10
「どこに行こうとしてたんだ」
答えられなかった。バレンさんはコチちゃんのボディを撫でながら歩いてきて、わたしの前に立つ。
「……外に行こうとしたんだろ」
服の裾を握って、俯くように頷いた。バレンさんが大きく息を吐いた気配がする。
怒られると思った。でもいつまで経っても怒鳴り声は飛んでこなくて、逆にそれが怖かった。
バレンさんの顔を恐る恐るうわ目に見ると、さっぱり考えを読み取れない黒い目が、変わらずわたしを見下ろしていた。
「とりあえずこっちに来い。ガス臭くてたまらん」
その言葉に従ってガレージを出ると、ジンさんを初めとする何人かの船員が立っていて、わたしの顔を見るなり心配そうな表情に変わる。気まずくて村の出口に目を向けると、四角く切り取られた真っ黒な夜空の端に、飛行船のおしりが見えた。わたしの様子を見るために、船を置いて引き返してきたのかな。
「閉めてくれ」
バレンさんが手持ちの無線機に向かって指示を出すと、シャッターがゆっくりと下がり始めた。どこまでも続くはずの空が狭まっていく。
コッコッコッ、と焦りが混じった足音が近づいてくる。
「何があった」
シャッターが小さな隙間を残して閉まったあと、足早に現れた長老が険しい顔でバレンさんを睨んだ。バレンさんはちらりと見返し、ため息混じりに答える。
「なんでもない」
「そんなわけがあるか。なんだこの騒ぎは」
きょろきょろと辺りを見回しながら、船員の間をジグザグの歩みで通り抜けると、開け放たれたガレージの前で足を止めた。その顔がどんどん険しくなっていって、わたしは泣きそうな気持ちになった。
「あの、ちょうろ」
「何をする気だった!」
身がすくむくらいの怒声が洞窟内を跳ね回る。長老は何も言えずにいるわたしに詰め寄ってきて、拳を震わせている。
「外に行こうとしたんだろう、アレに乗って。違うか」
恐る恐る、頷いた。噛み締めた歯の隙間から空気を吸い込んだ音がした。
「お転婆じゃ済まされんぞ……!」
「……だって」
「なにがだってだ!」
怒鳴りながら距離を詰めてくる長老の肩を、ジンさんが掴んだ。反射的にそれを手で払いのけた長老をいつも通りぼんやりとした目で見下ろし、ゆるい調子で言う。
「ま、落ち着けよ」
「部外者が口を出すな」
「実はこの子の計画には俺も一枚噛んでてね。完全に部外者ってわけでもないのよ」
びっくりして、同時にすごく慌てた。ジンさんは何も悪くないのに。そんなこと言ったら、みんなから怒られちゃうのに。
「ち、ちがうよ。ジンさんは悪くないよ。わたしがジンさんに嘘をついて燃料をたくさん発注したの」
「あー……」
「人を騙してまで外に行きたかったのか。恥ずかしいことをしていると思わなかったのか」
「騙してって、別に、犯罪とか、そんなんじゃないのに」
「なんだと? 全く懲りていないようだな!」
「あーあー、とりあえず俺らが叱っとくって。な、長老さん」
「やかましい! この子は村の子だ。お前らは関わるな! 早く出て行け!」
なんとか長老をなだめようとするジンさんだったけど、取り付く島もない。それどころかどんどん怒りが増していくものだから、とうとうわたしたちの傍から一歩引いた。わたしも、それがいいと思った。
ジンさんが大きなため息をつき、
「キッチン借りるな」
そう言って背中を向けた。長老がその背をひと睨みしてから視線をわたしに戻す。
「どうしてこんな無茶をしてまで外に行きたがる」
急に諭すような声で言われたから、わたしもなんだか罪悪感が湧いてきて、返す声が小さくなった。
「……長老たちが外を見せてくれないから。わたしだって綺麗な空を見てみたいんだもん」
「子供のうちに見たっていい事なんかない」
「なにそれ……」
わけわかんない。
「それに同年代の友達とかも欲しいし。わたし、この村で一人ぼっちなんだもん」
「村中からこれだけ大事にされているじゃないか。それでなにが一人ぼっちだ」
「一人ぼっちだよ! 周りはみんなじじばばばっかり。長老だって知ってるでしょ? わたしくらいの歳の子はみんな学校に通って、同じ歳の子たちと一緒に勉強したり遊んだりおしゃべりしたりするんだよ。わたしだって友達がほしいの!」
「飛行機に乗って外へ出るのと何が関係ある。雲と友達にでもなるつもりか?」
それもいいかもね。長老と話すよりは雲と話す方がずーっと楽しいに違いないよ。
「地上にはいっぱいいるでしょ。町に降りて友達を探すの」
キッと睨みつけて、わたしはそう言ってやった。長老の顔がみるみる青ざめていく。
「何を考えて……!」
「わたしは探検家シア・アリムスの孫だもん。危険なんて怖くない。人生は冒険してこそ、なんだから」
もう、気持ちはめちゃくちゃだった。どうやって外に出るかよりも、この意地悪な長老をどう言い負かしてやるかってことに意固地になっていた。
そしてもくろみ通り長老の悔しそうな顔を見て、胸のすくような思いと同時に自分が嫌になった。
長老は何も言えずにいる。言いすぎたかな。謝ったほうがいいかな……少し心配になってきたわたしの頭上に、思いもよらない言葉が降り注ぐ。
「血も繋がってないのにふざけたことを言うな!」
言葉が頭から胸まで突き刺さったみたいに、ズキン、と痛みが走った。
大好きなおじいちゃん。でも、血は繋がってない。でも、でも、わたしのことが大事だって、繰り返し繰り返し言ってた。
だからこんな言葉に傷つく必要なんてこれっぽっちもないはずなのに、それでも心臓に穴が空いたみたいに痛い。
右手で痛む胸をぎゅっと押さえつける。その時村の入口から突風が吹き込んで、色んなものをぐちゃぐちゃにかき乱していった。倒れた鉄製のバケツから、詰め込まれていた使用済みのウエスが飛び散り、オイル缶がゴロゴロ転がる。わたしは散り散りに舞う自分の髪を押さえつけた。おじいちゃんが綺麗だって褒めてくれた、長い髪……。
「おいクソジジイ。黙って聞いてりゃ際限なくヒートアップしやがって。ちっとは大人になれよ」
「黙れバカ娘。お前だってあいつにそそのかされて村から出たくせに」
「あ? 自分の意思だっての」
今まで黙っていたバレンさんが口を開いた。だけど話の内容が全然頭に入ってこない。ぼんやりした頭の中では、なぜか今までよりもかすんで見えるおじいちゃんとの思い出が、もやの奥でゆっくりと再生されている。
「どれだけ隠してたって外に興味持つのは当然だろ。いい加減隣の島くらいには遊びに行かせてやれよ」
「あの島は愚かなことにケダモノどもの上陸を許した。この子がそいつらに酷い目に合わされたらどうする。悪人を見たこともない無垢なこの子が、食い物にされたら!」
「そうならねーように教えてやるのが大人の役目だろ! ボケてんのか!」
「なんだと!?」
どんどん激しくなる言い合いの声に、思い出に浸っていた意識が戻ってきた。今にも取っ組み合いになりそう。そうなったらたいへんだ。バレンさんは多分長老よりも力が強いから、長老の背骨がへし折られちゃうかもしれない。様子を見守っていた他の船員さんたちも、さすがに慌ててバレンさんの腕を引っ張る。
「ちょっとお頭ぁ! いつものノリで老人なんか殴ったら死ぬって!」
うちのキッチンで一服していたジンさんまで出てきた。咥えタバコで他の船員たちに加勢する。バレンさんは腕をぶるんと振ってしがみつくみんなを振り解き、舌打ちをした。
「クソジジイ」
言っちゃいけない言葉をぺっと吐き捨てて、バレンさんは長老に背中を向けた。拗ねた子供みたい。
場が気まずい沈黙で満ちる。まな板の上に転がされたような気分のまま、わたしはどうしたらいいの? せめて誰がどんなふうに叱るのかを決めてから喧騒してほしかったよ。
ジンさんが目線を寄越す。口を大きく動かして、無言で何かを伝えようとしている。
い、え、に、い、ろ
やだよ。よくも逃げたなーって叱られるかもしれないじゃない。力なく首を横に振ってみせたところで、なんだか違和感を覚えた。ジンさんからなにか大事なものが消えた気がする。これがないと存在が消えちゃうような、こう……アイデンティティみたいなもの。
……あれ、なんか焦げ臭い。わたしと同じく違和感を感じたらしいジンさんと顔を見合わせる。
「ジンさん、なんか足りなくない?」
「俺もなんか忘れてるような気がするんだよな」
そう言って口元で何かをつまむ仕草をして、指先が空振る。わたしたちは同時に、あ、って顔をした。
「あ、タバコ」
突然、すっと赤い炎が立ち上った。
猫みたいなしなやかさで揺れる火。細いけど根の深さを感じる。それもそのはず、あの火が宿主にしているのは、さっき風で飛びちったウエス。しかもオイル付き!
「火ー!」
わたしの叫びを聞くや否や、みんなが発火物に向けて飛びかかった。急な動きのせいで巻き起こった空気の流れが燃えるウエスをふんわり浮かせ、更に外から流れてきた風に乗り、ぽろりと何かを落として村の奥へと進み始めた!
だけどその先には、なんとわたしが仕組んでおいた大きな布が。それが火のついたウエスを受け止めたおかげで、村の奥には行かずに済んだ。めでたし……なわけがない! 燃え移っちゃうよ!
「シャッター開けろ!」
バレンさんが叫び、長老がのたのたと(たぶん全力疾走)走り出す。バレンさんは白い布をロープから引きちぎり、炎を恐れる様子もなく手早く丸め込んだ。わたしもぼーっとしていられない。キッチンからボウルに水を汲んできて、丸めた布にかける。一度、二度、三度目をかけようとしたらバレンさんがそれを止めて、水浸しになったぐるぐる巻きの布を直接ボウルに突っ込んだ。
ごぎぎぎぎ、と音を立ててようやくシャッターが開き、村に入り込む空気がぐっと増える。
「あ、焦った……」
ぺたんと尻もちをついた。まだドキドキしてる……この洞窟内で火事になったら逃げ場はない。村のみんなが蒸し焼きになっちゃうところだった。
バレンさんが地面から何かをつまみ上げて、ゆらりと立ち上がった。小指の爪くらいの短さになったタバコの欠片。まだちょっと煙が出ていて熱そう。さて、落とし主は?
「おい」
「………………はい」
腕を振りかぶったバレンさんと、苦い顔で奥歯を噛み締めるジンさんから目を逸らして、ゴッという鈍い音を背中で受け止めた。暴力反対。でも今回ばかりは仕方ない気もする。
バレンさん、すごく怒ってる。そりゃそうだよね、と思いつつも、怒鳴り声を聞くのはあんまり好きじゃないから、ことが落ち着くまで村の外を眺めることにした。
空にはところどころに雲がかかっていて、その隙間を縫うように、ぱらりと星を散らした濃紺の空がある。まるで底なしの谷に光が落ちているみたい。自分から落っこちちゃいたくなるくらいに綺麗。
やっぱり、あの光が欲しいなって思った。欲しいって言ったって星を捕まえてビンに入れることはできないけど、もっと近くで見られたらどれほどいいだろう。
少しだけ首を後ろに向ける。そして気づいちゃった。今、誰もわたしのことを見てないって。
でも、それって本当に今だけ。あともう十回くらい瞬きをしたら、シャッターは開ききって長老が帰ってくるし、皆の視線もわたしの方に戻ってきて、お説教が再開される。
立ち尽くすだけの今がどんどん過ぎて行く。……それってすごくじれったい。
わたしはそっと歩き出した。片付けでもしようかな、くらいのなにげなさで、そうっとガレージに足を踏み入れて、行かないの? って心配そうにしているコチちゃんの足元から輪止めを外し、操縦席に飛び乗った。
シャッターはもう少しで全開になる。行くなら、エンジン音を少しでも誤魔化せる今のうち。
「……行こ、コチちゃん」
キーを回す。すんなりとエンジンがかかった。すぐに回転数を上げ、プロペラを回す。早く、早く動いて!
わたしのお願いを聞いてくれたみたいに、ゆっくりと進み出す。
異変に気づいた船員の一人がガレージを覗き込もうとして、慌てて飛び退いた。さっきまで頭があった空間をコチちゃんの翼が切り進む。
おぼろげな記憶を辿って、おじいちゃんから教わった動作を再現する。二つのレバーにロックをかけて連動させてから引くと、浮揚機関に温水が巡り、機体が宙に浮いた。離陸。そのまま足場を離れる。ぽっかりとくり抜かれた岩の中、いつもは眺めるだけだった場所を飛ぶ。
「待てカフカ! 行くな! やめろ!!」
バレンさんの、聞いたこともないくらい切羽詰まった声に後ろ髪を引かれたけど、振り向かなかった。どんな顔をしているか想像したら、胸がズキズキした。
「シャッターを閉めろ! 早くッ!!」
みんなのざわめきは、もう遙か後ろ。村中あちこちに生えている蛍光キノコが全然ない。外が近いっていうことだ。だってほら、もう目の前には黒い空と、星の谷。
この閉じた村を守るシャッターは、近くで見るとすごく錆びていた。あの酷い金切り音も頷ける。
門をくぐる。汗ばんだ手で操縦桿を強く握る。
外へ出た瞬間、いきなり毛布をかぶせられたみたいに空の中に落ちちゃった。
視界が黒で満ちる。なにこれ。どこを向いても何も見えない。怖い。暗い。星はどこ? あの、砂粒みたいなのが、さっきまで見ていた星なのかな。全然綺麗に見えない。操縦席をぼんやりと照らす計器の明かりのほうが、よっぽど綺麗に感じた。
上も下も、右も左も分からなくなりそう。さっきよりも白っぽい、おばけの布みたいな雲に、得体の知れない怖さを感じる。
わたし、どこに向かってるんだろう。分からなくなって、怖くて、ポケットをまさぐってコンパスを操縦桿を握る手の隙間に挟んだ。245.87°……狭まった喉をこじ開けて深呼吸。ゆっくりと機体を傾けて、方位指示器を合わせる。
ちゃんと前に進めてるのかな。プロペラ、ちゃんと動いてる? 止まって見えるけど、暗いからそう見えるだけ? 冷えきった胸の奥と同じくらい冷たい汗が、体中をじっとりと湿らせる。
もう後悔してるんだ、わたし。……ばかだな。
どこにでも行けるっていうのが、こんなに怖いなんて思ってもみなかった。
ごごう、と不意に強い風が吹き付けた。ガタガタ揺れるコチちゃんの中で、わたしは思わず操縦桿の位置まで顔を伏せた。危ないよね。でも怖くて怖くて、前なんか向いていられなかった。
明るくなったら怖くなくなるかな。そもそも、朝はちゃんと来るのかな。ずっとこの暗くて広いところに閉じ込められちゃったらどうしよう。
「……おじいちゃん」
呟きはエンジンの音で消えちゃった。体を包むぶかぶかのジャケットのジッパー部分を両側から引き寄せる。おじいちゃんに抱っこされてるような感じは……あんまりしない。
「大丈夫かな。ねえ、おじいちゃん」
頭のてっぺんで留めていたフライトキャップの耳当てを外すと、くたびれたファーが落ちてきた。暖かくて、ちょっとだけ音を遮ってくれる。
憧れてたものが大したことなかったりするよね。今がその時だ。夢にまで見た外の世界は、想像の百分の一も素敵じゃないや。
大人になるまで村でじっとしてたらよかったのかな。外にぼんやり憧れつつ、何もせずに、何も知らずのんびりぬくぬくと暮らしてたら……。
「……それはそれで、やだな」
なんだかそれって、わたしらしくないや。
ぎゅっと操縦桿を握る。自分で決めて村を出てきたんだもん。怖いけど、怖くなんかないって言い聞かせる。
「不安になっちゃダメだよ、カフカ。朝が来ないなんて、そんなわけないじゃんか。あの村の中でさえ、日が出たら明るくなるはずだから……」
人生で初めての冒険。おじいちゃんみたいに、とは行かないけれど、懐かしいジャケットに袖を通して、憧れの詰まった帽子をかぶって、形だけは真似て、こうやって外に出てきたんだから。
「がんばれわたし。コチちゃんも一緒だよ。えい、えい、おー」
胸の前で拳を作ってふりふり。ちょっと元気になってきたかも。思い込みかもしれないけど、自分を騙すのも時には大事! 拳を解いてほっぺたのマッサージ。笑顔を作るよ。にこーっ。ちょっぴり視線が上向きになって、さっきまでと周りの様子が違うことに気がついた。
「ちょっと明るくなってきた? そろそろ……うわっ」
変だなって、色々考えてる頭の片隅で思ってたんだ。なんだか明るいなあって。
まぶしい。目が眩んで何も見えなくなる。まぶたを通り抜けてちくちくと目の中に差し込む光は痛いくらいで、慣れるまでとても長い時間がかかった。
ゆっくりと開いた細い視界は、にじんだ涙がオレンジ色の光をめちゃくちゃに反射して、何も見えない。わたしは涙を拭ってからもう一度まぶたを開けた。眩しかったけど、むりやり目を開いた。
そしたら、怖いものはもう何もなかった。
ページがめくられたみたいに世界が変わる。モノトーンの夜に色が溢れ出す。空を支配する王様みたいに思えた雲は、思ったよりもずっと薄く、まだらだった。輪郭のぼやけたその一面に炎みたいにつよい光を浴びて色づいている。光が差してくる向きは明るく、反対側は暗く。雲のでこぼこで少しづつ色を変えて、同じオレンジ色でも濃淡があった。
雲の向こうには、絵の具なんかじゃ表せないほど澄んだ青い空が広がっている。青とオレンジ色、正反対な二つの色があまりに綺麗に並んでいたから、わたしはこの光景が本当のものだと思えなくなってきた。だって、こんなに綺麗なものが現実だなんて信じられなかった。
なにこれ。声も出ない。
薄い雲が、火よりもずっと明るい色の光によって更にゆるんでいく。ほころびの隙間から強い光が線になって空を貫いて、機内に射し込んだ。あれが太陽……
いよいよ目が耐えられなくなって視線を進行方向に戻したけど、横目には東を見てる。太陽が雲を追い払うように空を晴らしていく。
見下ろせば薄明の世界。見上げればわたしにはまぶしすぎる、憧れの真っ只中。
これが空なんだ。
魔法みたいな朝焼けの空。全身に鳥肌が立って、指先が震える。胸のいちばん深いところに、この瞬間の全てが刻み込まれていくような感じがする。
「まぶし……」
目がチクチクして涙が止まらなかったけど、一秒でも長く見ていたくて、まばたきを繰り返しながら外の景色にかじりついた。
おじいちゃんがわたしにコチちゃんの飛ばし方を教えてくれたのは、こんな景色を見せたかったからなのかな。
「……ありがと、コチちゃん、おじいちゃん」
計器盤を指で撫でた。ゆらゆら揺れるたくさんのメーターが「お安いごようさ」って言ってるみたい。
「えへへ。進路は……よし。あらためてしゅっぱーつ!」
不安はもう全然なかった。拳を進行方向に突き出して、空の先を見据える。白と赤の可愛い飛行機が、朝の風に乗って飛んでいく。ゴーゴー、わたしとコチちゃん!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます