ずるい男
かなたろー
二刀流のずるい男。
二刀流の男は、ずるい男だ。
宮本武蔵は、とてもずるい男だ。
剣豪と謳われているが、その実でんで卑怯者だ。
なぜなら、若いイケメンとの直接対決ではわざと遅刻していらだっているところをだまし討ちしたし(あとそのときは二刀流じゃない)、達人の爺さんにはいきなり不意打ちで襲い掛かった。
二刀流はとてもずるい剣術だ。
なにせ刀を二本持っている。敵の刃を太刀で受けて、隙だらけになった体に小太刀をつきさせばよいのだ。
まったくもって簡単だ。
そのまったくもって簡単な剣術で、生涯無敗を自称した男は、その剣術の極意をしたため、洞窟の中で生涯を閉じた。
その男の剣術、いや剣術という殺し合いは今のご時世には合わないので剣道となったが、今はタブー視されている。ルール違反だ。
なぜ強いほうが廃れたのかはわからないが、世の中はたいていそういったものだ。
常識では考えられない行動をする人間の行いは『例外』と扱われ淘汰される。
それが世の中の常なのだ。
さて、ここで考えなければならない。
この21世紀に現れた例外中の例外の男だ。
大谷翔平という例外だ。
この、バッターとしてすごくて、ピッチャーとしてもとんでもなくて(実は走塁もとんでもない)二刀流の男は、ちょっとすごすぎる。
さて、この男はずるい男なのだろうか。
とりあえず、ずるいくらいの恵まれた体躯はしているが、はたして、それはずるいのだろうか。
常識では考えられないことを成し遂げて英雄となった男は、果たしてずるい男なのだろうか。
高校時代、一流の野球選手になるためには「運」が欠かせないと考え、以降、礼儀正しいあいさつを欠かさず、グラウンドに落ちているゴミが落ちていれば積極的にひろうこの男は、ずるい男なのだろうか。
剣道の二刀流はずるくて、野球の二刀流はずるくない。
なんとなく二刀流という言葉は、大谷翔平という男の出現で、その意味が根本的に変わってしまったような気がする。
だって大谷翔平が現れるまでは、『二足のわらじ』って単語をつかっていた気がするんだもの。
『例外』は言葉の意味すら変える。言葉を作り変える。
『ガッツポーズ』今はその言葉を聞くと、だれだってあのポーズを思い浮かべてしまう。でもこの言葉、実はあのガッツ石松さんから来たことはだんだんと忘れ始められている。
二刀流という言葉にも、そんな日がくるのだろうか。
ずるい男 かなたろー @kanataro_
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
同じコレクションの次の小説
関連小説
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます