第二話

 キシリトールを起こしたフランス人のあまつさえ、預言者のように卓抜とした破滅へと導くモンブランと、弾け飛ぶような笑顔を見せた鉄筋コンクリート。オルゴール色のブーゲンビリアをまとった貴婦人に渡すプレゼントと、ハーブティーとベルガモットと殺人事件、さらにはハンノキを加えてかき混ぜるという所業を一時間あまり続けたあと、ホルンを吹き鳴らして街中を歩くという所業、理解者のごとく殺人鬼になる必然性を語るという所業を三時間ほど繰り返すと、モーゼを思い出すギルガメッシュと友達になれるぞ。


 ブーツを履いて疾走する馬。君は何色が好きかと私は聞いたよね? え? ボウリング場を荒らしに行ったって? なにが? え、なんだ馬じゃなくてゾウさんか。畑を食い荒らす江戸川上流。ソードを振りかざすと雷が落っこちて満面の笑みを浮かべるものの、おそらく不可算名詞に数えられると思わない。カジキマグロの推察を聞きながら、ろくろを操るおっさんみたいになりたい。フードバンクに登録しているナスビと、エリンギキャベツにオランダせんべい。


 もし仮に、小田原城を真下から見上げたなら、猪八戒が乱舞することだろう。それと物理学者はハンドミキサーを手渡して無礼講な肋骨を荒唐無稽に動かして、スタンガンの文字化けを見届けることだろう。結構。いいことじゃないか。ヨーグルトドリンクッ。


 マスカット色の巨峰を咥えた富士の山を貰いに来た。そう彼は言ったようだ。くつわを外して彼はけたりけたり中臣鎌足と笑い、モーショントレーニングを覆すような画期的なドライビング技術を開発したそうな。佐藤はやっぱりすごい奴だ。

 ふざけんじゃねぇ。肋骨折れたじゃねぇか。佐藤は叫んだ。水路のカエルはセミの抜け殻のように跳びはねて、漢字の書き取りを進めるお兄さんみたいに、破裂した。


 クジラの肉の香りがする目ん玉を舐めつつ、クッションボールを処理する羽子板級の活躍を見せる予定だったのに、あいつに邪魔された。むっつり理解したような無理解を表情にありありと見せたのちに、ほじくり出したモヤシの内臓を祭壇に置いた。屈辱の音色を奏でて色をなくしていく心臓、細いからだから解放されたことを喜び舞い飛ぶ肝臓、青空をついに目の当たりにして涙をどろりと流す肺。そら見ろ、美しい光景じゃないか。



 

 さっきより短めの文量で印象的なラストへ導けたのではなかろうか。物語のラストというのは定型的なハッピーエンドやバッドエンドにするのではなく、多少邪道ながらも印象的なラストの方が、私は好きだが、これは色々と談論が風発しそうなしそうなのでここで話を広げることは止めておこう。


 おっと、後ろの妄想のチャンクは私が放課後に繰り広げたものだ。きちんと掃除の時間に机運びを終え、さらにホームルームで担任の話を聞いてからの放課後妄想タイムだぜ。こんなことを考えているうちに、空はゆったりと赤みが差してくるんだから、青春とはかく悲しいものかと考えてしまうな。


 私の前髪を吹き散らして、冷たい風が教室内へ侵入する。教室の扉は開けっぱなしだし、廊下の窓も同じく全開で、その窓からは私の暮らしている街が望める。


 ったく。


 春は今や、青を通り越して白くなりかけてる時期だ。なぁんて、月並みの言葉で今日を締めくくらせてもらう。お疲れさん。

 私は開いている窓をすべて閉め終え、手提げ鞄を肩に提げて、木刀を取り、フーセンガムでも買って帰ろうと思うのだった。


 さて、夕食を終えたぞ。私はバーチャル世界に入り込むように仰向けに寝転がり、愉快不愉快痛快な妄想を始めることにした。

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