最終話 埋葬して、次へむかって

 インタスタラ帝国がどうなったかはよくわからない。

 洗脳兵器を破壊したかったけど規模がでかすぎて難しかった。

 だから私は雪山へと歩いて行った。ゴム底便利だなあ。


 ちょうど寒い冬になる。18歳を超えたかな。

 またスカートの裾が短くなっていたから直さないとね。この近くでミススル銀が手に入るとは思えないけど。胸と腰はやばいくらいきつい。もっとサイズを大きくして作ってもらえば良かった。


 雪山に入ってすぐに、神獣と出会った。朝陽より大きい。


「ごめんなさい、私のせいであさ――」


 謝っている最中に頭を噛まれた。あれぇ?

 言葉がわかるわけではないが付いてこいと言っているので、神獣の後ろを歩く。

 積雪量がやばい。神獣が道を作ってくれなかったら歩けなかったわ、これは。

 数日歩いたし野営もしたが、神獣はずっと付いていてくれた。

 雪山の神獣は優しいな。


 そして到着する。聖女が魂を清めた跡地に。

 ここで出会って、ここで遊んで、ここで仲間になった。

 お別れはここでしたい。

 滝から離れてすぐのところにお墓を掘って、マジックリングから朝陽を取り出す。まだ生きている気がする。気だけ、だけどさ。

 丁寧にお墓の中に入れる。

 神獣がファミリーで様子を見に来てくれた。朝陽の奥様は「あとで参ります」とのことだそうだ。胸が詰まる。


 お墓を埋める、前に。


「一緒に来てくれてありがとう。奇跡〈ホーリーファイア〉」


 そう、火葬した。

 凄い量の奇跡がかかっているから多分腐敗しないと思うんだけど、ここで腐敗させたくないし、形が残ったままだと朝陽も次にいけないかなって思って。


 火葬が終わったあとにお墓を埋めた。石を切り出して簡単な半円形状の墓石とし、お墓の上に立てた。


『私の真の相棒、そして大好きな存在だった神獣朝陽、ここに眠る』


 私はコピーライターじゃないから良い文章は書けない。でも精一杯の感謝を持って墓石に刻んだ。


 墓石をおいたとき、そこに光が差したような気がする。

 朝陽、終わったよ。




 インタスタラ帝国を1人で壊滅させ、大魔王ですら相手にさせなかった私だ。戦略的価値はとんでもなくあるだろう。いけいけギャルからさらに一段階転職できそうな感じもする。

 ただ大活躍するのはごめんだ。社畜、というか私が世界の鍵を握るとか心理的に持たない。

 今回は朝陽を埋葬するついでに道の途中にあった諸悪の根源を退治したってかんじだからね。


 これから活動するに当たってユキ・サースパンダーの名前は完全に捨てないといけないだろう。お姉様と会うのも危険だね。

 冒険者佐原雪も改名しないと。指原春さしはらはるとかよいかも。雪の次は春!


 指原春、次にむかって歩きます!


――おわり――

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

社畜女が転生したら、聖女と賢者と勇者を同時に持って生まれましたが世界は救いません。最強? いいえ、仕事量三倍です。もう酷使されたくない。逃げろ! きつねのなにか @nekononanika

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ