女神にスキルを貰う時

信仙夜祭

女神にスキルを貰う時

 今俺の前に、神様を自称する存在がいる。

 それはいんだけど……。


「申し訳ありませんでした!」


 土下座って日本の文化じゃないの?

 金髪碧眼で西洋美術史に出て来る、ルネサンス期(?)の様な服装でされてもこちらが困る。

 でも、日本語は流暢だな。


「え~と、何で謝られているのですか?」


「手違いでして……。魂を抜き取ってしまいました」


「それは……、俺は死亡したと言う事ですか?」


「……そうなります」


 その後、俺の元肉体を見せて貰う。

 事故に遭った記憶が最後だけど、そこまで酷くはなかった。


「生き返るのは、無理があるのですよね?」


「え~とですね。選択肢は三つですね。

 1、閻魔大王様に会う

 2、生き返る

 3、異世界に行く

 になります」


「異世界!?」


「ご興味があるのですか? でも、チートはあげられませんよ?」


 げんなりする……。チートなしの異世界転生してもな~。魔法には興味あるけど、チートじゃなければ意味なんてないし。


「……『2』だと、問題があるのですよね? だから、謝っていると思うのですが」


「短時間の心肺停止による低酸素脳症と足に障害が出ちゃいますね。それでも良ければ……」


 俺は、母子家庭だ。幼い弟もいる。

 今死ぬ訳にはいかない。

 でも、ローファンタジー的に考えてみるか……。


「なにか、才能ギフトとか貰えませんか?」


「内容によるのですが……」


「金運とか?」


「却下」


「幸運とか?」


「却下!」


「異性にモテる」


「却下!」


 ダメじゃん!!


「なんならOKなんですか?」


「一般的なモノですね。筋力アップとか、速く走れるとか、頭が良くなるとか……」


 思案する……。


「仮に足に障害が残る体に、『速く走れる』才能ギフトを貰った場合は、どうなりますか?」


「内容によります。長距離の才能であれば、『心肺機能の強化』も含まれますし、短距離の才能であれば、『筋肉が付きやすい』肉体になりますけど……」


 ふむふむ……。


「両方くれれば、『2』を選んでも良さそうですね」


「本当ですか!? でも、それだと才能ギフト同士が打ち消しあっちゃいますよ?」


 予想外の選択なんだろうな。

 俺の真意は、読まれていないみたいだ。

 その後、細かい取り決めを行って、俺は生き返った。





 意識を取り戻した俺は、若干の意識混濁が見られたけど、特に脳障害までには至らなかった。

 まあ、脳震盪の診断は受けたけどね。

 足は、骨折してたけど、元に戻った。50メートル走は、記録として変化ないので才能ギフトの効果は出ていない。

 長距離走は……、努力次第かもしれないな。


 それよりも……、だ。


「お前……すごいな。プロになれるんじゃないか?」


「俺の足じゃ、無理だよ」


 今俺は、ロードバイクに乗っている。

 そして、3連覇を達成した。まあ、小さな市民大会のレースだけどね。

 ちなみに、ロードバイクは、学校からの借り物だ。表彰を受ける可能性が高いので、学校側も喜んで貸してくれる。


 あの時の神様は、『才能ギフト同士が打ち消しあう』と言った。

 だけど、結果として俺は、恵まれた肉体を貰ったのだ。

 強靭な心肺機能と膨らみやすい筋肉の両立。

 選ぶ競技によって、両立は可能だと思う。

 水泳なんかも負けなしだ。学校で一番の成績を収めており、体育大学からスカウトも来た。スポーツテストの成績は、今一つだけどね。

 特定のスポーツならプロになれると思うけど、ズルで勝っても嬉しくないので、スポーツ選手にはならない。


 それと、もう一つ。

 鋼のメンタルだ。

 肉体を鍛える場合には、精神力が不可欠だと思った。

 そして、予想通り高い精神力を持つに至ったのだ。それも、常人よりも遥かに高いレベルで。


「風が気持ちいいな~」


「ゴールしたってのに、余裕なんだな。俺はヘトヘトだよ」


 才能ギフトが違うからね……。

 "長距離の才能"と"短距離の才能"の二刀流……。

 打ち消し合うのではなく、『共存』の道はあると思った。

 そして、それは叶った。


「どんな才能も、使い方次第だよな~」

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