維新の声がする

サムライ・ビジョン

いのち短し侍たち

「あんたには悪ぃがここで死んでもらう」

甘味処を出たひとりの若者を、待ってましたとばかりに囲む。


「おうおう…そんななやり方してからに…他のお客さんがたまげるやろて」

昼下がりの江戸の街。人々は五人衆をなんだなんだと見守るばかりか。


「こちとら暇じゃないんでね。仕事を果たさねぇと…オカミがやかましいんだ…」

左目に古傷を見せる男は、刀を光らせ不敵に笑う。


「仕事…ね。おまんらは何かい? 新撰組の回し者か?」

それでも狼狽えぬのがこの男。呑気に団子をひとつ頬張った。


「…もしそうだとすれば?」

古傷の男は、綽々しゃくしゃくとした目の前の若者がとかく気に食わなかった。若者の返答次第では…


「まぁ…邪魔立てだけは…勘弁じゃのぉ?」


若者がつばに手をかけたのを、古傷の男が見逃すはずもなかった。半円を描くように振るわれたその刃。

しかし若者とてしごかれた身である。腰を滑らかに折るや否や、そのまま己の刀を抜いた。


素早く向き直す若者。

「ようやく舞台は整ったのぉ! 刀と刀のぶつかり合い! 五人で一人ひとぉりを襲おうっちゅうさ! …お客さんに見てもらおうやないの?」


野次馬を見やった若者は、言葉とは裏腹に眼光するどく、左右の刀を同時に抜いた。


「ふんっ…二刀流かい? かっこつけられんのも今のうちだぞ!」

古傷の男は叫び、振りかかった。

その刹那…




カキィン…

古傷の男の刀に容赦のない打撃が加わった。しかし、その打撃は彼と同じように刀によるものではない。


「おかあちゃん…あれって!」

様子を見ていた名もなき幼子も、物珍しい光景に目を輝かせている。

「…お嬢ちゃんも使ってみるかい?」

若者が右手に持つその刀…いや、刀を模した…




「火縄銃か…?」

「うーん…ハイカラな言い方をするんやったら…『ライフル銃』になるんかのぉ?」


若者は「ライフル銃」を肩に担ぎ、いたずらな笑顔を見せた。

あまりの衝撃に刀を落とした古傷の男は、呆気にとられて声も出なかったが、若者は追い討ちをかけるようにこう言った。




「おまんらが何者なにもんなんかは知らんけど、日本にっぽんの未来を邪魔するんやったら…何しでかすか分からんで?」

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