第6話 共に生きる未来
健一君か死を選んで一年が経つ。その日は春の暖かき日和であった。カカシの神様が現れると健一君は光る蝶に囲まれて息絶えた。
わたしはというと簡単にドナーが見つかり生きる事ができた。今日は健一君の一周忌であった。
「大切な人が死ぬのは嫌だよ」
お墓の前でそんな事を呟くのであった。
そして、感情が高鳴り、涙ながらに「お願い、また、一年と3ヶ月前に戻して!」と、空に向けて大声を出す。
すると、カカシの神様が現れる。
「わたしはただのカカシだ。田んぼに立ち、そこから人々の生活を見ていただけだ」
「ダメなの……?」
カカシの神様は黙り込む。
「想いは等価交換を凌駕することがある。その想いは本物か?」
わたしは迷い無く返事を返す。
「そうか……」
カカシの神様はポツリと呟くと、ゆらゆらと消えていく。やはり、ダメなのね。
健一君が居なくなって、世界の終わりを感じでいたが今日の辛さは一段と高い。
うん?
スポットライトの様に光が集まり空の上から健一君が降りてくる。想いが等価交換を凌駕したのだ。
***
わたしと健一君は手を繋いで歩いていた。ふと、田んぼに目をやるとカカシが立っている。わたしは気にすることなく通り過ぎる。カカシの神様なのか、それともただのカカシなのは不明である。
八百万の神々の中でカカシの神様である理由が少し判った気がする。カカシは誰よりも身近だ。わたしは結局、養護の先生になる事にした。これから、健一君と図書館で勉強である。
「ねえ、キスして」
「ここは地元だよ、目立ちすぎるよ」
「ケチ」
交わる事のない、線が重なったのだ。きっと奇跡の力が働いたのだ。わたしはカカシの神様に感謝して空を眺める。
「どうしたの?」
健一君の問いになんでもないと返す。
そう、なんでもないのであった。
死んで一度きりのタイムスリップ 霜花 桔梗 @myosotis2
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