第28話

「さあ、今日はこれくらいにして明日は晴れるから山に行くよ。稔君も一緒に行くか?」

「はい。一緒に行ってお父さんに連絡します」

「よし。わかった」

 

 

その日の夕飯は稔も心も一緒に稔との送別会と称してお別れパーティをやった。

優希も心も「稔君の世界に連れて行って」と稔に頼んでいたが、もちろんそれは出来ることではなかった。

 

 

翌朝優希は学校へ出る前稔に言った。

 

 

「稔君、すごく楽しかったよ。ありがとう。僕はこちらの世界で少しでも稔君のような世界になれるように頑張るよ」

「うん。僕もすごく勉強になったよ。ありがとう。毎日の当たり前の生活が素晴らしいことにも気が付いたよ。いつまでも元気でいてね」

「うん。ありがとう。稔君もね。じゃあバイバイ」

「バイバイ」

 

 

二人の別れが終わって健司は山の上のレストランに稔と向かった。

途中、稔は涙ぐみながら健司に言った。

 

 

「健司さんありがとうございました。すごく良い勉強になりました。今の生活に感謝しなければいけないな~って思いました」

「そうだねー。お金の要る世界は苦労が多いけどどちらの世界も生きていることに感謝だね」

「はい。本当にありがとうございました」

 

 

稔は山上レストランに着くと父親に電話をした。

 

 

「お~!稔か?もう良いのか?」

「うん。いっぱい楽しんだよ」

「そっか~。良かったね。じゃあ気を失った所で待っててくれないか。帰れるようにするから」

「うん。わかった」

 

 

稔は健司と店員にお別れの挨拶をして約束の場所に向かった。

そして

周りが光った途端、人が多いスキー場に戻った。

なぜそのようになったのかは稔にはわからない。

それより元の世界に戻れたのが嬉しかった。

 

 

その後

稔が社会人として働く頃嬉しいニュースを見た。

「一つ前の世界が世界平和を実現しました」という内容であった。

 

 

そして

世界平和が実現するきっかけは「12歳の少年が世界を変える」という小説で主人公は稔という少年だった。

稔はそのとき思った。

「健司さんや優希君が頑張ったに違いない」と。


おわり

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

「お金を知らない子」 マー坊 @mabo3desu

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ