第35話 翔の予知

 離脱。


 翔とあかりがいる学校から1キロ。


 リズムは走って離れたはずだが、息は乱れていない。


「将門と道真……」


「ん?」


「あれが傾国の狐と王様候補で正解なのよね?」


「そうだよ! ヤバそうだよね。君は、どう感じた? あの王様候補と手合わせして」と道真。


 将門も「……」と無言だが、道真に同意するように頷いていた。


「彼……正道翔の印象? そうね……」


 彼女は少し考えた。 将門と道真は興味深そうに返事を待つも――――


「かける君、カッコ良かった」


 普段、無表情に見える彼女の顔に赤みがさす。 僅かであるが照れ臭そうに微笑んでいるではないか!

 

 そんな様子に、


「なっ!」と将門。


「ぬっ?」と道真。


 だが、皆月リズムは2人の反応に関せずに言葉を続ける。


「武道、武術とか疑っていた。でも、彼は違う。私と戦えれていた。好き。わたしの想像を超えた動きを見せてくれた。憧れる。もう一度……いえ、何度でも戦いたい。大好き」


「……」と将門、道真は絶句した後、顔を見合わせた。


「将門と道真、確認!」


「な、なんだ?」


「あの鳥羽あかりって子が狐なのね? あの子が王を決める存在……だったら、わたしが彼を、かけるくんを彼女から奪えば問題ない。日本は無事、全ては平和に解決する」


 この時、将門と道真が思った事は奇しくも一致した。


 強い後悔。


 見余っていたのだ。皆月リズムという人間の精神。


 格闘技で強くなる事への執着。それに反して他の物事への無関心さ。


 彼女は無関心ではなく、1つの事に驚異的に執着をするのだ。


「撤退を――――」と最後まで言えなかったのは、将門か? 道真か?


 日本三大悪霊と言われる両者に対して、皆月リズムは――――


「逃がさないよ」と強い言葉を発する。


 強い意思を言葉にするそれは呪いに転換される。 呪いは将門と道真を縛った。


「かけるくんを落とすためには……うん、学校に行こう。わたし、高校に行ってないから、転向って手は使えない。それじゃ……入学ね。今から受験に向けて勉強しなくちゃ――――


 待っていてくださいね、かける先輩」


 そして、その言葉も呪いとなる。 


 離れた1キロ先の高校。 そこにいる正道翔は、強烈な寒気に襲われる。


 ――――嫌な予感。 武道武術によって鍛えられた危機管理能力。


 予知能力に匹敵する翔の直感。 それが近い将来、彼にとって途轍もないトラブルに見舞われると教えてくる。


 ――――だが、


 それは、またいずれ。


 ここではない。どこかで語る機会があればの話。


  

 完結

  


 

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金髪紅眼の後輩が彼女になりました!(ただし、彼女の正体は地上最強の人妖とする) チョーカー @0213oh

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