第十一話
ミイラが大量死したという事実を受けて、連邦政府はてんてこ舞いの様相であった。彼らはたちどころに懐中時計を生み出し、蝶の鱗粉で結界を作り上げ、レーザーで借り物競走を行ったのである。
バイオリニストは公園で立ちションし、秋田犬はドーベルマンに咥えられて北海道に置き去りにされるという悲しき事態に陥った。
それを聞いた大統領は裸で宮殿まで歩いて行き、マイクを片手にチューリップの歌を歌って、人々を大いに感動させたものだ。
だが、誠に遺憾ながら、マスカルポーネはすき焼きであるという事実は変わらなかった。消しゴムで消せるなら消してやりたいと、知事は逆立ちしながら宇宙人に意見を表明していた。
ゴムゴムの実を食べたピスタチオは、まさしく放心状態であった。枯れ葉が舞い散る中をところてんが本を読むというまったく説明の付かない現象を、正しく認識できなかったようだ。これは本当に不可思議なことだったのだから、仕方ないと言えば、まぁそうだろう。
ところが少女は下痢になる。鉄アレイを食べ過ぎたのだ。せめてドラゴンフルーツくらいにしておけばよかったのに、彼女は間違いを犯したのだ。
カルタ大会に出場するために、キックボクシングはキックボードを使ってサーフボードを蹴り飛ばしながら、地下に潜った。これは世間言うところの、潜入捜査という奴だった。
カメラ役は不在であり、パワーリフティング選手が落としたバーベルが転がっていたが、それはやがて自己増殖を繰り返してプラスチック爆弾になったのである。
白雪姫は真夏の日差しにやられそうだったが、そこにトランプの戦士たちがやって来てチェスをし始めたから、これでは男を磨くことができないと醜いアヒルのガキ共は、湖に身を投げた。シンデレラは熱燗を飲みながらそれを眺めていたのだから、これには映画を見ていた人たちも怒り狂っていた。だが終盤にはアヒルたちはやがて精霊になり、オノを落とした男と結婚してしまったのだから、人生とは喜びに満ちあふれたものだとわからせてくれる。
まとめると、パン粉をまぶしたウェディングドレスはガスバーナーのようだった、ということだ。
私はついに打ち勝ったのだ。もう一人の自分に。
私は歓喜の涙を流した。もう苦しむことはないのだな。役目を終えたとばかりに私から光が失われていった。わかってたことだが、なんだか寂しい気もするぜ。
ふ、
ふふふ、
私は一皮剥けたような気がするよ。べつに日焼けじゃないぜ。成長したって意味さ。
私はこれで今日はぐっすり眠れそうな気がした。今は何時だろうと壁に掛かった時計を確認する。なるほど、私はずいぶん長いこと戦っていたらしいな。もう朝の九時を回っていた。
……って、学校じゃねぇか。
追記
よし、妄想し損じはないな。学校への準備も整ったことだ。私はかなり眠かったが、たとえ遅刻してでも学校には行きたかった。それは教師たちが一生懸命してくれる授業を聞かなければならないからだ。私は私で学力の向上に努めなくちゃならないからな。
まったく学生という身分はたいへんだぜ。……まぁ、そこが楽しいところでもあるんだけどな。
私が教室に入ったとき、休み時間だった。私は堂々と席について、教科書類を取り出した。さぁって、来週のサザエさんは、じゃなかった、次の授業はなんだぁ? ん、なんだ数学か。寝起きに数学は勉強法としていいらしいが、あいにく今の私は寝起きじゃなくて徹夜明けなのだ。はぁ、眠いけど、頑張って頭を働かそう。
そうだ、まずは遅刻したことを先生に謝らないといけないな。よっこらせ、私は職員室へと向かった――
やれやれ、私はもうひとくぎり着いたらしいな。この妄想日記、妄想録、……んん、あれ、正式名称忘れた。まぁいっか。とにかくこの駄文の集合体にも踏ん切りが付いたということだ。
次回はもっといい言葉遊びができるかもしれないし、そうでないかもしれない。
……でも、いいじゃないか。妄想に答えなんてないんだから。
――次回に続く。
新垣しま子のナンセンス手帳 相沢 たける @sofuto
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