第122話
「…っぶねぇ!!」
間一髪で俺たちは爆風に巻き込まれずにすんだ。
「ごほっ、ごほっ…」
「怪我はないか?アンジェラ」
「あ、あぁ…大丈夫だ…」
咳き込むアンジェラの無事を確認する。
爆発で宿の壁が破壊され、部屋の内部が外に露出してしまった。
「い、今のは…?」
アンジェラが俺に尋ねる。
「証拠隠滅のための仕掛けだったんだろうな…あぁ、くそ…流石に回復魔法は間に合わないよな…」
俺は足元に転がったドグマの焼死体をひっくり返す。
爆発でドグマは完全に死んでいて治療は不可能だった。
「ど、どうする…?アリウス…」
「とにかく今はここを離れよう」
「そ、そうだな…」
誰かにこの場にいることを見られるのが1番まずい。
俺とアンジェラは、壊れた壁から部屋の外に飛び降り、急いでその場から離れるのだった。
「「「うぉおおおおおお!!!」」」
「「「いけぇえええええ!!!」」」
それから二日後。
俺はドグマの言っていた安全地帯の地下闘技場へとやってきていた。
ここではテイムされたモンスター同士を戦わせる趣味の悪いショーが行われている。
スタジアムのような構造の地下闘技場には、一千人を超える人間が集まっていた。
中心に据えられた檻の中で、二匹のモンスターが死闘を演じている。
おそらく金をかけているのだろう人々は、モンスターたちが血を流しながら戦う様を、罵声を飛ばしながら観戦していた。
「…やれやれ」
そんな地下闘技場の一角に、俺は1人の客としてきていた。
死んだドグマ曰く、予定通りなら今日ここで、ドグマは自分をここに呼び寄せたある連中に情報を渡すつもりだったらしい。
ドグマが情報と共に自爆した以上、少なくとも情報を渡すことは阻止できたので、俺は地上に戻ってもいいと思ったのだが…
どうしてもこのまま終われずに、俺は今日ここへと足を運んでいた。
…こんなことをしても意味がないのはわかっている。
何せ俺は敵の情報を何も知らないわけだからな。
今日ここにきているのであろう、ドグマから情報を買おうとした連中の見分けはつかない。
「はぁ…」
暑苦しい闘技場の空気に俺はため息を漏らす。
檻の中で戦っているモンスターの一匹が四足歩行の獣のモンスターで、どこかクロスケに似ていることもあってか気分が悪い。
自分に服従を誓い、懐いたモンスターを戦わせるなんて本当に趣味の悪いショーだ。
俺は魔法を打ち込んで檻をぶっ壊したい衝動をひたすら堪えていた。
「「「「うぉおおおおお!!!」」」」
「「「「やれぇええええ!!!」」」」
「「「「殺せぇええええ!!!」」」」
獣のモンスターが、もう一匹のトカゲ型のモンスターの腹に噛み付いた。
鮮血が飛び散り、客たちが興奮して立ち上がる。
「あぁ…くそ…」
悪態をついて、俺は趣味の悪いショーから目を逸らした。
そして地下闘技場に訪れている客たちを、ぐるりと眺めて観察する。
「…それっぽいやつはいないか」
何も手がかりがない状態だが、もしかしたらドグマから情報を買おうとした連中を見つけられるかもしれない。
例えば、明らかに護衛と解る人間で周りを固めている怪しげな男とか…。
いや、流石にそこまでわかりやすいやつはいないか。
「だめだ…全く情報がない状態での人探しは流石に無理がある」
一通り客たちを観察し終えたのだが、あからさまに怪しい人物などは見つけられなかった。
俺は無謀な挑戦を諦めて、客たちの観察をやめた。
その時だった。
「動くな」
「ん…?」
俺の腰の辺りに鋭い何かが当てられた。
視線を落とすと、それがナイフであることがわかった。
俺の背後に立った男が、周りの客に気づかれないように俺にナイフを向けている。
「お前がドグマを殺したのか?」
「…なんだお前」
「質問しているのはこっちだ。お前がドグマを殺したのか?答えろ」
「…」
まさかこいつがドグマから情報を買おうとした一味の1人なのだろうか。
こいつ1人だけか?
周囲に仲間が潜んでいないか?
どうやって俺の情報を得たんだ…?
俺は男が少しでも動いたなら反撃できる体制を整えながら、冷静に分析を進めるのだった。
オールスペルキャスター、全属性の魔法を使える男〜異世界転生した俺は、圧倒的な魔法の才能で辺境の貧乏貴族から成り上がる〜 taki @taki210
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