第245話 新たな日々
新学期となった4月。ついに俺も最上級生である3年生になった。
みんなが最上級生になり浮かれる最中、俺は相変わらず窓際の席に座り外の景色を見ている。
「桜が綺麗だな」
窓の外には綺麗な桜が咲いており、昼休みになるとこうして外をのんびり見るのが最近の俺のマイブームである。
頬杖をつきながらぼーっと外を見ていると誰かが俺の前の席に座った。
「俊介君。一緒にお弁当を食べよう!」
「そうだな。結衣」
可愛らしいクマの弁当入れを俺の机の上に置いた女性は茅野結衣。俺の大切な彼女である。
その彼女がわざわざ俺と昼食を食べに俺の席まで来てくれた。こんな嬉しい事なんてない。
「この前クラス替え発表があったけど、一緒のクラスになれてよかったね」
「本当だな。結衣と一緒のクラスにしてくれた神様に感謝しないと」
先日3年生になったと同時にクラス替え発表があり、俺と結衣は運よく同じクラスになれた。
クラス替え発表の時は2人でドキドキしながら張り紙を見ていたけど、本当に彼女と一緒のクラスになれてよかった
「ちょっとちょっと、2人でイチャイチャしているのもいいけど私も混ぜてよ」
「いっ、委員長!?」
「今は委員長じゃないわよ。私には
「わるいわるい。つい去年の癖でそう呼んじゃうんだよ」
「それならこれからは直しましょう」
「出来るだけ善処する」
「善処するだけじゃダメ。確実に直してもらわないと」
「直すって言っても、また言い間違えたらどうするつもりなんだ?」
「そうね‥‥‥1回委員長と呼ぶたびに、私に対して罰金を払うのはどう?」
「そんな罰ゲームは勘弁してくれ!? 財布にいくらお金があっても足りなくなる」
委員長こと、山岡美玖。去年に引き続き、彼女も俺と同じクラスになった。
いつの間にか結衣と仲良くなっていたようで、同じクラスになった時は2人で喜んでいた。
そういう縁もあり、最近では彼女とも一緒に昼食を取っている。
「それもこれも全部山岡の名前を覚えない俊介が悪いんだよ」
「そうですぞ、風見氏。結衣様にかまけていて、他の人がおざなりになっているんじゃないですか?」
「そういえばお前達も同じクラスだったな」
慶治と織部。この学校きっての変態と狂信者もこの春晴れて俺と同じクラスになった。
こうしてクラスの顔ぶれを見ると去年より面子が濃い。正直この1年やっていけるか不安である。
「そういえば風見氏、今日の放課後は親衛隊のミーティングがあるので参加してほしいでござる」
「何度も言ってることだけど、何で俺がお前達の集まりに参加しないといけないんだよ」
「それは風見氏が我等茅野結衣親衛隊の会長に就任したからでござるよ。拙者の上に立つものとして、部下にはちゃんと示しをつけてほしいでござる」
他に変わったことと言えば、何故か俺が茅野結衣親衛隊の会長、1番くらいの高い位置に置かれてしまった。
理由は俺が結衣と付き合ったかららしい。単純明快だが、これほど面倒な理由で会長職についてしまった俺の気持ちも考えてほしい。
「悪いが今日は部活があるからいけないぞ」
「でも今日は確か各自のペースで1時間のジョギングをする予定だったような気がするでござる。だから時間を作ることは可能なんじゃないでござるか?」
「何でうちの部活の練習メニューまで知ってるんだよ!?」
「我々には風見氏の予定を把握する為のオブサーバーが大勢いるでござる」
「大勢って言っても、慶治しかいないだろう」
「のんのんのん。黒田氏だけでなく、この度陸上部のマネージャーに就任した結衣様にも聞いているので間違いはないでござる」
「結衣にも聞いたのかよ!?」
「そうでござるよ。我々が頼んだら、快く答えてくれたでござる」
どうやら俺の情報を漏洩した犯人は他にもいるらしい。
たぶん結衣の事だから質問されたことに答えただけだと思うけど、出来れば織部には色々と内緒にしてほしかった。
「風見」
「何だよ、山岡。そんな睨みつけるような表情をして」
「山岡さん!? 私は全然気にしてないから、大丈夫だよ!?」
「そういうわけにはいかないでしょう。あんた最近結衣ちゃんとデートしてないらしいけど、どういう事なの?」
「しょうがないだろう。陸上部のインターハイ予選が近いから、あんまり遠出が出来ないんだよ」
「その代わり休みの日はちゃんとショッピングモールとかにお出かけしてるから大丈夫だよ」
「ちょっ、結衣!? 余計なことは言わなくていいよ!?」
「なんだ。なんだかんだ言って、上手くやってるんじゃない」
俺と結衣の話を聞いた山岡は俺達の事を見てニヤニヤと笑っている。
こうなると思ったから今まで余計な事を話さなかったんだ。
結衣も自分で言って恥ずかしくなったのか、顔を赤くして俯いてしまっている。
「インターハイといえば俊介、予選会に水島達は出てくるのか?」
「あぁ。今度行われる予選に名前が載っていたし、間違いなく出場するだろう」
「私は茉莉ちゃんと一緒に俊介君を応援するのが楽しみだよ」
「茉莉が応援するのは司だろう? 俺の事なんて応援しないんじゃないか?」
「確かにそうだけど。こうして4人揃って試合を観戦するのが久しぶりだから、それが嬉しいんだ」
結衣の気持ちはもちろん俺もわかる。
中学時代特に茉莉が進学してきてからは4人でいることが多かったので、敵同士でもそれが実現するのが嬉しいのだろう。
「それにこの前茉莉ちゃんから連絡があって、大会が終わったら4人で遊びに行きたいって言ってたよ」
「ダブルデートか。それならまた予定を立てないとな」
「うん!」
そういえばこの前俺にも連絡がきて、ずっと茉莉が4人でどこかに出かけたいって話してたな。
この調子ならたぶんすぐに予定が決まるだろう。大会が終わったらちゃんと予定を考えないと。茉莉から最速の連絡が来そうだ。
『おい!! 3組が騒がしいぞ!!』
『またあいつ等じゃない? うるさいから他の場所で食べよう』
「何か他のクラスが騒がしいな」
「たぶん小谷松氏がまた何かやらかしたのではないですか?」
「なるほど。また葉月が何かしたのか」
「はい! この様子だと3組には久遠氏や星乃氏もいると思われます」
「なんだ。それならいつもの事じゃないか」
あれから葉月はどうしてるのかというと、3年生に進級した際に行われるクラス替えで俺とは別のクラスになった。
クラス替えをした当初は悲しんでいたけど、最近新しい友達も出来たようで同じクラスメイトになった久遠と騒がしい日常を送っているらしい。
「葉月といえば、紺野先輩は元気かな?」
「うん! 今は都内の大学に通ってるらしいよ」
「結衣は詳しいな」
「だって紺野先輩とは連絡を取ってるから。今度大学のオープンキャンパスに来ないかって誘われちゃった」
「そのオープンキャンパスに結衣は行くの?」
「もちろん! 俊介君と一緒に来てねって言われちゃった」
「俺も強制的に行かないといけないのか」
結衣だけでなく俺も誘うなんてあの人らしい。
おおかた結衣だけ連れて行くと気まずいから俺も誘ったのだろう。あの人なりに気を使ってくれてるんだな
「でも、行けば絶対楽しいと思うよ」
「そうだな。結衣と一緒ならどこに行っても楽しいはずだ」
終わりよければ全て良し。俺の壮大な勘違いのせいで待たせてしまったが、無事に結衣と付き合うことが出来てよかった。
昔から俺は自分に自信なかった。司や葉月といったイケメン達に比べ、俺は彼等よりも劣っているとずっと思っていた。
ただ実際はそんな事等関係なかったのだ。彼等より劣っているなら、その分努力すればいい。
努力を見てくれている人は絶対にいる。それこそ、今俺の前でお弁当を食べようとしている結衣のように。
「俊介君!? 早くご飯食べないともうすぐ昼休みが終わっちゃうよ!?」
「そうだな。早く食べよう」
こうしてまた周りの人達と騒がしい日々を過ごしながら季節が過ぎていく。結衣とこのような関係にたどり着くまで色々あったけど、今はものすごく幸せである。
「ちょっと風見、私も入れなさいよ!!」
「俺も一緒に食べるぞ」
「拙者も! みんなで一緒に食べるでござる」
「わかったから!? そんな俺に迫ってくるな!?」
新たな友人達と一緒に過ごす時間。願わくばこの幸せがずっと続けばいいと思う。
結衣も含めたこの大切な友達を生涯大事にしていこうと改めて俺は心に誓った。
「俊介君」
「何?」
「大好きだよ」
学園のハーレム王の友人である俺、マドンナから相談を受ける~~えっ!? お前が好きなのってあいつじゃないの!? ~~Fin
-----------------------------------------------------------------------------------------------
いつも拙作をご覧いただきありがとうございます。これにて本編は完結となります。
もしかすると番外編として俊介と結衣のその後を書くかもしれませんが、本編はこれで完結です。
ここまで長い期間、私の作品を読んでいただきありがとうございます。
去年の3月投稿を始めて約1年と4ヶ月。この作品を最後まで書ききることが出来たのは応援してくれた皆様のおかげです。感謝しかありません。
作品の内容については活動報告に載せますので、興味のある方はそちらをご覧ください。
次回作についてですが、現在新たな作品を投稿する為の準備をしています。
どの作品も読者が続きを読みたくなるような面白い作品を目指して準備をしていますので、次の作品に興味がある方は私の事をフォローして楽しみに待ってもらえれば幸いです。
最後になりますが、この作品を最後まで読んでいただきありがとうございます。
それではまた次の作品でお会い出来れば。一ノ瀬でした。
【完結】学園のハーレム王の友人である俺、マドンナから相談を受ける~~えっ!? お前が好きなのってあいつじゃないの!? 一ノ瀬和人 @Rei18
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます