第3話 魔王「おまえつよすぎんだろ」
そう、私が取った作戦は「裏取り作戦」なのだ。
戦略兵器級である私を裏から攻め込ませ、兵士を消滅させる。
私を追って最前線から兵士を裂けばクルード海連合の圧力に耐えきれなくなるし、ほおっておいても街の戦力でどうにかなる存在ではない。荒らされ続ければ最前線、いや、国が崩壊しかねない事態だ。
私が破壊するのは主に3つ。
一つ、兵舎。
一つ、壁や塔など、街の防衛部分。
一つ、中央広場。
これで兵士を消耗させ、魔物から身を守るすべを絶ち、住民の士気を下げる。
私はこれで街や年を破壊して回った。
途中、人を盾にして私の攻撃を止めようとすることがあった。
確かに私は一般市民は攻撃していないからね。
効果あると思ったんだろう
私は普通に3つを破壊した。一般市民ごと。
盾にはならないとわかったためか、今度は町の人総出で私を倒しにかかった。
私は3つの破壊だけに集中すると、ほかの相手は〈範囲気絶〉や〈ウェブ〉で処理をして終わりにした。
そして、一枚の手紙が私に渡された。
「超越神インタスタラ皇帝と直接対峙しろ」
手紙にはそう書いてあった。首都に行くか。
首都へと向かう。道がどんどん豪華になってゆき、道ばたに建っている家もそれなりの物になっていく。本当に大きい国だねえ、しみじみ思う。
「これは……門? こんなに大きいのか……」
首都へと入る門へと到着し、その大きさ、荘厳さに驚く。今まで見た門の中で一番の大きさだ。
でも破壊できるな。
私が門へと近づくと通過待ちをしていた市民が逃げる。何も千四、少なくとも私は。
兵士が無言で私を通す。話は伝わっているようだ。
首都の中は迷路みたいな形状だった。中央へ行く道以外は四方左右に入り下っている。あー、パリみたい。行ったことないけど。
普通に行ってみたかったなあって思いつつ中央の道を歩く。いろんなささやきや罵倒の言葉が飛んでくるが無視する。いけてるギャルにそういうのは効かない。
中央広場へと着く。東京ドーム何個分だろ、この広さ。
「まだ歩くのか……」
「もうそこまでで良い、あとは動くな、さっさと殺してやる」
音もなく前方にインタスタラが姿を現した。
「シャドウムーンか。高等魔法だね」
「見破るか。相当な成長をしたようだな」
「周辺に張られた結界は年を守ると見せかけて、逃げられないようにするためかな。自身は逃げられそうだけど」
「さあ、どうだろう」
挨拶はそこそこに戦いが始まった。
「〈踏み込み〉からの右腕飛ばし!」
「ぐぬう!?」
まず最初にインタスタラの右腕が吹き飛んだ。
『あいつ動きを完全にみれてねーな。奇跡使って早いところ正体を現させた方がいい、ほかの人物へ憑依しちまう』
そうだね。
「奇跡、〈魂の煉獄〉」
途端にインタスタラからどす黒い煙が舞い上がる。
あつかろうて、あつかろうて。
「きさまぁ!!」
インタスタラは人間だった一部を焼き尽くす――という表現が一番近いか――と、真の姿を表した。
「この大魔王、ゲオルク・アウメリオ・エンメリックが貴様を食らいつくして我の糧にしてくれるわあ!!」
同時にものすごい咆哮。
〈耳栓〉〈心強化〉をして耐える。普通の人ならあれだけで死んでしまいそうだ。
大魔王は四つ足の銀色の生物で、首が長く、尻尾は太く、ヘンテコなドラゴンのような感じだ。
ただ四つ足は運動能力が極めて高い。首が長いとリーチがとれる。尻尾が太いと身のこなしが高いし、尻尾振り回しが強い。
大魔王、魔王の上か。
これはさすがの私でも激戦になりそうだわ。
「食らえ、〈地獄の業火〉!」
ゲオルグ・ア、げ、げお、……ゲオルグが炎を放ってくる。これはマントで防ぐ、のがまずかった。サラマンダー製のマントだけど、耐えきれなかったのか途中で燃えてしまったのだ。
少量を浴びたけど〈空間障壁〉でガード。ちょっとだけなのに魔素が結構食われた。直撃は危ないな。
「〈連続魔〉〈追尾〉〈連射・エアストライク〉〈連射・アイスストライク〉〈連射・ロックストライク〉」
三種類の刃がものすごい勢いでゲオルグを襲う!
ゲオルグは瞬間移動を繰り返しながら回避し続け、少量被弾したタイミングで尻尾を360度振り回して魔法を全てかき消した。
瞬間移動は縮地、360度はディスペルを尻尾に付与して、それを振り回して周囲の空間に展開してかき消したかな。私の自動防御はどちらも対応できるな。
少量被弾したけどすこぶる元気だ。縮地して私にかみついてきた。〈増加装甲〉して防ぎ、カウンターで奇跡の〈破邪〉を発動。
「グアァ」
軽くよろめいたあと後ろへ通常のステップをした。効いたか。
「逃がすか。〈踏み込み〉〈抜き打ちなぎ払い抜け〉」
ステップで離れた距離を詰めてなぎ払うように横薙ぎの抜き打ち。そのまま後ろに抜ける。
大分高等な戦士系統の技だ。当たらないということはない。
極限まで成長した今の花草水月なら全てを着ることも出来るだろう。
果たしてどうか。
『あいつ液体金属で出来てやがる。普通に切ってもあまり意味がねえ。切り飛ばすようにしないと。俺だと切ったその場で後ろをくっつけるから切り飛ばせねえかもな』
「じゃあどうするよ。魔法で牽制して破邪でたたいていくか」
『こっちにも液体金属はあるだろ。ここはそいつの出番だよ。俺は結界切りたいときに呼んでくれ。』
「翠乃沃土か。出来そう?」
ブルブルと頷くような感じを見せるみどり。
この子にも士気超向上は働いてる感じがする。液体金属をやる気にさせる女、佐原雪。
「いっくよー!」
形状変化して、両手で持つサーベルへとなる翠乃沃土。きっちりと腕輪の部分は残しており、剣が吹き飛ばされる心配もない。さすがは乙女の心を知る液体金属!
液体金属で斬られ切り飛ばされてしまうということに動揺が隠せないゲオルグ。
バックステップで逃げようにも私の奇跡が飛んでくる。
「〈般若心経〉! 〈釈迦牟尼仏〉!」
どうやら世界が変わっても仏教の教えは効くようだ。神様の教えではなく、悟りになるための道だからね。
お経を読むことはさすがに出来ないが、経典の名前を放つだけでも打撃になっているようだ。
止まれば踏み込み打ちで体を切り飛ばす。
どんどん体が小さくなるゲオルグ。
やつは後ろへ飛ぶときはバックステップしかしてこないが、縮地って後ろに飛べないのかな? 前は生物へ飛ぶ専用? つっかいにくー。
「くそおぉぉぉぉ!! 次世代の魔王、頼んだぞー!」
ゲオルグは私に突進したあと、体を液体化し、私に絡ませてくる。防御魔法が発動して実際の皮膚にへは届かないが、重りにはなるので動けない。
そして急激に赤熱し始める。自爆する気か!!
「こ、こういうとき、こういうとき使う魔法! 〈転移〉! うわ付いてきた! 活動を停止、活動を停止…… 〈魔素停止〉! 原理上これで止まる!」
「ぐ、これまでも対応するとは。しかし我をなめるなぁ!」
自爆しようとするゲオルグとそれを止める私。決死の攻防が続く。
その均衡を破ったのは翠乃沃土であった。
「こ、この液体金属、この状態の我をも吸収しようとするのか!? なんなんだ貴様らは! なんなんだ!」
液体化した体に針を刺され、吸収されていくゲオルグ。
途中『浄化がほしいとさ!』と花草水月から連絡を受けて何度か浄化したが、あまり苦もなくゲオルグは吸収されていった。莫大な魔素と血液を保管していたからね、大魔王を吸収することも出来たんだろうさ。
赤色に光沢が出た翠乃沃土を従えて、私は無言でこの場を去ったのであったー。さすがいけいけギャルだなー何でも出来る。
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