間章 近代化改修開始

 そう言って、私は無数の資料に目を通す。その中には艦や航空機だけでなく、新たな兵装の設計図もまとめられていた。


戦艦『扶桑』


 主砲を36、5センチ連装砲六基十二門から、41センチ三連装砲三基九門に換装、艦橋を水面から50mなのを45mに縮小、代わりに大和に装着しているレーダー測距射撃用に、改21号電探を四基装着。

 エンジン部を改良型タービンに変更、最大速力を27ノットに増速。

 そして、後部に長さ12mの航空甲板を設置、発艦用の蒸気カタパルトを四基装着、水上機27機を搭載可能とする。


戦艦『長門』


 主砲を41センチ連装砲四基八門から、一番砲塔と四番砲塔を三連装に換装、合計十門とする。

 副砲塔は十八門中、上段につく両弦三門ずつ六門を撤去、代わりに長10センチ単装高角砲を装備、他14センチ砲の仰角も5度引き上げ、対空用五式弾を発射可能とする。

 その他、旗艦となるため通信機材を現代用に変更、水上機運用能力を向上、タービンとスクリューを換装し、速力増速。


戦艦『陸奥』


 装甲版追加、副砲を長門と同じように改装、速力増速。


戦艦『武蔵』


 対空機銃全てに防御シールドを装着、前後の副砲を撤去、長10センチ連装高角砲を装備。


戦艦『大和』


 水上機運用能力の強化、搭載機を7機から12機へ。

 21号対空電探四基のうち二基を48号対空電探、残りの二基は撤去、13号対空電探を、55号ステルスレーダーに換装。

 12、7センチ連装高角砲六基十二門を、改良型長十センチ連装高角砲六基十二門に換装。

 25ミリ三連装機銃を、改25ミリ三連装機銃に変更、CLWSを二基装備。

 タービンを換装、最大船速を29ノットに引き上げ。



航空機換装


 『赤城』『加賀』『蒼龍』『飛龍』艦載機を、戦『零戦七二型』爆『零戦六四型』攻『天山十二型』偵『彩雲改』へ換装。

 欧州へ出兵前に、友永と江草の記憶を『九七艦攻』と『九九艦爆』に挿入。

 12、7センチ連装高角砲を長10センチ高角砲と高射装置に換装。

 『瑞鶴』艦載機を、戦『烈風』爆『彗星十二型甲』攻『流星改』偵『彩雲改』へ換装、『大和』護衛艦の内の一隻の為、通信機器の能力向上、55号ステルスレーダーを搭載、並びに甲板を装甲甲板へ。

 12、7センチ連装高角砲を長10センチ高角砲と高射装置に換装。



新兵装



『五式弾』


 対空用榴弾、三式弾より拡散半径が広く、初速が速くなっている。赤外線レーダーの誘導も可能。14センチ以上の砲なら射撃可能。

 水素爆発を利用し爆発範囲に超高温の火球を形成、瞬間的に敵機体を溶かし、燃料を熱により発火、広範囲の敵を一瞬にして消し去る。


『改21号対空電探』


 通常の21号電探の機能に加え、対艦測距を行えるようにしたもの、大型艦にのみ搭載可能、射撃制度は良好なれど、測距可能射程にやや難あり(29キロ)。


『55号ステルスレーダー』


 通常の対空レーダーの役割と同時に、ステルス機やステルス艦などを捜索可能、ただまだ試験段階の為、13号対空電探の進化型として扱う。複数を同時に発動することで効果強化。


『48号対空電探』


 21号電探の発展強化版、見た目は21号とほぼ変わらないが、両端に突き出た棒が目印。

 純粋な性能向上型で、特に使用訓練は必要なし。


『長10センチ単装高角砲』


 長10センチ砲を小型化し、単装砲にしたもの、性能自体はほとんど変わらない、ただ改良はしていないので、半自動装填のまま。


『改良型長10センチ連装高角砲』


 長砲身10センチ連装高角砲に、自動装填システムを搭載した改良型、毎分46発射撃可能、オーバーヒート覚悟なら毎分50発可能。


『試作41センチ三連装砲』


 大和の46センチ三連装砲の砲塔を少し小さくして、砲身を四一年式41センチ45口径に改めたもの、最大射程は33キロ。

 難点として弾にややばらつきがみられる。


『零戦七二型』


 清原吹雪整備長(吹雪)が開発した『零戦』の発展強化版、エンジンや機銃を換装し、従来の『零戦』の中で最速で最高火力。

 しかし欠点として、航続距離がだいぶ縮んでいる。

 最速682キロ、最高航続距離1800㎞、機首機銃13、7ミリ二丁、両翼30ミリ二丁。


『零戦六四型』


 『零戦』シリーズの中で『爆戦』に分類され、800キロ爆弾が投下可能。

 その後、『零戦三二型』と同等の戦闘が可能。しかし20ミリの装弾数は両翼合わせて200発と少な目で、速度がだいぶ落ち込んでいる。急降下爆撃も可能。

 最速528キロ、最大爆装八〇番一発もしくは二五番三発、機首機銃7、7ミリ二丁、両翼20ミリ二丁。


『烈風二一型』


 『零戦』の後継機である『烈風』の完成形、『零戦』の欠点である急降下耐性、速度、防弾性を解決した機体。『零戦』ほどの機動性は発揮できないが機動力は良好である、火力も申し分なく、次期主力としては十分な性能を誇る。

 最速630キロ、最高航続距離1980㎞、最大爆装六番二発、両翼13、7ミリ二丁、20ミリ二丁。


『天山十二型』


 『九七艦攻』の後継機、操縦系統やその他諸々がそっくりで、速度性能や電探性能が上がっただけなので、機種転換の再訓練は必要なし、より早く、より正確に、敵に800㎏航空魚雷をお見舞いできるようになっている。


『流星改』


 現在瑞鶴に搭載されている『流星』の本来の姿、エンジンをハ43から誉三三型に換装、速度性能と加速性を強化している。

 そこまで大きな改良点は無いが、翼下に爆弾ではなくロケット弾用のレールが装着されているため、イ号二五号ロケット弾四発か、6Ⅿ44対空散発ロケット弾(『Ⅴ11』迎撃時に、『B17』に搭載した無誘導ロケット弾)を装備可能。


『彗星十二型甲』


 『瑞鶴』に搭載中の『彗星十二型』の後部機銃を、13、7ミリに換装したもの、『流星改』と同じく大きな相違点は無く、少々機体重量が重くなった程度。


『彩雲改』


 当時の日本軍レシプロ機の中で、トップクラスに早かったこの機体を、さらに高速化させた、最高速度は820キロほどだが、旋回性、機動性はすこぶる悪い。しかし上昇性、加速性、降下速度等はかなりの物。


『イ号四八式迎撃墳芯弾』


 固定発射装置から発射されるロケット弾、設定した信管距離を飛行すると、周辺の敵機を巻き込んで爆発する。その爆発も通常の火薬爆発ではなく、水素燃料爆発の為、強い爆風と反動を敵機に与え、かなりの効果を期待できる。




「ふぅ……」


 私は一通りの書類に目を通し終わり、大きく息をついた後、書類をまとめ、机の上に置く。


「……やはりあの子の頭は異常だ」


 そう呟いて私は部屋を出る。


現在、11時48分、昼食時だ。


「だいぶ長い間籠っていたようだな……昼食をとったらまた事務仕事だな」


 まだまだ軍に残っている書類上での問題は山積みだ、それらを少しでも解決して、現場で働く兵たちの役に立つ、それが私の仕事だ。


「よし、行くとするか」


 大きく息を吸って、私は海軍省に足を進めた。

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