第56話

「なんだかんだ、毎日退屈しなくて楽しかったよ」


「そ、そう」


「それに、なんかお別れみたいな雰囲気になってるけど、これからも迷惑かけられるだろうしな」


「なによ、その言い方」


遥香は小さく笑う。


「だって、せっかくお前に友達認定されたんだ。それって滅多にない事だろ?だったらこれからも仲良くするよ」


その言葉に、遥香はハッとした。

友達という言葉に、唇をぴくぴくと小刻みに震えさせ、今にも笑みがこぼれそうなのを抑え、深呼吸すると、


「あんたにそうゆうセリフ、似合わないわね」


見下すように、鼻で笑ってきた。


「なっ―――――――せっかくちょっとカッコつけたかったのによ」


「上手く締まらないもんね」


俺達は、2人で笑った。


「それに、文化祭の最後に屋上に呼び出して、告白だと思ったぞ」


冗談交じりにそう言うと、


「そうね、私からはしないけど」


意味深な答えが返ってきた。

んんっ!私からは!!?

なにその変な答え!


「それって……………………お前……………」


俺は顔を真っ赤にして遥香に問いかけるが、


「教えなーい」


と、そっぽを向かれた。

教えないと言われても、めちゃくちゃ気になるので、


「教えてくれなかったらバラすぞ!」


秘密兵器を出した。

すると遥香は、いつも通り俺の胸倉を掴み、泣きついて来た。


「教えないけどバラさないで!」


やはり、いつも通り理不尽であった。


「いや教えてくれなきゃバラすからな?」


「それはダメ!でも教えない!」


「やっぱお前は変わらないな」


フッ、と、苦笑しながら言うと、


「当り前じゃない」


「まぁ、少し下ネタ好きの所は変わってほしいけどな」


「いいえ、私の下ネタ好きは一生変らないわ」


「いや、変わるくらいの努力はしよう…………」


「いーやーだ!」


「そうかよ」


「それと――――――――――」


一歩下がり、俺から距離を取ると、後ろに手を組みながら、


「さっきの答えはいずれ分かるから」


ニコっと俺に笑いかけた。


「なんだよ、いずれって」


「いずれはいずれだよ」


「あっそ」


「そうゆう事だから、早く片付け行きましょ!」


遥香は、屋上のドアに向かって歩き出した。


「下ネタって、そんないい物かね」


遥香の背中を見ながら苦笑いして、そう呟くと、後ろを付いていく。

その背中からは、これからの、下ネタと、楽しさと、めんどくささが混じった生活が、描かれているように感じ取れた。

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下ネタが嫌いと言いながら、さりげなく言ってくる下仁田さん もんすたー @monsteramuamu

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