#23 ジャン・モニオットの手記 後編 ※誤削除のため書き直し
1877年12月22日
今日、6年前から止まっていた、運命の歯車が動き出した。
あの男が馬車に乗る姿を見かけたのだ。
場所はパリ18区モンマルトル。
急いで追いかけたが、もはや言うことを聞かない今の脚では到底追いつけない。
しかし、間違いない!
あの男は、このパリに居るのだ!!!
***
1879年1月15日
ロンダさんから仕事の打診。
18区に新しくできる劇場で働かないかとのこと。
オレにも幸運が巡ってきたのかもしれない。
近くにはあの男がいるはずだ。
***
1879年1月17日
ロンダさんから、劇場プロデューサーと劇場支配人の紹介を受ける。
オレを清掃夫として雇いたいとのことだ。
建設中の劇場のある場所を見に行く。
劇場ができるという場所は、よく知っている。
オレの庭だった場所。
今も昔と変わりはない。
こんな居心地のいい場所に高級志向の劇場を建てようとしている奴らの気が知れない。
雑踏のなか、自称芸術家や、いかがわしい店の客引きが、声を掛けてくる。
ここにいればあの男の情報も得ることができるだろう。
オレは二つ返事で清掃の仕事を引き受けることにした。
***
1879年1月28日
昔馴染みの
あの男は、毎月隔週金曜日、ジジ・デ・ガットとの取引きのため
ツキが回ってきた。
さっそく次の金曜日に様子を見に行く。
***
1879年2月8日
決行。21日、DR。
Le ciel aide ceux qui s'aident eux-mêmes.
天は自ら助くる者を助く。
すべてうまくいくはずだ。
***
1879年2月23日
fils de pute!Va te faire voir !
畜生!地獄へ堕ちろ!
昔の仲間を信用したオレが馬鹿だった。
あの男のほうが一枚上手だ。油断ならない。
こちらが情報を掴んだら、あの男にも筒抜けだ。
オレは運がよかったんだ。
天はまだオレを見捨ててはいない。
その証拠にオレはまだ生きている。
別をあたる必要がある。
考えろ。
***
1879年4月10日
新しくできる劇場のこけら落とし公演だかに、ロンダさんも出演するのだという。
顔も服も派手な小男を紹介された。
新進気鋭の劇作家なのだという。
なんでも公演予算も限られており、人手が足りないらしい。
劇場運営が始まるまでの間、ロンダさんの付き人に加えて、小道具の管理もしてほしいとのことだ。
***
La déesse sourit.
女神が微笑んだ。
***
1879年6月5日
朝から雨が振っている。
土砂降りの雨だ。
道路はぬかるんでいることだろう。
この日のためにせっかく磨いた靴も台無しだが、仕方がない。
今日がその日だ。
チャンスの女神には後ろ髪がない。
オレはファビオ・ガラヴァーニを殺す。
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