第3話:進んだ先に
アニエスが突如として攻撃態勢に入り敵意を見せた事で、ユニコーン達は一斉に二人の元から離れていった。
しかし、それなりの距離を取ってはいるものの逃げ去ってはおらず、十四頭全てがアニエスとフィーネを遠巻きに覗いている。
「こっち見てるよ。どうする?」
「……近づいてこないなら、殺さない。次寄ったら丸焼きにするけど」
そう言って杖を持ったままユニコーン達を威嚇するアニエスにフィーネは肩をすくめた。
「んー、アニエスが怒ってる理由はなんとなく予想がつくけど、あのウマたちがなにをしたのかはわからないなぁ」
「わからなくていい。くだらないから」
「はいはい。あとで自分で調べるからいいですよーっと。ところでアニエス、ウマとか動物の言ってることってわかるようになったんだっけ?」
「ある程度賢くないとちゃんとは解らないわ。だからこいつらはまったく駄目。頭悪いから」
「辛辣だね。まあいいけど。それじゃあ、ちょっと歩こうか」
「飛んでる時に何か見つけたの? 私、気絶寸前だったから島の形もわからなかったんだけど」
「うん。この島、人が住んでるよ」
フィーネが見たという人の住処を目指して二人は草原を進む。移動がてら、アニエスは魔法で周辺の地形を簡単に調査した。
フィーネは島の東端の方に着陸したようで、突然現れて住民を警戒させないよう一応は場所に配慮したのだとアニエスは少しだけ親友に感心した。
「結構広いわね」
「町もいくつかあったよ。そんな都会って感じじゃないけど」
「見えた範囲で湖とか川はあった?」
「小さい湖なら。けど川は無かったかな」
「ふぅん……まあ、この星なら生活水には困らないんでしょう。気候は穏やかだし、魔力環境も安定している。人間は住みやすそうな土地ね」
「移住する?」
「まさか。気になる事もあるし」
アニエスとフィーネは僅かに傾斜が生じ始めた草原を歩き続ける。
この辺りにはあまり背の高い植物は群生していないようで、二人の視界の範囲内に樹木の類は見当たらなかった。必然的に、視界も良好と言える。
「それにしても、鬱陶しい駄馬共」
ユニコーンの群れは相変わらず二人から少し離れた位置にいるのだが、その数が変化していた。
「なんかいつの間にか、増えてるんだけど」
「そうだね。十増えて二十四頭。同じような魔力の気配がちょっと離れたところに沢山あるし、この星ではそんなに珍しくないのかもよ」
「……だったら目障りだから焼き払ってやろうかしら」
「さっきこの星の人たちにどう扱われてるかわからないから殺すなって言ったのアニエスでしょ。これから初めて違う星の人と会うのにいきなり戦争するのはヤだよ」
「わかってるわよ。――ん」
歩いている途中、不意にアニエスが何かに軽くぶつかったような反応をする。
しかし、彼女に触れた物体は何も無い。
立ち止まって目を瞑り、本人だけがわかるその何かを探る。
長い付き合いのフィーネはよく知った親友の行動を少し待ってから、声をかけた。
「誰か近くにいた? ボクが見つけた町はもうちょっと先だったけど」
「何か作業をしているみたいね。しばらくいそうだから、このまま歩いていれば会うと思う」
「そっか。じゃ、ボクはどんな人がいるかは会ってからのお楽しみにしよっと」
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