笑う神
ツヨシ
第1話
僕の家の近所に、とても小さな神社がある。
とは言ってもとにかく古く朽ちていて、本堂は今にも崩れ落ちそうなほどだ。
当然そんなところを、訪れる人など誰一人いない。
そしてある日のことだ。
僕がその神社の前を通った時、神社の中から笑い声がした。
若い女の声で。
ケラケラとかん高く楽しそうに。
――えっ?
僕は神社の前で立ち止まった。
笑い声は相変わらず聞こえてくる。
僕は気になり、声に誘われるように神社に向かった。
そして鳥居を通ろうとしたときだ。
「行くな!」
それは去年死んだ祖父の声だった。
耳元ではっきりと聞こえた。
驚いたが、僕は祖父の声に素直に従い、神社に背を向けて歩き出した。
すると今度は、若い女の声が神社から聞こえてきた。
「逃げられたか」
と。
終
笑う神 ツヨシ @kunkunkonkon
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