第6話 親分はタイヘンだよ !


【😼にゃん太郎side 】



今、俺の前にガンモとコロッケが土下座している。

猫の土下座は、うつ伏せになって両手を頭に乗せる姿を云うんだけど、何を謝りたいのかと考えていたら


「 親分、親分、にゃん太郎親分 !

コイツら、ついに五十回もフラれたんだぜ !

弥七に聞いたから間違い無いですよ 」


メンマが教えてくれたんだが………コイツら本当に百回に届くんじゃないんだろうなぁ~


「 親分、オイラに可愛い彼女メス猫を紹介してくれよぉ~ 」


「 親分、親分、 俺の方を先に紹介してくれぇ~

コイツガンモだけには、負けたくないんだよぉ~ 」



五十回と云うと、この辺りの女の子メス猫だけで無く

隣の縄張りまで手を広げたなぁ~


三丁目のボスである俺と五丁目のボス 五右衛門ごえもんは仲が良かったから良いものの、普通は喧嘩ケンカに発展するんだぞ !


親分の苦労が判らないのか !………判らないんだろうなぁ~

コイツら脳天気だからなぁ~


先代の『 トラ親分 』も苦労したんだと、今更ながらに判ったよ !



「 親分、親分 コイツコロッケ一昨日おととい、江戸さん家の『 タビ 』にプロポーズしたんだぜ !

まだ幼女子猫なのに、いくらなんでも早すぎだろう !

その上、江戸さんに叩き出されたんだぜ !

俺達にご飯エサをくれる優しい人間に迷惑かけやがって、猫の面汚しだぜ ! 」



「 そう言うお前ガンモだって昨日、八百屋さんの『 エリザベスお婆さん』に告白したのを知っているんだよ !

八百屋のおじさん、おばさんだってご飯エサをくれるのに警戒して、しばらくはご飯エサを貰えないじゃないか !」



「「 シャァーーー !( お前が悪い ! )」」


やれやれ、喧嘩を止めるのもボス猫の仕事のウチかぁ~



「 キシャァーーー ! ( 止めろ ! 喧嘩をするんじゃない )」



「「 だったら、親分が女の子メス猫を紹介してくれよ ! 」」



…………コイツら、こういう時だけ気が合うのな!


「 なら、ウッシーはどうだ ? 確か、今は フリー のはずだぞ」


「 親分、親分、コイツら既にアタックして撃沈しているそうですよ ! 」


メンマからの情報を聞いて奴らガンモ、コロッケを 見ると、そっぽを向いて毛繕けづくろいをして誤魔化していた。



クゥゥゥ


腹の虫が鳴ってしまってから気づいたが、朝からご飯メシを食べていなかったなぁ。


今日は、おっちゃんの店は休みだから期待は薄いが行ってみるか。


俺が、おっちゃんの店に向かうと奴らも追いてきた。


「 親分、オイラに紹介してくれるまで離れないからな !」


「 俺だって親分から紹介されるまで離れる気は無いぞ ! 」




とうとう本当に店まで追いて来やがった !


「 ん ! そういえば、おっちゃんの家のアノ子猫も今頃はお年頃の娘に成っている頃だなぁ~ 」


独り言を言ってしまったのが不味かった、途端に奴らが反応してしまった。


「 親分、今の話は本当かい !

それなら、オイラに紹介してくれよ ! 」


「 ズルいぞ ! 俺にも紹介してくれよぉー ! 」


ガンモとコロッケが騒いでいると小屋からウッシーが出てきた。



「 もー! もー ! もー ! やっと子供達が寝た処なのに起きてしまうじゃないのさ !

騒ぐなら他所でやっておくれよ ! 」



迷惑をかけてしまったウッシーに事情を説明したら


「 親分だよりにしないで、アンタ達ガンモ、コロッケが直接、おっちゃんに頼めば良いだろう !

それとも誰かに頼らないと告白も出来ないヘタレなのかい ?」



「 なにおー ! オイラは、自分で告白できるよ ! 」


「 俺だって、ガンモなんかに負けてらんないよ ! 」


そんな事を言っていると店の裏口のドアが開き、おっちゃんが現れた。


「 遅くなって悪かったなぁ~

…………えっ ! ウッシーとにゃん太郎の他にガンモとコロッケまで居るのか ? 持って来た缶詰めだけでは足り無いかなぁ~

そうだ ! ポケットに『さくら』のオヤツのジャーキーが有ったな 」


おっちゃんが、せっかくジャーキーを出してくれたのに奴らは、おっちゃんの『さくら』の言葉に反応して



「 ニャァ~オ ニャァ~オ ニャァ~オ ニャァ~オ ニャァ~オ

( おっちゃん おっちゃん、 オイラにおっちゃんの家の『さくら』を紹介してくれよ !)」



「 ニュァ~ゴ ニュァ~ゴ ニュァ~ゴ ニュァ~ゴ ニュァ~ゴ

そんな奴ガンモより俺に紹介してくれよ、おっちゃん !『 さくら』って美猫なのかい、会わせてくれよ ! 」



しかし、人間である おっちゃんに通じる訳は無く………


「 何を騒いでいるんだ、お前達はガンモ、コロッケ

腹が減っているようでは無いようだし猫語は、流石に解らないぞ 」



何時も世話に成っている おっちゃんを困らせている奴らに俺が注意しようとしたら



「ニャ ニャ ニャ ニャ ニャォ~ン ニャォ~ン !

( もー!もー!もー! いい加減にしなさいよぉー !

おっちゃんを困らせると、私が承知しょうちしないからね ! 」



ウッシーの剣幕けんまくに驚いた奴らは、大人しく成って おっちゃんからオヤツを貰っていた。



「 ウッシー、ありがとう。 ウッシーが二匹に注意してくれたんだろう。 今度、ウッシーに『さくら』の『モ☆プチ・ゴールド』をお土産に持って来るからな 」



おっちゃんの言葉に満足そうにしているウッシーが居た。



俺の名は、にゃん太郎。 仲間達に振り回されて苦労するボス猫だ。



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