第79話 さらなる目撃?情報
その日はたまたま、休日だった。
程なくして、孫となる子2人を連れて、息子夫妻がやってきた。
息子の太郎氏は、父に対してこんなことを述べた。
子どもたちは、祖母らが相手してくれている。
太郎氏は、母と嫁、そして子ども達にあまり聞かれないよう、声を落としてその日の朝のことを話した。
あれは確か、3時過ぎだったように思う。
ぼくは書斎にあるブルートレインのマットの上で、横になっていたのね。
いろいろ用意しなければいけない文書の作成に時間がかかって、ようやく一段落したかなというわけで、2時半ごろから、横になったのよ。
まあそれまで、かれこれ気合を入れて文章を書いていたから、寝付けないのよね。
で、まあええわ、ってことで、電気を消して目をつぶって、しばらく、考えるともなく考えていたのよ。
そうするとだな、なんだ、すっかり頭の禿げて丸い眼鏡をかけたおじいさんがやってきて、ぼくに、こんなことを言ったのよ。
確かに、取材で訪れたよつ葉園の応接室に飾ってある元園長さんの遺影にそっくりというか、その人ズバリの方だったね。
大宮太郎さんだね。
私は、養護施設よつ葉園元園長の森川一郎です。
君が小さい頃、わしは、御両親と一緒によつ葉園に来られたことがあったが、それにしても、立派になられたな。今では、子どもさんもおられて、慶賀に堪えんのう。
それはそうと、君は何度か、ラジオの取材なんかでよつ葉園にも行ったことがおありじゃからご存知とは思うが、園長をやっとる大槻和男先生の件で、今日はまた、君のお父さんとお話をすることにした。
昨日、奥さん、というか、君のお母さんと一緒に墓参りに来られてな、ちょっとこれはしかし、ほおっては置けん話であると判断して、私は、君のお父さんと今日の朝にでも、お話することにした次第じゃ。
そういうわけで、太郎君、済まんが、あとで親父さんと会って話してくる。
奥さんのたまきさんにも、よろしくな。
こんな感じで、要は、父さんにこれから会って話してくるって、そのおじいさんはぼくに述べて、それで、去って行かれた。
正直、何が起こったのやらぼくには、さっぱりわからない。
ただ、見たことのないとまではいわないけど、少なくとも物心ついてこの方お会いしたことのないおじいさんに来られても、しつこいが、何が何だか、さっぱりだよ。
大宮父子は、孫たちと遊ぶ祖母や母親たちを横目に、何やら協議をしているかの様な調子で、今朝の出来事の情報交換をした。父の哲郎氏は、息子からの情報を聞き出し、正直驚きはしているものの、それでも何とか、平静を装っている。
珈琲のおかげもあってか、お互い、リラックスした状態で話ができていることは、この父子にとって救いといえば救いであった。
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