私の祈りが届かなくても

 風のない、静かで落ち着いた朝だった。エンジンがかかり、白みはじめた空の下で、飛行船の明かりがふっくらと草の上に広がる。


 とぼとぼと船内に乗り込む。顔なじみの船員たちの反応は、怒っている人と優しく迎えてくれた人で半々だった。だけどみんなわたしを心配してくれていたことに変わりはなくて、胸が痛くなった。


 一番迷惑をかけちゃったジンさんがあまり怒っていなかったのは意外だった。といっても、いつも通りひょうひょうとした感じで、本心がいまいち読めなかったけど。

 昨日のうちにまとめておいた荷物を持って船内に乗り込む。まだ朝早いから、見送りは誰もいない……と思いきや、寮の窓からハヤテと眠たそうなチルさんが手を振っていた。胸がきゅーっとする。


 積荷がないぶん、出発準備はすぐに終わった。きっと、わたしのせいで結構損失が出てる。わたしのわがままのせいで……


「お邪魔するわ」


 閉じかけたハッチを細い腕がこじ開けた。虚をつかれたバレンさんの横をすり抜けて、ヘルガさんが乗り込んできた。


「おはよう」

「あ、おはよう……」


 文句の一つや二つ言われるかと思いきや、なんでもないような涼しい顔でわたしの隣に座る。どうして? おろおろしていたら、バレンさんが呆れ顔でやってきた。


「何してんだ。謝罪なら必要ないって言っただろ」

「着いていくだけ。いいでしょ、せーんぱい」

「見つかったら何言われるか知らねーぞ。それに仕事は」

「構わないわよ。たまにはサボりたい気分なの」


 わたしは目と口がまん丸になった。ヘルガさんでも仕事をサボりたいなんて思う時があるんだ。

 バレンさんは面倒そうに、ヘルガさんはニコニコ笑って睨み合っていたけど、そのうちバレンさんが折れてため息をついた。


「帰りは適当な所で降ろすからな」

「できれば陸地によろしくね」


 今度こそしっかりとハッチが閉まり、エンジンの音が大きくなる。船内が揺れたかと思うと、地上から足が離れた。


 丸い窓に映った大樹が少しずつ遠くなっていく。その太い幹の横をすり抜けて、一台のバイクを引きずる女の子がいた。


 こっちに気づくと、すぐにバイクを放り捨てて走り出した。斜面を滑り落ちていくバイクを追うように丘を駆け下りるけど、足がもつれて派手に転んでしまう。よろよろと持ち上げた顔は、泣きじゃくる子供みたいだった。


「クレオ……」


 泣き顔が離れていく。景色に取り込まれて、やがて影も形もわからなくなる。

 窓にへばりつくわたしの背中に、ヘルガさんの手が触れた。あったかい手に促されるみたいに、膝を立てていた座席に座り直してから、ちょっとだけヘルガさんに近づく。


「また会えるわ」


 肩を抱かれる。ヘルガさんはやわらかくていい匂いがした。




 錆びたシャッターが、飛行船のエンジンにも負けない耳障りな音を立てて開いていく。

 心臓がどくどくする。体がへんに強ばって、船が村の中に入り切ってからもなかなか立ち上がれなかった。


「大丈夫か」


 バレンさんに顔を覗き込まれて、やっと体が動くようになった。移動中ずっとくっつかせてくれたヘルガさんが背中をなでた。


「いってらっしゃい」


 さよならって言わないあたり、ヘルガさんはやっぱり優しい。お礼を言ってバレンさんの背中にくっついて船を降りた。


 埃っぽいこもった空気につつまれる。全然爽快じゃないのに、なぜかすごくほっとした。

 店の前に、村のみんなが詰めかけてきていた。わたしを見た瞬間、次々にため息が聞こえた。


「カフカちゃん!」


 真っ先に飛びついてきたのは、グロリアおばちゃん。おばあちゃんだけど、おばちゃんって呼びなさいって口酸っぱく言ってくる。歌が上手なんだ。昔は歌手だったって言ってた。昔って、きっと地上にいた頃のことなんだろうな。


「怪我は本当にないのかい。ひどい目にあわなかったか」


 次に来たのは、長老の悪友ベンさん。いつものふざけた調子はどこへやら、震える声で心からわたしのことを心配してくれているみたいだった。

 頭の横にある傷跡が、今日はやけに目につく。小さな頃にこの傷どうしたのって聞いたら、昔わるいやつらから妹を守った時にできた名誉の傷だよって言ってた。何があったのか、今ならなんとなく分かる。


「本当によかった」

「俺たちが悪かったよ。許してくれ」

「本当に心配したわ。毎日無事を祈ってた……」


 次々に声をかけられる。ユーカさん、ずっと前にわたしを抱きしめながら「下の子は今のあなたくらいだったの」ってぽつりと呟いたことがあった。

 あんまり気にしたことなかったけど、ホレスさんは左手の指が全部付け根から無い。

 いつもマフラーを巻いているシエラさんは、実は首から下に火傷の跡がある。


 今まで見えなかったものが見える。それでも、まだたくさんわたしの知らないことがあるんだと思う。みんなが生きてきた人生の中の、その人にしか分からない悲しみや苦しみが、きっと。


「……ごめんなさい。勝手に出ていって、心配させてごめんなさい」


 そう言うと、涙を浮かべていたみんなの顔がやわらいだ。


「もう二度としないでくれよ。心臓が止まりかねんからね」


 こくんと頷くと、なおのこと和やかな空気になって、みんな絡まった糸がほどけたみたいに好き勝手しゃべり出す。「よかったよかった」「このお転婆娘」「縮んだ寿命が戻ってきた」とかね。じじばばたちの取り留めのないお喋りを聞いていると、戻ってきたんだなって実感する。


 ほっとした。なのに緊張がなかなかとけないのは、まだ伝えきれていないことがあるからかな。


「あー、なんか決めたんだろ。カフカが帰ってきたら言うんだって騒いでなかったか」


 バレンさんの言葉に、ベンさんが「おお」と何か思い出したみたい。


「カフカちゃん、学校に行ってみんか」

「……学校」


 思いもよらない誘いだった。学校って、あの子供が勉強しに行く学校? 本当に?


「いくら大事な子だからって、じじばばだけの村にずっと置いとくのはあんまりだった。わしらが悪かったよ。これからは、隣のメレレ島にある学校に通うといい。まあ学校というには質素だし、近頃ケダモノどもと交易を始めたせいで、島内をヤツらがうろついとることもあるらしいが……本当に心配ないんだろうな、バレン」

「ああ。こんな辛気臭い村にずっとこもってる方が体に悪い」

「相も変わらず口の悪い娘だのー……そういうことだ、カフカちゃん。学校で友達をたくさん作るとええ。……子供は全部で八人しかおらんらしいが、なに、大事なのは数じゃない」


 開いた口が塞がらないってこういうこと? ここまでみんなの考えが変わるとは思ってもみなかった。


 わたし、学校に通えるんだ。

 全然実感がないや。でも嬉しい。すごく嬉しい……けど、心に大きな引っかかりがある。それをどうしても無視できなかった。


「あの」

「うん? どうした」

「嬉しい。ありがとう」


 でもね……

 なかなか言い出せない。みんなニコニコしてる。このまま黙っていたら、すごく円満に収まるんじゃないかな。


 ……クレオ。

 わたしの大事な友達。今頃泣いてるかな。

 やっぱり離れたくないよ。


『言ってこい』


 ハヤテに背中をとんっと叩かれた気がした。


「わたし、地上にいる時にお世話になってた人たちがいるの。友達もできたの。その人たちともっと一緒にいたい」


 みんな揃って面食らった顔をしていた。段々と悲しそうに、もしくは怒った顔に変わっていくのがすごく辛かったけど、やっぱり今のなし、なんて言いたくなかった。


「そいつらは、ヒトじゃないんだろう」

「そうだけど、みんな優しかったよ。見ず知らずのわたしを何日も泊めてくれたの」

「優しい、か。そう思っていられるうちに離れなさい。そろそろカフカちゃんにも、昔何があったのか教えなければな……」

「もう知ってるよ。おじいちゃんの友達に会いに行って、全部教えてもらった」


 ベンさんが息を呑む。わたしは呼吸を整えてから、その目にはっきりと語りかけた。


「みんな酷い目にあってきたんだね。それなのに無神経なことを言ってごめんなさい。でも、わたしが見てきた地上の世界はとっても平和で、だれもわたしを傷つけようとなんかしなかったよ」

「わしらだってそうだった! 五十年前のあの日までは!」ベンさんが振り絞るように叫んだ。「ずっと友人だと思っていた。同じ人間だと……それなのに」


 耳に届いた誰かがすすり泣く声に、胸が痛くなる。ベンさんも泣きそうな顔で息を整えて、わたしと目線を合わせた。


「同じ思いはしてほしくないんだよ、カフカちゃん」


 わたしのことを想っての言葉だって、痛いくらい分かる。自分がわがままを言い過ぎてるってことも。だけど、出会った人たちが悪い人だなんてやっぱり思えない。


「わたしは地上で会った人たちが大好き。もっとお話して、お互いのことをたくさん知りたいの。みんながわたしを心配してくれてることもすごく分かる。でもわたしは自分が実際に見てきたことを一番大切にしたいの」

「駄目だ。絶対にそれだけは」

「わたし地上で暮らしたい」

「駄目だ」

「お願い。迷惑かけないから」

「駄目だ……」


 首がはっきりと左右に揺れる。……やっぱり。


「新しい友達ができたらすぐ忘れるよ」

「家でゆっくり休みなさい。落ち着いたら考えも変わるかもしれないから」


 村の人たちに次々にそんなことを言われたけど、わたしはなかなか頷けなかった。

 ふと、すぐ横に立つバレンさんが首をかしげるみたいにして後ろを見た。すると小さな悲鳴混じりのざわめきが起こって、みんなの視線が一点に集まる。


「やっぱり出てきた……」


 うんざりとそうこぼしたバレンさんの横をすり抜けてわたしの前に立ったのは、ヘルガさんだった。枝が折れるみたいに節度のある動きで深く頭を下げる。


「な、な……」

「シパーフ郡中央配送局局長のヘルガ・アトレーンと申します。皆様の大切なお嬢様をお預かりしておりました。ご挨拶もせず、大変申し訳ございませんでした」

「ヘルガさんが謝ることじゃないよ! ねえみんな聞いて、わたしが嘘をついて泊めてもらってたの。ヘルガさんは何も悪くないんだよ」


 村のみんなは唖然としていた。よくない空気だ。


「わたし、ヘルガさんたちにお仕事をもらったり、おじいちゃんの友達の家まで送ってもらったり、すごくお世話になったんだ。良い人なの。だから、そんなに怖がらないで」


 耐えきれない様子で、一人背中を向けて村の奥へと走り去ってしまった。

 他のみんなも不安げで、胸を押さえたり唇を噛み締めたりしている。

 ベンさんが大きくため息をついて、一歩前に出た。


「あんたが悪人じゃないってことは分かったよ。カフカちゃんの言うことを信じる」


 穏やかな声だけど、表情は硬い。


「分かったから、早く出て行ってくれ」


 ヘルガさんは首を縦には振らなかった。


「お話をさせていただけませんか。カフカちゃんのこれからのお話なんです」

「話すことなんてない」

「お願いします」


 ヘルガさんはまた頭を下げた。ずっとそのまま、ぴくりとも動かないヘルガさんの首根っこを掴んで引っ張りあげたのは、バレンさん。


「聞かせろ」


 ベンさんたちはそれを止めなかった。ヘルガさんがゆっくり話し出す。


「ご存知でしょうが、この国は二十年前からヒトとの交流を再開しました。今では地上に移り住むヒト類の方も少なくありません。ヒトへの迫害は今や根絶されており、過去を悔い、協力を惜しまない姿勢の国民がほとんどです」


 ……知らなかった。ぽかんとするわたしを置いて、ヘルガさんは続ける。


「年々交流は活発になっています。失礼を承知の上で申し上げますが、浮遊大陸は不便も多く、子供たちが十分な学びを得るのに適しているとはいえないのが現状です。彼女の将来の選択肢を増やすためにも、どうか地上の学校に通うことをお許しいただけませんか。…………これを」


 ヘルガさんが取り出したのは、二冊の薄い本のようなものと、折りたたまれた厚めの紙。疑わしげなみんなに向けて開いてみせる。


「私の全財産と戸籍謄本を預かっていただけますか。この程度では私を信用するには至らないでしょうけど、せめてもの覚悟の証です」


 ……うそでしょ?

 唖然としちゃった。バレンさんまで珍しく引きつった顔をしている。ベンさんもうろたえていたけど、はっとして首を振って手を前に突き出す。


「こんなもの、この子になにかあったとしても何の役にも立たない」

「そうですよね。でも、彼女のことは必ず私が守ります。命をかけたって構いません」


 さすがに黙っていられなかった。ヘルガさんに抱きつくように掴みかかる。


「ヘルガさん、なんで? どうしてあんなこと言ったの? 命をかけるだなんて」

「あなたに自由でいてほしいから」


 ヘルガさんはなんでもなさそうな顔で笑った。嬉しさよりも戸惑いの方が大きくて、何を言っていいのかわからなくなる。

 ヘルガさんがしゃがんで、わたしの頬をやわらかく触った。薄い金色の毛が蛍光キノコの薄明かりに触れて、すごくきれいだった。


「子供はね、たくさんの権利を持っているの。学ぶ権利、遊ぶ権利、なにかに脅かされることなく安心して眠ることのできる権利……色々ね。そして大人には、その権利を守る義務がある」


 あんまりピンとこなくて、あいまいに首を傾げる。ヘルガさんは「今はよく分からなくてもいいわ」とほほえんだ。


「私もあなたを守りたいの。義務じゃなく、私がそうしたいの。だって、優しくて真面目でひたむきなあなたのことが大好きになっちゃったんだもの」

「ヘルガさん……」


 気づいたら胸に抱きついていた。細い腕が背中をなでて、いい匂いにつつまれる。


「地上にいるのとこの村にいること、どっちが良いかって話じゃないの。あなたが地上にいたいって願ったから、私はそれを叶えてあげたいと思った。それだけ」

「うん……ありがとう」

「待て、そんなのおかしいだろう、なあ……」


 ベンさんのその弱々しくて途方に暮れた声に、みんなが声をあげ始めた。「口ではなんとでも言える」「まだ十三歳になったばかりなのに」「勉強しなくたって幸せになれる」「自分勝手すぎる」って


「ねえ、わたしみんなのこと大好きだよ。なにかあったらちゃんと帰ってくるし、連絡もする。だからお願い。ねえ」


 目を伏せて、誰もわたしを見てくれない。かたくなに、これ以上は取り合わないっていう態度だった。


「いいじゃない」


 場違いにのんびりとした声が響いた。

 声がした方を向くと、片手で杖をつき、もう一方の手で長老の腕を借りながらゆっくりと歩いてくるアリーさんの姿があった。


「ごめんなさいね」って人だかりをかきわけて、分速十メリルくらいで近づいてくる。そんなのんびりな移動もふっくらコロコロとした体には大きな負担だったようで、わたしの前にたどり着くと「ふぅーっ」と大きな息をついた。


「カフカちゃんお久しぶり。無事でよかった」

「ア、アリーさん。ここまで歩いてきたの?」

「そうよぉ早くあなたに会いたかったんだもの。ああ疲れちゃった。帰りは誰かにお姫さま抱っこでもしてもらおうかしら」


 よいしょ、と店の前の椅子に腰掛けて、いつも通りニコニコしていた。アリーさんはこんな時でもみんなの気をぷしゅっと抜いてしまう、不思議な力を持っている。


「地上で暮らすんですって?」

「え、あ、まだ決まってない、けど……そうできたらなって」

「うん、いいんじゃない。いいわよぉ。いってらっしゃいな」


 あまりにあっけらかんとしているものだから、ぽかんとしちゃった。


「いや……よくないだろ」

「アリーったら、何を言ってるの」

「穴ぐらの中もそんなに悪くはないけどね。でもひなたぼっこの気持ちよさには敵わないでしょ」


 子猫みたいなことを言うアリーさんに、みんなさすがに怒り出した。だけど本人はどこ吹く風で、額の汗をハンカチで拭っている。


「まあ、まあ、いいじゃない。この子が行きたいと言ってるんだもの。ねえビルくん」


 話を振られた長老がびくっと反応した。気まずそうにわたしの顔を見て、「まあ、うん」と渋々頷く。


「……長老、酷いこと言ってごめんね」

「いや、いい。わしも悪かった」


 照れくさそうにヒゲをなでる。仲直り、できたのかな。


「カフカちゃん、本当に地上に行きたいのか」

「うん。もっと色んなこと知りたいの」

「……なら仕方ないのかもなぁ」

「正気か!? お前だってあんなに騒いどったのに」

「むう……うちの馬鹿娘やらアリーちゃんと話すうちに、本人の意思が一番大事かと思うようになってな」


 バレンさんが横で舌打ちをした。ベンさんが言う。


「好き勝手させるのは自由と違うぞ」

「好き勝手なんかさせないわよ。ちゃんと決め事は守ってもらうもの。夜にお菓子は食べない、だとかね」

「アリーちゃん、こんな時にふざけんどくれ」


 アリーさんがあまり怖くない怒り顔で反論した。


「ふざけてないわよぉ」

「ケダモノまみれの地上で暮らさせるなんて、心配じゃないのか? わしらがどんな目にあったのか忘れたわけじゃなかろう?」

「そんなの昔のことじゃない」

「昔のこと? 皆今でも苦しんでいる。まだ終わってなんかない」

「いいえ、昔のことよ。この子にとってはね。まだ終わってない、じゃないの。この子たちにとっては始まってすらない、過去のことなの」


 アリーさんは絶句するベンさんに手を伸ばし、立ち上がろうとしてよろけた。とっさに支えたベンさんの手をしめたとばかりに掴んで、ずっしりした身体を預けてみんなの方を向かせる。


「何も知らずに生きてほしいだなんてことは思わない。でも、私はこの優しい子に、私たちの憎しみまで受け継いで欲しくないわ。みんなはどう?」


 問いかけに、はっきりとしない、不満気な声が漏れる。「もうっ」と杖を鳴らした。


「巣立とうとする鳥を巣に留めておくはできなんてできないでしょ。それと同じ」


 今度こそ、だれも何も答えなかった。アリーさんはわたしのほうを振り返る。


「カフカちゃん」

「……アリーさん」

「この村は狭かったでしょう。年寄りにとってはこのくらいが丁度いいのだけどね」


 ふふっと笑って、わたしの両隣にいる二人にそれぞれ視線を送った。


「よろしくね、キツネのお嬢さん。バレンちゃんも」

「はい」

「ああ」

「決まりね。さあ色々準備しなくちゃ。通学鞄は何色がいい?」


 アリーさんは頷いて、晴れやかな顔で宣言した。


 みんなは諦めるような、悲しげな、祈るような、色々なものがないまぜになった表情で、わたしを見つめていた。

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