二人はフードコートで
ナズナと僕。二人の食事が揃い、昼食を開始する。
僕はラーメン。ナズナはパスタを注文した。
お互いに好きなものが頼めるというのはフードコートの強みだ。
僕は早速と言った感じで、箸を取り一口。
そしてそれに倣い、ナズナも食事を始める。
先に注文し、早く食事が着いたナズナだったのだが、わざわざ僕のものが来るのを待っていてくれた。 そういうところに彼女の性格が表れてると思う。
「んー。美味しいね!」
ナズナはフォークとスプーンを上手に使いながら一口、また一口と食して行く。
ちなみに、パスタを頂くときにスプーンを使うのは本場ではマナーがよろしくないらしいが、今はそんなことどうでも良い。
テーブルマナーはケースバイケース。
「ナズナはパスタが好きなの?」
僕はナズナのことを知る機会だと言わんばかりに質問を投げかける。
ナズナと出会ってから結構経ったが、僕はほとんど彼女のことを知らない。
こういう機会でもなければ、知ることができないのだ。
「そうだね〜。パスタは結構好きだよ。って言うか、好み以前にこうして外でご飯を食べることが少ないから、余計に美味しく感じてるかも」
とナズナはパスタを口に頬張りながら言う。
不覚にも可愛い。なんて思ってしまったが、それを細心の注意を払い、表に出すことなく、会話を続ける。
「あんまり外食はしないの?」
「うん。あんまり外食はしないかな。それに――ね」
ナズナは言葉を繋ぎながら、僕の耳元まで顔を寄せる。
吐息が間近で聞こえ、それに伴い僕の心臓も一瞬で運動を始めた。
シャンプーの匂い、ナズナの吐息、そして温度。その全てが僕の平常心を崩していく。
「キミがいるからかな? 特別、美味しく思えるのは……」
と耳元で囁くナズナ。
完全に頭の中が真っ白になる僕。
それもそうだろう。だって僕は女性との関わりなんて無かった、ただの男子高校生なのだから。
「え、えーと。え!?」
自分でもあり得ないくらい視線があっちこっちへ移動する。
ナズナの方向以外は全て視界に収めたのではないかというくらいにブンブンと顔を動かした後、僕はふぅと体に酸素を入れることに集中した。
そして心が落ち着いたと自分で判断した後に、ゆっくりとナズナの方を見る。
そこにあったナズナの顔はこれまた想像通りだった。
やっぱり……。
なんで僕は学習しないんだろう……。
「やっぱりキミは可愛いね」
そう。そこにはいつも通りのナズナの笑顔。
僕をおちょくる時に出るニヤニヤと笑みを浮かべていた。
またやってしまった……。
簡単にナズナに餌をあげてしまった。なんて後悔の念がこみ上げてくると同時に自分の単純さに落胆する。
ナズナに少しでも隙を与えたらこうなることは分かっていたのに……。
「さて、それじゃ、キミの考えていることの答え合わせをしようか」
ナズナはテーブルに肘を置き、手を組むようにすると顎を手の甲に乗せる。
その姿は差し詰め凄腕の取調官だ。
僕はゆっくり天を仰ぐと、心の中で呟くのだった。
黙秘権を使用する権利はあるのだろうか。と。
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