間章 墓石と娘の暗躍
現在、2月21日、01時22分、北海『おうりゅう』。
「『伊403』の情報通りです、目標三隻、音響で確認しました」
ヘッドフォンを外し、音響観測員が小さな声でそう言う。
「よし、気付かれないように接近、魚雷で仕留めるぞ」
艦長の号令に操舵員が舵を切り、ゆっくりと『スレイブニル』級潜水艦に近づいていく。
「艦首誘導魚雷、発射始め」
「発射」
静かに、潜水艦の艦首に着く発射管が開き、31式誘導魚雷が発射される。
『31式誘導魚雷』、日本が2031年に量産を開始した新型の誘導魚雷で、日本が保有する潜水艦の殆どは、この誘導魚雷と『32式通常魚雷』を搭載している。
「命中まで、2、1、今」
「爆発音確認」
『おうりゅう』の外では、静かにほかの『スレイブニル』級と接触を図ろうとしていた三隻に魚雷が命中し、元から耐久向きではなかった艦体に大穴をうがち、海の底へと引きずり込んでいた。
現在、02時01分、北海『伊403』。
「標的、『E』『F』『I』の反応消失、撃沈を確認」
北海のほぼ中心、『娘』はそこで感覚を研ぎ澄ましていた。
「『おうりゅう』に次の標的の指示を」
「はいよ」
そんな水中の『娘』の上に陣取るのは、異様な風貌の軍艦。
全長は300m程、前部はまるで『はれ型』イージス戦艦のように尖っているが段差は存在せず、二基の連装砲が存在感を示している。
中央に籠型の艦橋が立ち、両舷には通常より大きく見えるVLS、CLWS、見慣れた127ミリの単装砲、SeaRAMが並んでいる。
異様なのは艦後部で、真っ平な甲板が続き、航空甲板となっていて煙突は無い。
この艦の名前は多目的航空戦艦『りゅうおう』、ファントムが保有する唯一の軍艦。
「ヨミ、電力足りてるか?電探を切って、フルでそっちに回すこともできるが……」
通信機を介してヨミと話しているのは、『りゅうおう』に乗っている、大堀大佐で、今はりゅうおうの艦長席に座っている。
「今のところは大丈夫です、そちらが見つかってしまっては元も子も無いですからね」
現在、『りゅうおう』の電力の80%は水中の『伊403』に回しており、電探以外の機能は動いていない。
敵機をいち早く発見するために、電探だけは活動している。
「ここでいかに潜水艦の数を削れるかが勝負です……皆さん、よろしくお願いします」
私は、そう呟きながら次の標的を探していた。
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