間章 ロンドン解放


 現在、10時20分、ロンドン最終防衛基地、主力機甲師団並びに別動機甲師団合流。


「来援感謝します、ミスターハインケル」

「いえ、逆に遅くなってすまない、ミスターブリッシュ」


 二人はそう言って硬く握手を交わした。

 私はそんな光景を遠目で見ながら、航空機たちの配置指示を出す。


「ほらーそこぼさっとするなー、レシプロ機たちはちゃっちゃと滑走路脇に並べて、ジェットは格納庫に、もうすぐ輸送機くるから、滑走路の点検は念入りにねー」


 そんなことをしていると、上空に一機の機体が現れる。


「零、空、お帰り」


 あのエンジン音で軽快な旋回、羽の滑らかさ、間違えるはずない。


「吹雪、滑走路開いてる?」

「第一滑走路が開いてるからそっちに降りて」

「了解」


 私の無線機から零の声が聞えたのでそう返すと、軽快な動きで縦旋回し、こちらに向かってくる。

 そのまま何度か旋回し、速度を落とすと足を下ろし、着陸フラップを展開、ゆっくりと地面に足をつけ、私の前で停止する。


「よっす吹雪、今帰ったよ」

「お帰り、我らがバーサーカ嬢」


 私がそう言うと、空は零のコックピットから飛び降り、その隣に零が姿を現す。


「ただいま吹雪、空の護衛終わったよ」

「お疲れ、三拠点の攻略はどうだった?」


 私が聞くと零は目を細め、マフラーを整えながら言う。


「空が強いのがよくわかった」


 その言葉に、私がケラケラ笑っていると、後ろから数名の隊員が歩いてくる。


「おかえりなさい、少佐殿」


 第一部隊の隊員だろう男が、一丁の銃を空に差し出した。


「Kar、お返ししますよ」

「ありがとう伊藤」


 空は笑顔で差し出された銃を手に取り、背中に背負う。


「それと、ハインケル長官殿が攻撃の詳細を聞きたいそうですよ」

「分かった、すぐに行く」

「では、私はこれで」


 そう言って、伊藤と呼ばれた男は去って行く。


「私も行かないとだね」


 空もそう言って去って行く。


「じゃあ、とりあえず補給するから、機体動かしてもらえる、零?」

「分かった」


 私が離れると、微かにエンジンが動き、機体が滑走路脇にある駐車スペースの方へ進む。

 私は整備員に燃料補給車輌と弾薬を持ってくるように指示し、エンジンを止めた零の方へ向かう。


「うわー燃料ぎりぎりじゃん」


 私が零のコックピットに入り、メーターの確認をしていると、燃料の残量を示すメーターに目が留まった。


「だいぶ飛んでたからね、『二一型』でガタルカナルに行くよりは楽だったけど、流石に疲れたよ」


 笑いながら零は言うが、ほんと、後4~5分飛んでいたら燃料切れを起していたほどだ。


「まったく、あの長官には困ったものだよ」

「そう? あの人結構優秀な人だよ、指揮官としては」

 私のため息にそう零は返す。

 

 そんなゆったりとした空気が、ロンドンの基地には流れていた。

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