<18>
イレーヌちゃんは、さよりちゃんの所属事務所のアイドルオーディションに合格して、アイドルになることになった。
それで、イレーヌちゃんは、ボクの家を出て、1人暮らしをはじめることにした。ボクの今の家よりも、もっと大阪の中心に近いところに住むようになった。イレーヌちゃんは、ちっちゃい頃から、日本が大好きで、日本のアニメも大好きで、そして日本のアイドルも大好きだったから、自分でも日本のアイドルになること出来て、めちゃめちゃ喜んでいた。フランスと日本との、文化の架け橋になるんだって、めっちゃ気合いを入れていた。
イレーヌちゃんは新人アイドルとして御披露目されてから、一気に人気が出た。
フランス人っぽい可愛さもあったし、他のアイドルの子にはないようなオリジナリティあふれるオーラを持っていた。
さよりちゃんも、アイドルはやめたけど、同じ事務所の後輩だから、イレーヌちゃんをボクといっしょに応援していた。
さよりちゃんが、初めてボクの部屋に来た時、入った瞬間、「あっ!伊勢さん!」って言った。
「えっ?なに?」って、さよりちゃんに聞いたら、「伊勢さんが今まで、ここにいたみたいだね!今はもう、いないけど」
「伊勢さんって?」
「百人一首とかの伊勢さんだよっ!若かりし頃の!もう、今は伊勢寺に帰っちゃったみたいだけど」
伊勢寺といえば、ボクの高校のすぐ近くにある。いつも伊勢寺を通って高校に通学していた。
「なんで、伊勢さんって、わかるの?」
「なんでって...伊勢さんが、あやめちゃんをよろしくねって、わたしに言ってたから...部屋に入った瞬間...それから、さよならって伊勢寺に帰っていったから...」
「姿も見えたの?」
「う~ん。はっきりとは見えてはいないけど、着物姿の若い女の子の雰囲気が伝わってきた感じだったよ。わたしの着てる服と、なんとなく良く似た感じのする着物姿のような」
次の日、さよりちゃんといっしょに、久しぶりに高校の近くの伊勢寺に行ってみた。
着いたら、それまで晴れてたのに、急に、ほんのちょっとだけ雨が降ってきて、すぐにやんだ。
それから、風は吹いてないのに、急に草木がざわざわと音をたてて、ゆれはじめた。
2人で伊勢寺の中をゆっくり歩いてたら、小さな鳥が2羽、ボクとさよりちゃんの目の前をパタパタと可愛く飛んできて、足元に舞い降りて、しばらく、いっしょに歩いてた。
草むらから、急に、丸いボールが転がってきて、さよりちゃんがそのボールを拾い上げて、草むらに向かって、「はいっ」て言って投げ返してた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます