第7話 彼女と旅館の部屋へ

夕食のシメは、なめこ汁とご飯、漬物、お茶です。デザートは、別府石垣タルトと紅茶。 美味しかったです。


すっかりアルコールがまわってきたので、彼女と手を繋いでふらふらしながら部屋に戻ります。


まだ8時過ぎなので、冷蔵庫からビールを出してきて飲みながら、のんびりとテレビを観たり、足裏の肉球をプニプニしながら過ごすことにしました。


10時半近くになったので、彼女に「そろそろ寝ようか?」と声をかけました。 ずっと楽しみにしていた、ベッドインタイムです。

音楽をかけて、灯りを暗くしてベットに彼女と潜り込みます。


その時でした。 枕元に置いていた携帯電話が突然鳴りました。

画面をみると嫁さんからです。

とうとう嫁さんにバレてしまったのでしょうか。恐る恐る、電話に出てみます。 「なにやってんの! 今、旅館のロビーにいるんで、すぐに部屋へ行くから!」と戦慄するほどの激しい声です。


横にいる彼女にそのことを伝えると、なんと言うことでしょう。

「私なら大丈夫よ。 奥さんがいるって聞いてなかったことにするから。」

と言って、冷蔵庫からビールを出して、いかそうめんをくっちゃくっちゃ噛みながら飲み始めました。 

この緊急事態にも関わらず、まるでこの状況を楽しんでいるかのように、うすら笑いすら浮かべているのです。

きっと、こんなかち合い経験が何度もあるのでしょう。

「ゲフー。」とビールの炭酸を、しまね海洋館アクアスにいるシロイルカみたいに吐き出している、クソ下品女を横目に、なんとか誤魔化す方法がないか、頭をフル回転させます。

窓脇にある排水管を伝って降りて逃げられないか、はたまた、天井にある点検口に入れないだろうか。

それとも、「旅館の部屋は別々にとってあるので、ただの友達です。」と卓球の福原さんみたいに悪びれずに言おうか。


「ドンドンドン!早く開けなさいよ!」

大変です。 部屋の前まで来てしまっています。

今日行った海地獄に、カゴごと突き落とされた、玉子にでもなった気分です。

外から、「あんた、早く合鍵を出しんさい!殺しあげちゃる。」と怒声が響いています。 吠えているといった方がいいのでしょうか。

その時、「ガチャ!」と地獄の扉が開きました。

「ううっ。ウワアー!」もんどりうって、尻もちをつきました。腰が抜けてしまったのに違いありません。








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別府・湯布院温泉不倫旅行 温泉放浪記 @ICB47303

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