間章 赤旗流突撃準備

現在、2月19日、14時44分。


ブリテン島キラマーシュ、シェフィールドまで約12キロ地点。


「突撃開始まで、後六分……」


 私は、林の中に掘られた小さな塹壕から顔を出し、奥に広がる平地を眺めていた。


「雨衣少佐、あんまり顔を出すとスナイパーに狙われますよ」


 石塚が、私の隣でそうぼやく。


「大丈夫、私なら避けれる」

「いくら何でも人には無理です」


 そんなやり取りをしながら、私は頭をひっこめると腕時計が鳴った。


「ハインケルだ、共に機甲師団の突撃用意はできた、北欧もオルガン部隊を揃え終えたようだ」


 現在、日独露の歩兵が三個師団分突撃待機している。

 歩兵に先駆けて突撃する戦車達。

 桜日『74式』五輌、『チハ改』十五輌。

 北欧『T18』十五輌、『T―34』四十五輌。

 鉄血『ティーガー』十輌。

 

「オルガン部隊って、まさか『カチューシャ2』まで持ってきたのあの人たち?」

 

 『カチューシャ2』、正式名称『SADA―3』SADA(サダ)は、Siberian Arms Development Agencyの略称で、日本語名はシベリア兵器開発機構。

 シベリアに本社を構える大規模な兵器開発会社、ほんの少し前にできたばかりで商品自体はそこまで多く無いものの、最もインパクトの強い商品と言えばこの車両だ。

 見た目は高速道路を走っていそうな10トントラックのくせに、荷台に積まれているコンテナを展開すると、左右と上の蓋が開き90門のロッケト発射口が開かれる。


「90連装とか絶対オーバースペックでしょ……」


 そんなことをぼやいていると、突撃開始二分前を告げる音が腕時計から鳴り響く。


「さて、仕事はしないとね」


 私は、脇に置いておいたkarを手に取る。


「飽和攻撃を始めてください」

「了解、飽和攻撃を開始する」


 私がそう腕時計で伝えると、松本さんの声でそう返ってきた。


「各員突撃用意!」


 その掛け声で、日独露の兵士たちが各々の武器を構え、号令を待った。

 最も多くの命が消し飛ぶ号令を。

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