第125話 接点は、「養護施設・よつ葉園」だけ 2
賀来氏の述べた話の論点は、ここで登場してきた人物の「接点」について。
彼は言う。
米河清治氏と大槻和男氏の接点は、「養護施設・よつ葉園」だけである、と。
その弁に対し、米河氏はさらに論を展開していく。
そう、わしと大槻さんの接点は、賀来ちゃんの御指摘の通り、この「よつ葉園」だけやね。他には、ない。わしは第一、ジャガーズクラブにも入っていないし、何か別の接点があるわけでもない。住んでいる場所というか、地域も、まったく違う。
それは、わしと大槻さんだけじゃないよ。
大槻さんと、前任者の東さんの間も、まったく、同じ。
あのよつ葉園以外の接点は、どこにも、なかった。
児童福祉のプロ中のプロとしての大槻さんと、一教師としての東さん。
これで、接点があるのが、むしろ、不思議なくらいじゃないかな。
東さんにしてみれば、それこそ、定年後の時間を有意義に使って、生まれてくる孫の小遣いくらいは稼いでやりたいという、そんな思いもあって、よつ葉園という養護施設を第二の人生を送る先に選ばれた。
ちょうど、森川さんが高齢になって園長職を誰かに譲らねばならんとお思いだった矢先の話や。結果的に園長職を譲られたが、それが、わしらがまだ2歳かそこらの頃のお話、ね、それこそ。
さて、後に園長となった大槻さんは当時まだ20代半ば。
いくらなんでも、直ちに園長をやれとは言えまい。
それに対して、東さんは校長経験もある。小学校と養護施設は、子ども相手の仕事であるという共通点が、確かにあるわな。それなら、学校経営の延長くらいのところでいいから、この施設を維持してやって欲しい、そんな思いが、森川さんにもあったでしょうよ。特に何か、大きな成果を上げてくれることまでを期待していたわけではなかったろうけど。というのも、生活保護もそうだが、児童福祉にしても、終戦直後から比べれば格段に改善されてきていたわけだし、最低限のことができてくれれば、それで大槻さんが力をつけてくるまでのつなぎにはなってもらえよう、と。
確かに、施設運営に際して、東さんに特別問題があったとか、レベルがあまりにお粗末だったというわけでは、ないと思っている。とはいえ、これから時代を作っていかねばならない立場の者からしてみれば、あの程度で仕事が回っていればいいくらいの感覚は、正直、生ぬるい以外の何物でもなかったろう。
わしでさえそう感じるのよ。世代が幾分近いとはいえ、大槻さんにしてみれば、そんなロートル教師の感覚で仕事されては、やるべきこともやっていけんわい、とま、そんなところだったでしょうよ。
そんな状態で、さあ、このよつ葉園以外での接点、持ちたいと、思うか?
ってこと。
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