は厳しい目で語る。
「核融合炉は、半永久的にエネルギーを作り続けられる機関だ。これさえあれば、きっと宇宙戦艦だって作れる。そんな技術を簡単に公開して、万が一悪用でもされてみろ、WAS以上の強大な敵が出来上がる」
凌空長官の言うことも、確かにもっともだ。
「せめて、この戦争が終わるまでは秘匿する。このエネルギーが平和利用できるような世界になるまでは、技術を公開する予定はない」
イージス戦艦『やまと』。もしかしたらあの子は、今後の地球を左右する重要な艦なのかもしれない。日本一国だけではなく、世界の命運を握る箱舟―――
――――なのかもしれない。
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