第一五〇話 SuperSecretWeapon

「その名はフランスの作戦部がつけた通称だ、不明機XXXでは呼びにくいからな」


 ハインケル長官はそう言うが、問題はそこではない。


「絶対、もっと何かを隠してますよ、この機体は」


 俺は三人にそう言うと、三人も同意見なのか、頷く。


「そこで君の出番だ、この機体の隠されている部分を、予想してくれないか? 君の予想なら当たるからな」

「んな無茶苦茶な!」


 どうしてそんなめんどくさいことを……それに、なんで当たると思ったんだよ。


「どうして俺なら当たると?」

「「「主人公補正」」」

「随分適当じゃないですか?」


 空にも言った気がするが、俺はラノベの主人公じゃないぞ?


「まあ、ひとまず君の見解を教えてくれ」


 そう強引に押し切られたので、俺は少し考えてみる。


「まず、考えなくてはならないのが、電磁兵器の存在ですね」


 高出力レーザーは電磁兵器、ならそれに類似する電磁兵器があってもおかしくないだろう。


「あと、艦載機は、完全な無人機だと、考えなくてはならないかもしれません」

「完全な無人機とは?」


 彭城艦長が首を捻る。

 確かに、これまでもAIを搭載した無人機は日本もWASも使ってきたが、それらは全て、コックピット部分に自動操縦装置を置いて人の代わりとしていたものであり、無人機としては、中途半端だった。


 それに、今までの無人機は、人が乗れるような機体構造だったが、今回の無人機は人を乗せることを想定していない機体だ。


「完全自立のボトムアップ型AIが操作している、作戦を遂行するためだけに生まれた人工兵器ってとこですかね、人を乗せることを一切想定していない機体」


 WASはついに、人のいない戦場を作り出そうとしているんだろうか?


「それでそれらを踏まえて『フライングトール』を墜とすには、どうすればいい?」

「超強力な対空砲か、迎撃できない量の一斉飽和攻撃……ですかね」

 

 おそらく、現状では『フライングトール』を戦闘機で撃墜するのは難しい、よってこれに頼るしかない。


「一斉飽和攻撃は分かるが、超強力な対空砲とは、具体的になんだ? アハトアハトで足りるか?」


 ハインケル長官がそう言うが、俺は首を振る。


「いえ、通常の火薬砲弾では、無理だと思います」


 敵の飛べる限界高度が分からない以上、射程に限界がある砲では安定しない。


「じゃあ、具体的に必要なスペックを並べてみてくれ」

「……電磁砲が理想……戦艦主砲並みの口径と狂いの無い目標測距技術ってとこですかね……」


 それを聞いた途端、ハインケルはピクリと肩を動かした。


「お前、まさか知っているのか?」

「何をでしょう?」

「とぼける気か!」


 ハインケル長官は、机を強く叩き俺を問い詰める。

 だが俺は、本当に何も知らないので、黙ることしかできない。


「その情報はドイツでも、大将クラスと一部の人間しか知らないんだぞ」

「落ち着いてくれハインケル長官、一体何に怒っているんだ」


 凌空長官がそう言いながら、ハインケル長官の肩を叩く。


「…………『バベルの塔』だ」


 目を瞑って少し考えた後、ハインケル長官は呟いた。


「それは一体?」


 俺が聞くと、ハインケル長官は、口を開く。


「『バベルの塔』正式名称は、『100センチ超電磁火薬補助型自走砲』、簡単にいえば移動が可能な超長距離砲だ」


 頭おかしいんじゃねえの?


「そんなもん作れるなら、『フライングトール』だって別に珍しくないのでは?」


 まあひとまず落ち着こう。

 現状、『フライングトール』と呼ばれる巨大航空機が欧州の空は徘徊していて、航空機での撃墜は不可能に近い。


 撃墜方法としては、一斉飽和攻撃、超強力な対空砲が考えらる……。

 その内、超強力な対空砲は、ドイツが隠し持っていた『バベルの塔』と呼ばれる火砲が有効だと思われる……。


 随分SFチックだな……。


「それで、何でそんな砲を隠し持っていたんですか?」


 俺が気になるのはそこだ、何故隠していたのか、何故俺がその存在を知っていると思われた時、あそこまで激昂したのか。


「あの砲はドイツ、いや、アイゼンクロイツの秘匿兵器の内の一つなんだ」


 秘匿兵器……。


「ここまで言ってしまったから話すが、絶対にこの話は広めないでくれよ?」


 ハインケル長官は確認するように俺たちの顔を見る。


「アイゼンクロイツはこの戦争で生き残るため、通称SSWスーパーシークレットウェポンを極秘で作成しておいたのだ、その内の一つが『バベルの塔』、超巨大な対地対空砲」


 少し溜めて、他の二つのことを話しだした。


「二つ目が『ティーガーⅢ』、『ティーガー』戦車の最終形態、三つ目が超高性能無人機『エース』の、『ハルトマン』と『バルクホルン』、二機の無人航空機だ」


 『バベルの塔』は、先ほどの説明で理解したが、『ティーガーⅢ』と、『エース』のことは、全く知らない。


「細かいことは、さすがに教えられない、だが、いつかこの車輌や機体が戦場を駆ける日が来ると思っている」


 ハインケル長官は、そう言いながら、頭を掻きむしる。


「SSWか……日本のスーパーシークレットは、何なんだろうなぁ」


 ぽつりと俺は呟き、少し考える。


 ……ん? そう言えば何か言わなくちゃいけないことがあったような……。


「あ、そう言えば、ヨミが、近海で『Ⅹ型』潜水艦に酷似した艦を発見しまし……」


 俺が言いかけて、艦内にサイレンが響いた。

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