間章 大陸の不穏な影

 8月27日、09時12分、桜日帝国、千葉太平洋軍港にて。



「明後日、『大和』たちが帰ってくるってさ」


 一人の整備兵が言う。


「ほ~じゃあしばらく連合艦隊の主力が千葉に居るのか、そりゃすげーな」


 もう一人の整備兵は、片手にコーヒー缶を持ちながら話を聞いている。


「ん? 何か聞こえないか?」


 コーヒー缶をもっている整備兵が耳を澄ませる。


「これは……ジェット機の音か? にしても音が小さいような……」


 そう言って、コーヒーを持っていない方が空に目を凝らす。


「あ、あれは⁉」


 空を指さす、そこには真っ黒く、やや『P51』の形に似ているがプロペラは無く、その代わり小さいジェットエンジンが後ろについている。

 そしてその航空機が過ぎ去った後、重い重低音が聞こえ始める。


「まずい! 空襲だ!」


 コーヒー缶を持っている兵が叫ぶと同時に、遅すぎる空襲警報が鳴り響いた。

 すでに戦闘機らしきものは上空に侵入しており、爆撃機も見え始めている。

 

 そのころ、自衛隊レーダー本部では、慌ただしく状況整理が行われていた。


「くそ! 何故探知網に引っ掛からなかった⁉」


 そう言って担当者は机を叩く。


「機種の特定を急げ!」


 その人は叫ぶ。

 そうするとその人のもとに、一人の兵から資料が届けられる。


「こちらが敵機の情報です」


 その資料を開くと息を飲んだ。


「中国軍の『H-6』とWSだと……まさか……中華同盟が裏切った? いやしかしここで裏切っても得はしないだろう、そもそも裏切る理由が見当たらない」


 一人悩んで、電話を自衛隊観測部に繋げる。


「中華同盟の現在状況を至急教えろ」


 電話から声が返る。


「四日前から連絡が付きません」

「今分かっていることだけでいいから教えろ」


 そう言うと、電話の声はトーンを下げる。


「四日前、大量に進軍するWASの部隊を確認してから、連絡が途絶えました」


 その声を聴いて電話を切る。


「確定だな……中華同盟は落ちた!」


 その人は、兵を急いで呼び寄せる。


「おい、誰か伝令を受け取ってくれ!」


 一人の兵がダッシュで駆けよる。


「中華同盟落つ、状況を確認中、それと千葉軍港空襲受ける、入港は危険と感ず」


 そう言うとその兵は敬礼し、ダッシュで走り出した。


「畜生……最悪だ、予定を大幅に変更しなくちゃいけないじゃないか……」


 その人は椅子に座り込む、周りの人はすでに避難を完了している。


「日本は……桜日帝国は本当に勝てるのか? ロシア、アメリカに甚大な被害を与え、中華同盟を落とした相手に……」



  その時、天井を突き破り、丸くどす黒い、鉄の塊が降ってきた。


♦  ♦  ♦  登場兵器紹介・敵  ♦  ♦  ♦

機名:『轟炸六型(H-6)』 機種:戦略爆撃機  所属:中華同盟国


  全長:34.9メートル   全幅:33.0メートル 

最大速力:マッハ1  航続距離:6,800km


搭載エンジン:渦噴8 (ターボジェット) ???馬力

    武装:なし

    爆装:800キロ爆弾×11

       大型巡行ミサイル×2

       中型巡行ミサイル×4

       大型対艦ミサイル×2

       中型対艦ミサイル×4

       対艦弾道ミサイル×1

       機雷設置装置


 中国軍が保有していた戦略爆撃機、現在はWASが徴収し、使用しているとみられる。旧来の『H6』とは違い、固定武装であった機銃を取り外し、航続距離を少し伸ばした様子。元の機体はソ連が使用していた『Tu-16』を改修したもので、2045年現在では、旧式化が否めない。

♦  ♦  ♦  ♦  ♦  ♦  ♦  ♦  ♦

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