雪ん子 VS 《お好み焼き》赤鬼 ~「俺の召喚獣だけレベルアップする」外伝~

帝国城摂政

第1話 雪ん子 VS 《お好み焼き》赤鬼

 俺の名前は、冴島渉。

 冒険者として活動している、【召喚士】である。


 ダンジョンがいきなり出現したこの世界では、【召喚士】はそんなに強くない、はずれの職業だと言われている。

 その理由が、【召喚士】の武器である召喚獣が一切レベルアップしないという理由からなのだが……まぁ、とあるダンジョンで召喚獣をレベルアップさせるスキルを手に入れた。

 そんな俺は、レベルアップ可能にした召喚獣----雪ん子と共に、ダンジョンを巡っていたのだが----。


「なんか、変なのが出てきたな……」


 今日、俺達が潜ったダンジョンの名前は、特殊ダンジョン《クヨムカの里》という。

 最近、良い感じに稼げるという話だったので、入って見て、評判通り稼げるダンジョンであったので、最奥であるボスの間に来たのだが、そこには変な鬼がボスとして出現していた。



「ぐぉぉぉぉ!! 返す! 返す! 返すぅぅぅぅぅ!!」


 そこに居たのは、頭がお好み焼きの、超個性的な髪型をした赤鬼。

 手に持っているのはお好み焼きを返す際に使うお好み返し、それを2つ持って、まるで二刀流で有名な宮本武蔵をオマージュしてる感じがした。

 ……いや、ただのお好み焼き頭の赤鬼なんだけど。



 ===== ===== =====

 【《お好み焼き》赤鬼】 ランク;? 《クヨムカの里》ボス魔物

 お好み焼きで世界中の人達をひっくり返す【世界球体=お好み焼き世界=】の力を与えられた、赤鬼のボス魔物。倒すと、オーラ系職業の1つ、【お好み焼き】を使用することが出来るようになる

 髪の毛代わりのお好み焼きが熱せられるほど、身体能力が高まり、なおかつ2つの返しは相手の攻撃をくるりとひっくり返します


(※)このボス魔物を倒した場合、オーラ系統職業【お好み焼き】が解放されます

 該当の四大力を持つ者に、職業変更の勧誘がありますので、了承した場合、その職業に変更できます

 ===== ===== =====



「またこの間の《機動要塞》のような、ヘンテコボスか……」


 以前にも、俺は《機動要塞》の力を得た吸血鬼という、正直なにを言ってんのか俺自身も分かんないような相手と戦ったことがある。

 そして、コイツはその時の奴と同じように、変な職業を無理やり与えられたボス魔物という事なのだろう。


「ひっくり! ひっくり返すぅぅぅぅ!!」


 距離が離れているここからでも分かるくらい、頭のお好み焼きから熱気を放つ湯気が出てるボス赤鬼は、まるでクロサイのように一直線に突撃してきた。


「《ぴぃ!! がん、ばるっ!!》」


 雪ん子も剣を構え、そのままボス赤鬼へ向かって直進する。


「《こうっ!!》」


 先に仕掛けたのは、うちの雪ん子の方だった。

 雪ん子が剣を横に薙ぎ払うと、ボス赤鬼は2つある返しのうちの1つで、それを防ぐ。


 ----ぐるんっ!!

「《ぴぃっ?!》」


 雪ん子の剣が返しに当たった瞬間、雪ん子はその場でひっくり返されて転ぶ。

 まるで柔道の足払いを綺麗に決められたかのような、見事すぎる転びっぷり。


 なるほど、あの返しに当たると、何の脈絡もなく吹っ飛んでひっくり返されるのか。


「----って、感心してる場合じゃない!! 雪ん子、転がれ!!」

「《ぴぴっ!!》」


 俺の指示を受け、雪ん子はそのままごろんと転がる。

 そのすぐ後に、さっきまで雪ん子が居た場所を、返しが深く突き刺さっていた。


「燃やせ! 燃やせ! 燃やせ----!!」


 ぼぅっ、と、もはや湯気どころか火事になっているのもお構いなしに、ボス赤鬼の攻撃は続く。

 雪ん子が転がり、その後をボス赤鬼の突き。

 まるで餅つきのようなテンポのいいリズムで、雪ん子が逃げて、ボス赤鬼が突くという攻防が続いていく。


「(まずいな、雪ん子が攻めきれん)」


 【剣士】である雪ん子は、やはり立ってこそ、その技の威力が発揮される。

 しかし今、雪ん子は転ばされた状態であり、ボス赤鬼は相手を立たせる前に勝負をつけるつもりだ。


 ----短期決戦。

 最初に転ばされた時点で、こちらの負けが決定されたようなモノだ。


 あんな、なんちゃって二刀流なんかに。

 俺の召喚獣が、雪ん子が負けるのか??


「うぉぉぉぉぉ!! 燃える! 燃える! 燃えるぅぅぅぅ!!」


 ----いや、そんな事はない!!

 俺の雪ん子が、あんな、なんちゃって二刀流な《お好み焼き》赤鬼に負ける訳がないっ!!


「----雪ん子っ!!」


 俺はそう言って、援護のために召喚獣を召喚する。

 そして、俺の命令で召喚された召喚獣は、そのまま雪ん子を助けるために、ふわふわと飛んで向かって行く。


「《ぴぴぴっ!!》」

「させぬぅぅぅぅぅ!!」


 雪ん子は転がりながら、召喚された召喚獣の方に。

 後を追う形で、ボス赤鬼も向かう。


「合流は、させぬぅぅぅぅぅ!!」


 そう言って、ボス赤鬼は持っている2つの返しのうちの1つを大きく振りかぶって----


「《ぴぴっ!!》」


 その瞬間である。

 待っていましたとばかりに、ボス赤鬼が投げる寸前に、雪ん子は、自分の持っていた剣を、召喚獣へ投げた・・・


「なっ----!?」


 訳が分からんと言った様子のボス赤鬼だったが、既にフォームは完成してしまっていた。

 投げようとしていた返しは、そのまま剣の後を追うように、投げられていた。


 そして、ふわふわと救援に向かっていた召喚獣を、雪ん子の剣が貫き、そしてその後にボス赤鬼の真っ赤になった返しが続く。



 ----ぶぉぉぉんっ!!



 返しがぶつかった瞬間、召喚獣が大きく膨らみ、そのまま爆発する。

 爆発した影響で、辺りを白い煙が包み込んでいた。


「ぐぉぉぉぉ!!」

「やったぜ!! 今、お前が倒した、俺が救援に向かわせたと勘違いした召喚獣は、《フライハリセンボン》! ハリセンボンのような見た目でぷかぷか浮かぶために、大量の水蒸気を体内に持つ召喚獣だぜ!!」


 攻撃力と速度はないが、この作戦には関係ない。

 フライハリセンボンの身体には、ぷかぷか浮かぶための大量の水蒸気が充満している。

 そこに冷気の申し子たる雪ん子の剣が貫かれることにより、大量の水蒸気が水へと変わり、そのまま攻撃するたびに熱気を放っていたボス赤鬼の返しが急速に温めた。


 後は急激な温度変化に耐え切れなくなったフライハリセンボンはそのまま、破裂死。

 辺りを、フライハリセンボンの身体の中で出来た白い水蒸気が一瞬にして包み込む。


 その一瞬が、雪ん子には欲しかった。


「《ぴぴっ!!》」

「ウグワーッ!!」


 吹っ飛んだ際に飛ばされた剣を回収していた雪ん子は、突然出てきた水蒸気に視界を封じられたボス赤鬼の身体を斬る。

 アイツの返しは、どんな姿勢であろうとも相手を転ばせるが、それさえ分かっているのならば、後はそこさえ注意すれば、うちの雪ん子なら対処できる。


 そして、雪ん子に斬られ、そのままボス赤鬼は倒され、消えていくのであった----。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

雪ん子 VS 《お好み焼き》赤鬼 ~「俺の召喚獣だけレベルアップする」外伝~ 帝国城摂政 @Teikoku_Jou

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ