第十話
ショートケーキ臭い親父は、エタノールを顔にぶちまけて大笑いした。仏壇をアフロにしてしまったエスカレーターは、バニラアイスクリームのような苦悶の表情を浮かべていた。
イチジク色に染まった夏休みとは、不死身の存在であった。
業務上の事故で亡くなったニンニクのような思いを抱いていると、ゴボウがハチマキを付けてやって来たので、私はハリケーンを食わず嫌いしたのである。
ドラッグ禁止法は文庫版で確認できそうだが、消防車はユーフォーではないらしいと言うことは誰にも証明できない。
まな板で造られた剣は、政界のトップに立った。
ナマズはナマズでも、食べられないナマズは廃車にされるらしい。
細菌の研究をしていたケータイ電話だが、髪を解かれたので泣き叫ぶ。
しどろもどろにモヤシを食っていると、ヒヒーンと鶏が到着した。
掃除当番のおばちゃんは、校則を破って炎のバク転を決めた。
しばらくフリーズしていた寒色系のラベンダーはとても優雅だ。
キリンはクリリンと戦うらしく、私はハルマゲドンと戦う。
閃きは三文の得のようであり、少年は大志を抱く前に大麻をやるのである。
高山地帯はホルマリン漬けにされている。
九九を言えないようではジェットコースターに乗れないが、クレタ島に浮かぶ信長は別である。
うぅっ、くそ、頭が痛い。どうしてだ。君はまさか、もう一人の私じゃないか?
まさか、私に二人目がいたなんて。
私はどうやらこいつを打ちのめさないといけないらしい。でないと彼は私に人格を譲ってはくれないだろう。私の中でアメーバのような分裂が始まるのは、間違いなく今日で初めてだ。記録しておこう。今日は○月○日、朝の五時。
私は涙を拭いた。この弱気になっている自分を克服しなければならないだろう。私は他人なら木刀で余裕で蹴散らすことができるが、相手が自分自身となるとそうはいかない。なぜならそれは精神的な問題だからだ。物理攻撃は通用しない。
私はこの頭痛の種に、反撃を開始する。より良く、より意味のない言葉の連なりが、私を勝利に導くはずだ。
私に、どうか力を与えてくれ。地球のみんな。私は今日本に住んでいる。住所は○○県○○市○○町どこどこだ。助けてくれ。私一人の力じゃまったく勝てない。
私は体がポカポカしてくるのを感じた。すげぇ。私の意志の力が世界中の子どもたちに届いたんだ。子どもたちの想像力が、私に結集して、温かな光となって私をくるんでくれる。
色々な国の子どもたちが私を応援してくれているんだ。私は深くそのことに感謝しなくちゃな。みんなありがとう。これで私は戦える。この荒んだ大人たちが跋扈する世界を何とか渡っていくことができる。
私は今まで散々、この妄想癖を叩かれてきたんだ。小学校の頃、私は集中できない子だと、担任の先生から叱られた。平手打ちされたこともあったし、先生たちはその事実を包み隠した。それは正当な教育であったと。
私はこの社会で生きていけるのかと、必死に頭を巡らした。私は認められない子なのだと。
だから木刀を握ったのだ。私にはひどい妄想癖があったけど、ある種の戦闘の本能が備わっていた。一度武器を手に取れば、襲いかかってくる敵など一網打尽だ。このおかげで私の周りには敵はいなくなった。そして私を慕ってくれる人も出てきた。だけどそれは友達とは呼べるものじゃない。遠くを見るような、憧れの瞳が私には集まった。
でも、子どもたちは別だ。私を対等に扱うし、みんな大人にはない力を持っている。密かに蓄えた、子どもなりの考え。それはなんと私を喜ばせることだろう。彼らの話は面白い。その考えはたいてい大人にはできないものだ。
君達の声を、私は聞ける。私はもう一人の私と戦うことができるんだ。
行くぞ、
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