第80話 まさか、この夢・・・?!
それにしても、何だ・・・。うちの婆さんに、太郎まで。
何だか、なぁ・・・。
ひょっとして、いやまさか、大槻君のところまでお出ましになられた、なんてことは、ないと思うが、あのおじさんのことじゃ、ひょっとすると、あの「元夫婦」のところにもそれぞれ、出向かれてもおかしいとはもはや言えないような話になってきたように思えてならんなぁ・・・。
哲郎氏は、息子に対して、つぶやくように、そう述べた。
というより、そうとしか言いようがない。
この夢騒動、もう少し、続きというか、広がりがありそうな予感がする。
太郎氏は、そんなことを感じている。
別に聞かされてはいないが、ひょっと、たまきちゃんにもまさか・・・。
さすがに子どもたちのいる前で、そんなわけのわからない話も出来まい。
そう思うと、今ここで話すのは、いかがなものか。
わざわざ、こちらから呼んでまで何か変な夢を見たかとか、そんなことを聞くのも、いくら夫婦とは言えども、それは、はばかられる。
そんなことを思いながら、太郎氏は、珈琲をひたすらすすっている。
哲郎氏は、珈琲のおかわりをマグカップに入れ、黙ってすする。
しばらく、お互い無言のまま、考えることもなく考えているような状況。
別室にいる子どもたちは、ある程度落ち着きを見せてきた模様。
今日の天気は晴れ。
彼岸を迎え、からっとした陽気が、室内にも入り込んできている。
程なくして、哲郎氏の息子の嫁、つまり、太郎氏の妻であるたまきさんが、この父子のいるテーブルまでやってきて、マグカップに自ら珈琲を注ぎ、彼らの横にあった椅子に座った。
はて、まさか、あの話になるのでは?
父子共に、そんなことを感じずにはいられない。
さすがに、彼女は森川一郎氏の生前から面識があったわけじゃない。
まして、北海道の函館で生まれ育っているわけだし、あのおじさん、あの頃に北海道に行ってきたなんて話しすら、聞いてもいない。
そういえば、現園長の大槻氏に関しては、よつ葉園に入って2年目の秋頃、北海道への児童福祉絡みの会合の出張があって、園長の代わりとして数日間、札幌に行ったことがあるとのこと。その話を、大宮氏は後日、森川氏から聞かされていた。
当時のこと、飛行機を使うわけにもいかず、列車で移動していたから、彼は函館にも立寄っていないわけじゃない。ただ、青函連絡船に乗換えるために立寄った程度のことで、特に海野家の人と面識ができたなんてことはない。
第一、彼女の父親は地方公務員で母親は教師だったが、どちらも、特に児童福祉と縁のある部署だったわけでもない。
そんなことを、哲郎氏は黙って頭の中で分析していた。
世話話ともつかぬ話が続いた後、たまきさんが、その日の朝のことを語り始めた。
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