下仁田遥香は、女の子であった。
第55話
文化祭2日が終わり、皆が片付けをしている時、
「なんで、俺を屋上に呼び出した?」
俺は、遥香と屋上に居た。
その前に、今まであったことを話そう。
まず1日目。
クレープを食べ終わると、お化け屋敷に向かった。
正直言って、俺はホラー系統がすべて苦手だ。
ホラー映画も目を瞑って、耳を塞ぐくらいの……………………
だが、それを遥香に言ってしまうと、
「こんなのが怖い訳?一様、彼氏なのにそれはないわ」
と、蔑まれてしまうので、俺は黙ってお化け屋敷に入った。
最初はビビッて、遥香の手を強く握っていたが、
「ひゃうっ」
遥香も、お化け屋敷が苦手らしく、途中から俺の腕にしがみついていた。
俺は、そのあまりにも可愛い過ぎる光景に、お化け屋敷の怖さなど忘れていた。
それからは、かき氷をこれまたあーんしあいっこして、一日目は終了した。
2日目は、特に大きな問題は起きず、昨日と同時にメイド喫茶の仕事をして、休憩時間には文化祭を回り、ポップコーンやタピオカなどを買い、あーんしあいっこしていた。
とにかく、平凡に過ごせた。
俺が、メイド喫茶でクラスの女子に事故で顔面にパイをぶつけられた以外は…………
俺が立てた予想はハズレだったらしい。
もっとこう、みんなが驚くような出来事があると思っていたが、そんなことはなかった。
そして今、俺は遥香に呼ばれ、屋上に居る。
「やっと2人きりになれた」
後ろを向いていた遥香は、そう言うとこちらを向いた。
「なんだ、そのテンプレみたいなセリフは」
ため息を吐くと
「とにかく、昨日と今日はありがとね。あんなわがままに付き合ってくれて」
普段の遥香からは聞こえてこないであろう、お礼の言葉だった。
呼ばれた理由は、偽恋人の件だった。
「そうだぞ、最初聞いた時マジでビビったからな?」
「それはごめん」
「でもあのヤンキーのせいだからしょうがないけどな」
「そうだけど、私にも悪い所はあったわ」
「なんでいつもより後ろ向きな発言なんだ?」
普段だったら、ありがとうどころが「あんた、そんなデートの仕方だから彼女できないし、童貞なんでしょ?」と罵倒されているところであろう。
それなのに、今日は違う。
「だって……………色々振り返ると……私迷惑しかかけてないから」
俯きながら、そう言った。
声は小さかったものの、その声は俺の耳に鮮明に聞こえた。
そんな遥香に、
「バカかお前は」
と、頭を小突いた。
「確かに、めっちゃ迷惑かけられたし、色々あったけど……………………楽しかった」
頭を撫でながら、優しく言った。
「――――――――――え?」
少し顔を上げると、頬をじんわりと赤く染めた。
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