第6話 森氏は都内を逃走中
長い長い階段を急いで降りる。香蓮はというと、まだまだだ。これは、途中で踏み外して転んできたのが怪我の功名だったのだろう。
「待って!!悪かった!!だから戻ってきて!!」
美少女でもない人間にそんなこと言われても。未来ははっきりしている。
「こら林司!!待ちなさい!!許さねぇぞ!!」
ほら、この通り。さっきは泣き叫んでたくせに。
ドタドタドタドタ!!!!
うわ、相手も結構早いぞ。
だが、こっちは一枚上手だ。なんせ、バスと電車の情報を突き止めたからだ。
階段を降り、道路へ出る。香蓮も追いかけてくるが・・・・・。
ピッ
バスに乗る。そして、香蓮が追いつく前にドアは閉じた。
ガタンゴトン・・・・・ガタンゴトン
電車はカタコトと揺れている。
――僕はこれで良かったのだろうか
どうしても心に付きまとってくる。僕はこんなことをしてよかったのか??
ブンブンブン
他の乗客が驚くほど、頭上で手を振った。
「気にするな気にするな」
『間もなくー上野ー上野です。お出口は右側です。ドアから手を放してお待ちください』
しばらく眠っていた林司は衝動的に目を覚ました。
「もう上野か」
鞄を持ってフカフカのシートを発った。
キキーッ
電車がブレーキを入れて止まる。ドアが開くとさっさと降りて行った。もしあいつが見張っていたら明らかにヤバいと思ったからだ。
シューッ
ドアが閉まって、電車が動き出した。ホームを見回しても香蓮はいない。ホッとして改札に向かう。
ギギーッ
3年ぶりに感じる、森家の家。森家と言っても今住んでいるのは林司一人だ。
「はーっ」
林司はソファに倒れこんだ。この2日間?3日間だったか?ひとまず、色々ありすぎたんだ。
そのまま・・・・・普段着のままソファで寝息をたてた。
今日は朝早く起きた僕。そういえば・・・・・有給休暇っていつまでだったっけ?
すぐさま、スマホのカレンダーアプリを開く。
「えっと・・・・・有給休暇の期間は・・・・・3月5日までー?!」
つまりは、あと3日あるということだ。
「おいおい、嘘だろ。ヤバいよヤバいよ」
このgag、誰かが言ってた気がする。
「さてさてどうする!!」
普通の人なら「ヤッター休める!」って思ってのんびりするんだろう。
でも、僕は香蓮に言われて渋々従った身だ。その契約で師も許可してくれたってのに、これで言ったら面目が立たない。僕はついつい正直に打ち明けようと思ってしまう。
「もう、いいや。忘れよう」
と、思ってこのことをTwitterに「森林 司」として投稿する。森 林司を森林 司にしただけのものだ。
Twitterに投稿して数10分。確認してみると「そのまま休んじゃいなよ」というコメントが多数届いていた。
「それじゃ、そーしよ」
というわけで、池袋にでもショッピングに行こうかと思い、よそ行きの服装を
する。
上野から山手線で池袋に行く途中。少し考え事をしていた。
彼女は僕のずるに気づかなかったのか――
しばらく考え事をしてから、そんな時どうすればいいかを聞こうと思った。だから、ネットの質問投稿サイトに質問した。
そんな作業のあれこれを繰り返すうちにも、電車は駅を飛ばしてゆく。
『間もなくー新大久保ー新大久保です』
のアナウンスがあったことはさすがにビビった。つまり――池袋過ぎた!あちゃー!
そして、仕方なく折り返すことにし、電車から降りると思いもよらない人物に出会った。いや、出会ってしまった。
「林司君、こんなとこで何してるの?ああ、そだそだ。原宿のカフェ行かない?」
香蓮ーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!
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