第25話夢見る少女でいられない ! 後編

【コロッケside】


 どうして……どうしてこうなったんだ !

 最近、姉ちゃん洋子ちゃんが、タビに逢いに良く行くので 俺は自転車のカゴに乗り一緒に付き添ってやるのだが、今日は何時もにもまして興奮していたんだよな。

 そして江戸さん家タビの家に来て見ると子猫が1匹増えていた訳だ。


「わあー! 可愛いー ! 本当にタキシードを着ているみたいな模様もようみたいだね。 タビちゃんと良い、子猫は可愛いなぁ~。

 それに比べて、ウチのコロッケは…………」


ニャァ~ゴ悪かったなニャァ~ゴ可愛くなくて ニャァ~ゴ子猫の間は ニャァ~ゴ皆、可愛いいんだよ!」


 最近、俺の扱い方が『ざつ』に成っているのは気のせいで無いと思うんだ !


 俺が顔を見せるとタビと子猫が寄って来た。


ニャァ、ニャァおじちゃん、いらっしゃい!」


ウニャァ~おっちゃんウニャァウニャァ遊んでちょうだいな!」


 ………この子猫、何処かで見た子猫こどもだと思っていたら、オコゲの息子のボンドか ?

 いつの間に江戸さん家タビの家に………子猫が遊びに来れる距離では無いから………貰われて来たのか !


 まっ まさか、姉ちゃん洋子ちゃん此処ここに来た目的は、ボンドに逢う為だったのか !


 俺の灰色はいいろ脳細胞のうさいぼうが真実を導き出している間、タビとボンドが俺にじゃれている。

 一生懸命に動いている俺の脳細胞の為に動けないのだ、そう 俺の小さな『脳細胞』は二つ同時進行は出来ないのだ。


 ピタン ピタン ピタン 考えていると尻尾が勝手に動いている。

 それにタビとボンドが反応して俺の尻尾に飛び掛かった !


 ガシッ ガブリ !


ウニャアーアアぎゃーぁぁぁニャァニャァニャァ~ゴ痛い 痛い かまないでくれぇ!」


 タビが俺の尻尾にみついた !

 俺の尻尾は玩具おもちゃじゃ無いんだぞ !


 そんな様子を姉ちゃん洋子ちゃんや江戸さん家の人がニヤニヤしながら見ていた。


「コロッケは偉いねぇ~、子猫が悪戯いたずらをしても怒らないなんて僕は感動したよ !」


「ウム、コロッケも『おとこ』なんだな !」


「 大人の余裕と云う奴だね、後でコロッケにもタビのオヤツをあげようかな 」


「勇気さんもひとみ先輩もコロッケを、かいかぶり過ぎです !

 単ににぶいだけですよ。

 それと大江戸先輩は、甘過ぎます ! コロッケは食べすぎで太っているからオヤツをあげると此処ここに居着いちゃいますよ !」


 ………姉ちゃん洋子ちゃん ひでえ~よぉ~ !


 むっ、視線を感じる………辺りを見回すと庭の隅でオコゲとガンモが仲良さそうに此方こちらを見ていた。


 なっ ! お前ガンモ、いつの間にオコゲとそんなに仲良く成っているんだよ !

 俺の視線に気がついたオコゲがガンモの毛繕けづくろいを始めた。


「プークスクス ! コロッケの顔が百面相をしているわ 」


「 ウッシー、あまり笑ってやるなよ ! コロッケも頑張ったんだ 」


「だって、にゃん太郎親分 ! ボンドがタビのお婿さん候補と知らないで遊びに来ているコロッケが面白かったんだもん !」


 グルン ! 思わずボンドとタビ、にゃん太郎親分とウッシーを交互に見た。


「にゃん太郎親分、ウッシー ! 今の話は本当なのか ?」


「本当よ ! 今は子猫こどもだからコロッケでも相手にしてくれるけど、直ぐに相手にしてくれなくなるわよ !

 雌猫女の子は、何時までも『夢見る少女』では無いのよ !

 雄猫と違って雌猫は『現実』を見るのよ !」


 にゃん太郎親分は眼をつぶり黙っている。


 ガビーーーン !


 いつの間にか 俺は、ガンモどころか子猫のボンドにも負けたのか ?


 ガンモを見ると戸惑っているように見えるが、嫌そうには見え無い。

 甲斐甲斐しくオコゲはガンモの毛繕いをしている。


 にゃん太郎親分とウッシーは………普通だな、流石に三人目の彼女なんて『天』が許しても俺が許さない !

 親分の彼女のカスミちゃんやマユキちゃんに言付けてやる !


 ふと見ると姉ちゃん洋子ちゃんの視線が俺達では無く別の方向に向いている。

 姉ちゃん洋子ちゃんの視線を追うと………


 人間の一人の男に五人の女がピタリと付いている。

 隣の部屋では酔っぱらいの女の腕枕に男が寄り添って寝ていた。


 独り者は、俺と姉ちゃん洋子ちゃんだけみたいだ………



 うわぁ~~ん ! 俺の仲間家族姉ちゃん洋子ちゃんだけだぁ !








 ───頑張れ ! コロッケ。 明日があるさ……たぶん───

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