俺の二刀流は直列

喰寝丸太

第1話

 二刀流は素晴らしいと思う。

 攻撃に徹すれば、手数が二倍。

 防御と攻撃も同時にこなせる。

 もちろん防御だけに徹する事も出来る。


 しかしだ、使う者は少ない。

 片手で武器を使うのは相当な筋力が要求されるからだ。

 それに人間は同時に右と左の手で違う何かをする事は難しい。


 こう考察している俺は一年前に転移して異世界にきた者だ。

 当然、二刀流をこなす技量はない。

 普通のサラリーマンだったからな。


「ユキト、考えている暇があったら手を動かせ。死ぬぞ」


 俺達はゴブリンのスタンピードに巻き込まれている真っ最中で、数に対抗するには数が必要だ。

 俺達6人だけじゃ、どうにもならない。

 せめて二刀流が出来たらなと思った俺を責める奴などいないだろう。


 かぁ、やってらんねぇ。

 仲間を見捨てて逃げるか。

 どこへだ。

 村は包囲されている。

 塀に取りつくゴブリンを始末している訳だが、村の外に一人で出たら貪り食われて終わりだ。

 何かチートは無いのかよ。


 素早く攻撃できる剣と呪いが掛かっている攻撃力が高い剣を持ち替えるとバグ技が出来る奴があったな。

 二刀流でこれを再現できないか。


 丁度おあつらえ向きに呪いの剣がある。

 ゴブリンが落としたのだ。


 一度振るうと、敵味方関係なく動く物がいる限り、攻撃が止まらない剣だ。

 もう一つは攻撃を一切受け付けなくなる代わりに出血が止まらない剣だ。

 無敵アイテムと死の宣告が同時にあるような剣だ。


 当然、一度柄を握ったら離す事が出来ない。


 これの二刀流で行くとしたら、敵味方関係なく攻撃して、無敵で出血するとなる。

 敵は殺し尽くせるが全員が死ぬような気がする。


 ふっ、二刀流だと考えるからいけないんだ。

 攻撃が止まらない剣に、死の宣告付き無敵の剣を縛りつけりゃいい。

 並列にするのが駄目なら直列だ。

 俺はその考えを実行した。

 攻撃が止まらない剣は、死の宣告を受けて、赤さびを吹き出し大人しくなった。


 俺は無敵になって、物凄い勢いでゴブリンを殺し始める。

 その動きは、ゴブリンを殺し尽くすまで、止まらなかった。


 そして、盛大に赤さびを噴き出して、攻撃が止まらない剣は自壊した。


「ユキト、お前。なんて事を。呪いの二刀流だなんて」

「正直言って、ああでもしなきゃ助からなかった」


 とにかく生き残れて良かったよ。

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