1~6話一気読み用

 「グォー、ガァー」

 とあるボロアパートの一室


 そこで大きなイビキを立てて寝ているのは歴史好きな男子大学生、佐原さはら ダイキ


 佐原は大学進学のために地元を離れ、県外のボロアパートで独り暮らしをしている


 そんな佐原の腹の上に謎の空間が出現する


 (バチバチッバチッ!)

 20代程の女性が謎の空間から音を立てながら現れ


 (ポンッ!)

 コルク栓を抜いたような軽い音と共に、女性が佐原の腹に向かって放り出される


 (ドンッ)

 「グォホォエッ!?」

 佐原は謎の音を発して目を覚ます・・・・が

 

 「ウヮわぁッ!?」

 女性がバランスを崩し、手を着こうと伸ばした手が佐原の顔面にクリーンヒットする


 「ゴフッ」

 佐原は白目をむいて夢の国に戻る


 「ハハッ!僕と一緒に踊ろう!」

 「うん!」



  「「ランッララッラッラッラッラッ♪」」


 「・・すか!大丈夫ですか!?」

 「う・・・うぅ・・・ん?」


 三途の川で、某ネズミのキャラクターと踊っていた俺は体を強く揺さぶられ目を覚ます


 「大丈夫ですか!?」

 目を開けるとそこには、十二単を着た金髪美女がいた

 「うぉあ!?」

 俺は大声を出し、飛び起きる


 「よかった・・・目が覚めたんですね・・・私、あなたを殺してしまったかと思いました・・・」

 そう言いながら金髪美女がホッとした表情をする


 「あんた、誰!?」

 「そうですよね、まずは自己紹介ですよね」

 そう言うと、金髪美女が姿勢を正して話し始める


 「私の名前は 佳代子かよこ・アリス・新保ニシンフォニア、気軽に佳代子と呼んで下さい」


 アリスじゃないんだ・・・・


 「それで・・・佳代子さん、あんたはなんで俺の部屋に?」


 「話せば長くなるんですが・・・・」

 そう言うと佳代子さんは苦笑いしながら話し始める


 



 「なるほど・・・・・つまり、あんたは未来の日本から旅行に来てて、本来は人目につかない場所に出なきゃいけないのを」

 「座標を10km間違えてしまって・・・」

 「俺の腹に・・・」

 「本当に、申し訳ございません!!私がドジなばっかりに!!」

 そう言うと佳代子さんは土下座し始める


 「まぁ、もう・・・その事は良いから、頭上げて・・・」

 「ありがとうございます・・・」

 そう言いながら佳代子さんは頭を上げる


 「で、気になってたんだけどその格好は何?」

 俺は十二単を指差す


 「この格好ですか?この格好はこの時代に合うように、買ったものなんですが・・・」

 「いや、この時代に十二単を着る人いないから・・・」

 「え!そうなんですか!?」

 俺の言葉に佳代子さんは目を見開く


 「この時代の女性はこの姿でセグウェイに乗ってると思ってた・・・・」

 「いや、そんな姿でセグウェイ乗ったら危ないし、そもそもセグウェイそんな日常の移動に普及しなかったから・・・」


 「そうなんですか、私の時代の教科書には未来の移動手段って書いてたからてっきり・・・」


 「あんたの時代で使われてなかったら、普及してるわけ無いでしょうよ・・・」

 「確かに!」

 どうやら佳代子さんは大分、天然なようだ

 


 「それで、何でこの年にタイムトラベルしてきたの?」

 「そんなのこの年が歴史的な年だからですよ!!」


 「歴史的な年?」


 「はい!だってこの時代は」

 佳代子さんはキレイな青い目を輝かせながら続ける


 「関ケ原で源頼朝が勝って、室町幕府を開いて」

 ん?

 「織田信長が本能寺で」

 うん、ここはあって・・・

 「森蘭丸に暗殺されて」

 はぁ!?


 俺は間抜け面で彼女の話を聞く

 「伊藤博文が韓国で襲撃されて、田中角栄内閣が郵政民営化解散して、平清盛が征夷大将軍に任命されて、法隆寺で柿を食べると鐘が鳴って、足利尊氏が太政大臣に任命されて鎌倉幕府が出来て、卑弥呼が奴国の王で、大久保利通が暗殺されて、豊臣秀吉が江戸幕府を開いて、北海道の五稜郭で西南戦争が起こって、坂本龍馬が暗殺されて、二・二六事件があって、五・一五事件があって・・・・」


 「ストッープ、色々間違ってる!っていうか幕府が3つあるし・・・あと暗殺多いな?!」

 俺はそう言うと佳代子さんに、1つ1つ丁寧に間違いを訂正した



 「なるほど、つまりこの年にそういったことは起きてないと・・・」

 「そう・・・何か悪いけど、この年に卑弥呼も信長もいないんだ・・・」

 

 「分かりました・・・」

 佳代子さんはしょぼくれた顔で答える



 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 2人の間に気まずい空気が流れるのが分かる


 「・・・・・なぁ」

 「何でしょう?」

 「何か気になるものとか無いの?この年で・・・」

 「この年で、ですか?」

 「そう」

 この年での風習とかだったら俺が教えれば良いし、食べ物だったら高くないものだったら買ってきて食べさせてあげられる・・・・・そう思って俺が聞くと


 「じゃあ、国会議事堂ですかね・・・・」

 「国会議事堂?」

 俺は予想外の答えに思わず聞き返す


 「はい、実は・・・・」

 そう言うと佳代子さんは腕につけている時計のようなものをいじる


 (ブォン・・・)

 小さな音が鳴ると、俺たちが見慣れた国会議事堂がカラーフォログラムで写し出される


 「私達の時代にはこの姿の国会議事堂は無くてビル型になってて、一度で良いからこの姿の国会議事堂を生で見たいなと思ってたんです・・・・・」


 「なるほど・・・・」

 俺はなんと答えれば良いか悩む


 「もしかして、国会議事堂もこの時代には・・・」

 佳代子さんが不安そうな顔をする


 「いや、国会議事堂はまだこの姿だ・・」

 「そうなんですか!?」

 佳代子さんの表情がパッと明るくなる


 「ただ・・・・」

 「ただ?」

 

 「ここから国会議事堂までかなりの距離がある、すまないが俺には国会議事堂まで行く財力を持ち合わせていない、だから・・・・」

 この時代のカップ麺でも食べて満足してくれ・・・と俺が言おうとしたら


 「それでしたら心配ご無用です!」

 「え?」

 佳代子さんは腕の機械をいじると


 「テレポ♪」

 その掛け声と同時に俺の回りの壁が、ボロボロの土壁から立派な壁に変わる


 「あのー・・・佳代子さん・・・ここは・・・?」

 俺は佳代子さんに声を震わせて尋ねる


 「あれー・・・国会議事堂の外にテレポしたはずなんですけど・・・」

 佳代子さんはダラダラと汗を流して答える

 「じゃあ、何で壁と天井があるの?」

 「えーと・・・」

 佳代子さんが答えようとしたその瞬間


 「おい!誰だ、お前達!!!」


 まずい!そう思った瞬間には俺と佳代子さんは走り出していた


 「座標間違えましたーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!」

 「おい!!早く、俺の家にテレポートしろ!!」

 「1回、テレポしたら5分間出来ません!!!!!」

 「バカ野郎ー!」




 逃げ始めて1分くらい経っただろうか、俺達は数十人くらいの警備員に追われていた


 「ハァ・・・ハァ・・・待って下さい・・・何か・・体が重い・・・」

 「十二単着たまま走ってるからだろうが!」

 「あっ、そっか!」


 そう言うと佳代子さんは腕の機械をいじり

 「フォーチェッ!」

 佳代子さんがそう言うと同時に佳代子さんの回りに靄が現れ、そして靄が消えると佳代子さんはへそだしランニングルックになっていた


 「ふー、フォームチェンジ完了♪だいぶ軽くなった!」

 そう言うと佳代子さんは一気に俺の横まで走って来て


 「あと少しです!頑張ってください!!」

 「分かってるよ!」

 誰のせいでこんなことになってるんだよ!!

 そんなことを考えながら走っていると


 「待て!!!」

 その声と同時に俺達の前に、複数人の警備員が現れ、俺達は立ち止まる


 

 「ハァ・・・ハァ・・もう、逃げられないぞ」

 後ろには今まで追いかけてきていた警備員達が、息を切らしながら立ち塞がる


 「どうしましょう?挟まれちゃいました・・・」

 佳代子さんは泣きそうな顔でこちらを見る

 「どうしましょうって言ったって・・・」


 「さぁ、大人しくこちらに来てもらおうか・・・」

 そう言いながら警備員が俺達の方に近づく


 (もうダメだ・・・)

 俺がそう思った時


 (ペンパーィ♪アッペーン♫)

 国会議事堂に変な音が鳴り響くと同時に


 「テレポ!!!」

 佳代子さんは大声で叫ぶ


 







 (ドンッ!)

 「「痛ッ!!」」

 俺と佳代子さんは乱暴に床に落とされる

 

 

 「戻れた・・・のか?」

 俺は辺りを見回す・・・そこにはボロボロの土壁と見慣れた汚部屋がある


 「はい・・・」

 「よかった・・・一時はどうなるかと・・」


 「本当にすみません!!私のドジで・・・」

 そう言うと佳代子さんはまた土下座をしようとする


 「良いよ、なんだかんだ楽しかったから」

 「本当ですか?」

 「あぁ・・・」

 俺の返事を聞いた佳代子さんはホッとした表情をする


 「ただ、1つ気になるんだけど・・・」

 「何ですか?」

 「俺達、思いっきり防犯カメラに写ってると思うんだけど・・・」

 

 「あぁ、それだったら大丈夫です」

 俺の疑問に対し、佳代子さんはあっけらかんと答える


 「私達はタイムトラベル中に何かしらの形で記録されたらダメなので、この機械の周辺のカメラ機器は一時的に使用不可になるんです」


 「なるほど」

 なら大丈夫か・・・


 


 「まぁ、国会議事堂も見れたし・・・これで未来に帰れるだろ?」

 「実はその事なんですが・・・」

 「ん?」

 




 「はぁ?!実は逃げてきた!?」


 「はい・・・実は私、未来のバイト先で博物館に勤めてるんですけど・・・その時、うっかり国宝を壊してしまって・・・」


 「それで逃げてきたと・・・」

 「はい・・・未来の世界では修復ライトがあって、それを使えばすぐに直せるので器物損壊に問われる事はないんですが・・・」

 ん?


 「じゃあ、何で逃げてきたんだ?」

 俺がそう聞くと

 「それは・・・館長に怒られるのが怖くて・・・」

 佳代子さんが子供のように答える


 「館長に怒られるのが怖い?」

 「はい・・・」

 「自分でやったことだから怒られるのは仕方ないだろ」

 俺がそう答えると


 「館長怒ったらすごく怖いんだも~ん!!」

 そう言いながら佳代子さんは膝から崩れ落ち、子供のようにボロボロと泣き出す


 「館長普段から美術品に傷をつけたら、その傷をつけた職員にジャーマンツープレックス食らわすんだもん!!国宝を壊したなんて知られたら、市中引き回しの張り付け石投げの刑にされちゃうよ~!!!」

 いや、そんな拷問みたいな事はしないと思うけど


 「ねぇ、ほとぼりが冷めるまでで良いからここにいさせて下さい!お願いします!!」

 佳代子さんが泣きながら俺にすがりつく

 「んな事言われても・・・」


 「お願いしますよ~!!張り付けイヤだー!!!」

 佳代子さんはさらに大声で泣き始める



 「あぁー!もう、分かった!」

 「へ?」

 佳代子さんが泣き止む



 「ここにいたら良いよ、もう・・・」

 「良いんですか?」

 「あぁ・・・」

 「ありがとうございます♡♡♡!!!!」

 そう言うと佳代子さんは俺に抱きついてくる


 「やめろ!」

 デッケェアレが俺の胸に当たる!!


 「イヤです!離しません!!」

 「やめろーー!」



 こうして俺の汚部屋に未来人の居候がやって来た





 





 俺の部屋に佳代子さんがやって来て一晩たち、佳代子さんはバイト探しに躍起になっていた


 佳代子さん曰く

 「居候させて頂くのですから家賃の1万や10万、自分で稼いで払わなければ!!」

 との事らしい


 (俺は別に良いんだけどな・・・)

 

 「佐原さん!」

 俺がそんなことを考えていると佳代子さんが話しかけてきた

 「ん?どうした?良いバイト見つかったか?」


 「いえ、それは絶賛探し中です!!」

 「そうか・・・なら、どうしたんだ?」


 「私、この時代でしたいことが思い浮かびまして!」

 佳代子さんは目を耀かせて話す

 「ほー、何がしたいんだ?」


 昨日の夜、あれから佳代子さんにはこの時代でやりたいことが思い浮かんだら気軽に言うように伝えていた


 (せっかくこの時代に来たんだ、出来る限り叶えてあげたい・・・)

 

 佳代子さんが目を耀かせて続ける

 「皇居に行きたいです!!」

 「ダメだ!!」

 「えー!!!」





 佳代子さんとの毎日はまだ始まったばっかりだ

 


 

 


 


 

 


 

 


 

 

 



 


 

 

 

 


 

 

 

 

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