ニ刀流ってなんだよ!

北京犬(英)

憧れ

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 二刀流憧れるよね。

黒い剣士さんのユニークスキルだったり、オータニサーンの投手とバッターの二刀流、まさに英雄の証だよね。


 で、俺は異世界転移に巻き込まれて、女神様からスキルを付与してもらえるって言われたんだ。

異世界基本セットは標準でついて来るらしくて、その他でお願いするとしたら、二刀流なんて格好良いなと思うのは当然だよね。


「良く分からないけど、それで良いのですか?」


「はい、お願いします!」


 運よく俺は、その英雄の証である二刀流を手に入れた。

はずだった。


 女神様の反応がおかしかったけれど、許可がもらえたことに俺は安堵した。

そして異世界転移して来て、早速ステータスを確認した。

そこにはユニークスキル【ニ刀流】の文字、もう小躍りするよね。

これで、俺は勇者街道まっしぐらと思うよね。


 だけど、訓練してもレベルアップしても、どう見ても二刀流が発動していない。

発動条件が「刀」にあるのかと、必死でお金を貯めて特注で刀も作ってもらった。

なのに、二刀流のスキルが発動することは全くなかった。

おかしいなぁ、なんでなんだろうなと悩んでいると、ある日違和感に気付いたんだよ。


「これ、漢数字の『二』じゃなくて、全角カナの『ニ』じゃねーか!」


 はい、皆さん。ゴシック体で表示しないで明朝体で表示してみて。

右上の「ぁあ」ってところを押してフォントを「ゴシック」から「明朝」にすればわかるってば。

ほら、漢数字の「二」じゃなくて、全角カナの「ニ」だってわかるでしょ?


「まぎらわしいわ!

しかも女神様、何やらかしてくれたんだよ!」


 まさかユニークスキルが「ニ(誤字)刀流」だなんて恥ずかしくてもう公言できないわ!

この日から俺は二刀流を封印して、刀1本で剣術を学ぶことにした。


 せっかくの刀を有効に使わなければ、もったいない。

こうなったら自力で二刀流を開眼するのみ。

努力をかさねた結果、俺は剣術道場で免許皆伝を取得していた。

俺は、街剣術ロバート流を史上最速でマスターしたのだ。

それは道場主であるロバートそっくり・・・・と言われるほど完璧な習得だった。


 だが、それでも二刀を扱うことは出来なかった。


「いろいろな剣術を学ぶべきか」


 そうやって複数の流派を渡り歩いた。

その授業料を工面するのに俺は必死でモンスターを倒した。

いつか、知らぬうちに冒険者ランクはAとなっていた。


「ここまで剣を極めても二刀流は遠かったか……」


 俺は諦めかけていた。

学べば剣術は簡単に・・・マスターできる。

なのに二刀を使うことが出来ない。

なんというか、二刀になると剣術の型が崩れてしまうのだ。

あらゆる流派を極めたが、そこから独自の剣術に発展していないようだ。


 ある時、魔王軍幹部が二刀流を使うという噂を耳にした。

ぜひ見てみたいものだ。

俺は、魔王軍に戦いを挑み、ついに二刀流を使う魔王軍幹部、羅刹将軍に出会った。


「反則だ! 腕が4本ありやがる!」


 羅刹将軍のその剣術は異常。

4本腕な故に楽々と二刀を操り、人では行なうことの出来ない剣術を使用していた。


「なるほど、その剣術見切った!」


 だが、俺にはその羅刹将軍の剣術が理解出来てしまった。

そして、初めて二刀流を使う事が出来たのだ。


「なんだその吸収の早さは!」


「さてな。俺は剣術を模倣・・するのが得意みたいでな。

他の剣術も一目見れば会得することが出来たのさ」


「その力、ユニークスキルか!」


「冗談を言うな!

俺のユニークスキルは使い物にならない『ニ(誤字)刀流』だ。

笑えるだろ? 漢数字の『二』じゃなくて、全角カナの『ニ』なんだぜ」


「ふん、笑えるのは貴様の間抜けさだろうよ」


「負け惜しみを!」


 ついに俺は羅刹将軍に一太刀入れていた。

羅刹将軍が致命傷を負い、地に膝をつく。


「待て、俺はもう駄目だ。

最後に貴様のバカさ加減を教えてやろう」


 そう言うと、羅刹将軍は刀を鞘に納めて座り込んだ。

そして自らの二刀を俺に差し出した。


「くれてやる」


 それはいつでも殺せと言うかの如き行動だった。

俺はその態度に刀を納めるしかなかった。

一角ひとかどの武人が、騙し討ちをするとは思えなかったのだ。

俺は羅刹将軍の最後の言葉に耳を傾けた。


「貴様のユニークスキルは『似刀流』だ。

全ての剣技を模倣し、自らのものとする剣術だ。

その努力を惜しまなかった結果、『二刀流』を開眼したのだ。

貴様の努力が全ての剣術を覚えたことで結晶したのだ」


「まさか」


「そうでなければ、俺が討たれるわけがない。

そう思わせてくれ」


 そう言うと羅刹将軍は亡くなった。

敵ではあったが、俺にとって最後の師だったのだ。


 そして、俺はいつのまにか英雄と呼ばれ、魔王の討伐を行なっていた。


「おめでとうございます。

魔王の討伐を確認しました。

勇者クエストの完了を宣言いたします。

もと・・の世界に行けますが、いかがいたしますか?」


 俺の目の前にあの女神様が現れて、元の世界に戻れると言う。

いや、そう一筋縄で行ける相手か?


「待て、そのもと・・が引っ掛かる。

また誤字でモトという世界に行かされるのではないだろうな?」


 この女神、わざとやっている気がする。

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ニ刀流ってなんだよ! 北京犬(英) @pekipeki0329

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