合わせ鏡というものは学校の怪談のモチーフの定番である。語り手であるところの彼女は、二人の鏡と鏡、過去と現在に存在する「美」の間に立ってしまったことで呪いを受けてしまった。
クラスメートに過去を焦がされた彼女は、逃げた先の現在すらも少女に焼き尽くされた。合わせ鏡に挟まれて。目を逸らすことも瞑ることもできない。
彼女達はただ美しく、倫理も観念も超越したところに位置するものを見た者はすべからく目を焼かれる。そして、もう一度その■を見たいが為に奉仕する存在に成り果てる。
彼女が今後健常な社会生活を送れなくなろうが、少女が遠からず母の人生をなぞろうが、そこに害意はなく、そしてきっとそれらは登場人物の誰にとってもどうでもいいことなのだろう。
死に触れる百合の儚さでありながら、太陽の花のような灼熱の激しさがある。美とは、そのようなものなのだ。