間章 勝利への航路
8月29日、21時20分、『大和』防空指揮所。
あれからは何事もなく、長官方含め乗員は現在、夜間警戒組と交代を行っている。
「なあ大和、この戦争、日本は生き残れると思うか?」
俺は隣に座る大和に聞いてみる、そうすると大和は、胸を張って答えた。
「今度こそ守って見せるよ、桜日国の……いや、日本の未来を」
その言葉からは、大和の決意を感じた。
守り切る覚悟、振り返らない覚悟、戦争を行うにおいて最も必要な心構えを大和は持っているのだろう、それも当然か、彼女は兵器なのだから。
そう考え、俺は視線を海に戻そうとすると、大和が唐突に口を開いた。
「でもね、私達艦は、航路を示してくれないと進めないの……だからね、有馬」
大和は、防空指揮所の縁に立って、大きく手を広げる。
「勝利への航路は貴方が作って、私達兵器はその道をただひたすらに進むから、
どんなに辛くても、その道が未来に継ぐことができる道なら」
そんな大和の言葉に、俺は苦笑いを浮かべる。
「俺には、過ぎた大役だな」
そう言うと、大和は満面の笑みを浮かべ、
「大丈夫、有馬なら、きっとできるよ!」
そう大和は言った、俺はそんな大和を見て、士官帽をかぶり直す。
現代に蘇ったウェポンスピリッツは、祖国の未来を継ぐために、再び海を進み、空を飛び、地面を駆ける。
ウェポンスピリッツは未来に告げる、自分たちの祖国はここにあると、自分たちが祖国の未来を継げてみせると。
あれから百年、再び彼女たちのエンジンは、祖国のために動きだした。
―――第一幕、完
戦争は、始まった。
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