ケース2

頭がぼんやりする


カッター‥‥だと痛そう

こういうときってみんな何でやるんだろう

調べてみよ


精神が壊れてるからか、これから解放されるからか何故か怖くない

ちょっと楽しい。ウキウキする。

小さい頃家族で遊園地に行ったときみたい

みんな仲良かったらいいのに

昔みたいに

お父さんが戻ってきたらまた行ってみたかったな〜


カミソリか‥‥あるかな

ない。まぁないよね

じゃあカッターか


お風呂場に向かう

水が溜まるときは大きい音がするけど、

どうせお母さんはお酒飲んで寝てるから起きない。いつものこと

湯船にお湯が溜まっていく

なんか変に緊張してきた

おかしな感じ

本当は怖いからなのか、カッター片手に

冗談めかして小さく笑った。


お湯が溜まっていく音が耳に残る

手に汗が滲んでくる。

怖がってるの? 私


お湯が溜まったからTシャツのまま湯船に浸かる。これで終わりなんだ、服なんて脱ぐの

面倒くさい

右手にカッターを持って、左手首を出す


横に切るのかな‥‥?


勢いをつけて切ってみる。深めに手首が横に裂ける


「うっ‥‥」


痛い‥けど思ったほどじゃない。

この調子でどんどん切っていった。

腕が切れていく。怪我のない私の腕が切れていく。ぱっくりと裂けた私の腕から

絵の具のような鮮やかな色の血が出てくる。

腕をつたってポツポツと血が垂れる。お湯と混ざり合って、煙のように消えていく


これでお湯に浸けるのか


腕についていた血がお湯に溶け、沈めた腕が見えないほどに赤くなる。

腕がピリピリする。でも気にはならない。

血は止まらずに流れ続ける

体の力が、だんだんと抜けていく。

眠りに落ちる時のように意識がとろけていく


意外とあっけなかった

もうすぐ意識が落ちそうな時に、走馬灯がみえる。学校でいじめられたこと、引きこもりになったこと、両親が離婚したこと、お母さんに殴られたこと、悲しかったこと、辛かったこと、苦しかったこと

幸せだったこと

短い人生が頭の中で駆け巡る。


疲れた。

次があるなら、普通に生きたい

そんなことを考えて

私は意識を失った



夏の静かな夜の下

彼女は一人で事切れた


東 彩星 (13)

死因:手首の傷による失血死

動機:親の虐待と学校でのいじめ

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

かんかんじてい カラサエラ @3cutter_4cats

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ