第14話 璃緒目線

「『あ、噂してたら。』」


千春の話を聞いて、これは高瀬のことを好きになり始めていると思った私。


高瀬の話をしていたらちょうど本人が私たちのクラスに入ってきた。教室の中が少しざわつく。

ここまではいつもの事。別に高瀬本人も気にしてなさそうだしスルーしていた。だが、今日は少し違ったんだ。


高瀬が周りをキョロキョロして私たちを見つけると近寄ってきた。歩き方や雰囲気が不良のそれだ。千春はパニクっている。可愛い。


「傍から見たらカツアゲに来たようにしか見えないよ高瀬。もう少し人相柔らかくしな。」


と言うと、高瀬は「うるせー」と言って千春と会話を始めた。


この時だ。少しざわついた教室の中からこの言葉が聞こえてきた。


「高瀬くんって不良って話だけどイケメンだよね。」


「わかる〜!あのオラついた感じ最高!」


ここまでは我慢できた。問題はここからだった。


「でもなんで杉原さんと?あの人耳聞こえないんでしょ?」


「ねー、私たちが話そうとしたら紙出してきてこれに書いてって、めんどくさいよね。」


「ほんとね!なんか耳聞こえないアピールっていうかそういうのヤダね。なんでそういう人の学校行かなかったんだろう。」


ここで私の堪忍袋の緒が切れた。


「おい誰だ耳聞こえないアピールっつった奴!お前か?ならてめぇは何かわかんのかよ千春の耳のこと、よく知りもしねぇでそういうこと言えたもんだな。知性ママのお腹ん中に置いてきたんじゃねーのか?それとも、それすらも分からない幼稚園児かなんかか?いっぺんおたまじゃくしから人生やり直してこい!このく…」


ここまで言ったところで「やめろ」と高瀬から止められた。

ハッとして千春の方を見ると、キョトンとした顔から申し訳なさそうに笑い、顔を下げた。


その瞬間に高瀬が上手く話を持っていってくれたおかげで何とかなった。

私はアピールがどうのこうのと言っていた奴らにグッドサインを下に向けたものを返してその後は高瀬と千春の通訳をした。


2人の話が終わり、私は千春に席を外すことを伝え高瀬と教室を出た。


「さっきは止めてくれてありがとう。高瀬。」


「……別に、うるさかっただけだ。」


「ったく、あんた本当に昔から不器用だね。千春にそんな態度とってたらいつか嫌われるんじゃない?」


「は、誰がそんなこと」


「見てたらわかるっつの、昔っから分かりやすいからね〜龍ちゃんは。」


「チッ……黙っとけよ。」


「誰がこんな楽しいこと言うか。ま、千春の好みとか知りたいんだったら任せな。隅々まで教えてやるから。」


「文月は杉原のなんなんだよ……」


「家の外での保護者。」


「……俺よりお前の方がよっぽど不良らしいよな。言動。」


「さあね、私は知らなーい。あ、あと、千春泣かせたらお前の玉とるから。」


「おまっ……くそ、わーったよ。」


「じゃ、千春のところ行くからまたね。」


そのまま私は千春のところに戻る。

案外、幼馴染っていいもんだな。

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言葉の代わりにリナリアを 撫子 @nadeshiko_2304

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