多分誰もが通りすぎたであろう、「初めて」のたどたどしさ。
そのたどたどさをはねのけて、未知を求める本能。
とは言え本能の仄かな野蛮さを、「ごめんね」のベールで包もうとする、けなげな虚勢。
思い出したいような、思い出したくないような、ふたりで迎えた初めての空間独特の、歯痒さと欲望と、どこかかわいくも愛しい不器用さが、恐る恐る交錯する、秘密の箱を覗かせてくれるものがたり。
遠慮がちなエロスはきっと、遠慮がちだからこそ、読者たちのそんな「初めて」記憶を、あの瞬間の「甘酸っぱい」香りで包んでくれるはず。